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2013年2月28日木曜日

ジョジョ第五部における「覚悟」とはッ

 先日に後輩当てのメールでもやたら濃い内容で送りましたが、まだその熱気が冷めないのでブログにも書くことにします。

PS3「ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル」第3弾PV(Youtube)

 バンダイナムコが作っているこの新たな「ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル」というゲームがなんか面白そうです。これまでに公開されている映像ではツボを押さえているというか原作漫画「ジョジョの奇妙な冒険」の名セリフをきちんと再現しております。それにしても声優たちも、「オラオラオラオラ」とか「無駄無駄無駄無駄」とやたら叫ばないといけないのは北斗の拳並に大変だと思う。

 上記にリンクを貼ったのは第3弾のPVですが、このPVの最中にジョジョ第5部の主人公であるジョルノ・ジョヴァーナが登場し、「覚悟とはッ、暗闇の荒野に進むべき道を切り開く事だッ!」というセリフを発します。ちなみに声優は浪川大輔氏で、なんか最近見るアニメ全部にこの人出ていて売れてるなぁって印象があります。昔は「嘘だと言ってよバーニィ」って言ってたのに……。
 話は戻しますが、ジョジョ第五部ではこの「覚悟」という言葉が非常に多く出てきます。たとえばシリーズ屈指の人気キャラクターであるブチャラティも敵のマフィアもろとも走行中の電車の外に飛び出す際に、「任務は遂行する、部下も守る。両方やらなくっちゃあならないってのが幹部の辛いところだな。覚悟はいいか?オレはできてる」というジョジョファンにとって有名なセリフを発します。

 この覚悟という言葉、多分起業してフリーの立場になったからこそでしょうがなんかこのところずしんと腹に来ます。それこそ最初のジョルノのセリフをPVで聞いた際には鳥肌が出るような感覚を覚え、自分が言いたいことがこの一言に凝縮されているように思えました。
 私の言葉で直すと、覚悟というのは複数ある選択肢の中から何か一つを腹括って選ぶ様なものではなく、選択肢すらない追い込まれた状況下、現状より苦しい立場に追いやってでも可能性を信じて実行するということを指すと思います。それこそジョルノのセリフにあるように「暗闇の荒野」における行動のような。

 ここだけの話というか、自分もはっきり言って起業なんかしたくないと思っていましたし現時点でも早くやめたいと思って仕方ありません。ならなんで実行するに至ったのかと疑問に思われるでしょうが、私に言わせればほかに選択肢がなかったというべきか、自分が起業しなくても誰も損することはないが誰も得することもないでしょう。一方、起業しても損する人は自分以外誰もいませんが、まだ得するというか現代の自分を含めた若者に対して何かしらの効果がまだ期待できるのではないかという思いがあるからです。そして少なくとも、上手くいくかどうかは別として自分が会社を立ち上げようと思えば起ち上げることが出来る立場だったこともあります。

 そんなわけで年食ってきたせいか、このところまた違った意味でジョジョを楽しんで読めるようになってきました。さすがにブチャラティみたいな「覚悟」まではとても持てませんが、ひとしきりの覚悟をもって行けるところまで行ってみようというのが今の本音です。

  おまけ
 最近後輩へ送るメールのタイトルにジョジョのセリフを付けるようになり、これまで使ったことがあるものは以下の通りです。

・かかったなボケが、オラオラオラオラ!
・アツアツのピッツァが食いてえ
・最高にハイって奴だぁー!
・覚悟はいいか、俺はできてる
・康一君…君は本当に頼もしいヤツだ
・いいや限界だ、押すね!

 意味わかんない人が見たらスパムメールにしか見えないタイトルがずらり。しかもさりげなくブチャラティのセリフも使ってるし……。 

2013年2月27日水曜日

アベノミクスに対する評価

 このところ身の回りと中国の話ばかりしてきたので、久々に国内の大きな話題ことアベノミクスを取り上げようと思います。まずこのアベノミクスという言葉ですが、もはや世界語になったと言っても過言ではないでしょう。中国のニュースでも「安倍経済学」という訳し方がされて頻繁に出てくるほか、G20関連の英字系ニュースでも読者が知っていること前提で多用しています。
 そんなアベノミクスの具体的な定義ですが、基本となるのは「デフレ脱却のためにありとあらゆる手段を使う」という点でしょう。これまで金融緩和に慎重、というよりインフレになるくらいならデフレがいいと思っていた日銀の方針をひっくり返し、インフレになるまで金融緩和をし続けるという単純かつ強烈なメッセージを出したことから昨年末から急激な円安が続いており、私の周囲でも1米ドル=100円超えも有り得るのではないかという声が出ております。

 ただこの急激な円安、各方面というか日本の競争相手国からは不評です。真っ先に文句を言ってきたのは自動車をはじめとした輸出産業が競合しているドイツで、続いて韓国、そして現在では中国なども「日本の政策が世界に為替競争を生み出す」などと言って批判的な論調が出ております。しかしこの問題で一番文句を言ってきそうなアメリカは特に批判せず、むしろ円安によって日本経済が復活することを期待するかのようなエールをオバマ大統領が出しています。
 こうした態度をアメリカが取る背景には単純に、TPP交渉が影響していると私は思います。アメリカとしては為替には目をつむってやるかわりにTPPに日本は参加するべきだというスタンスで、安倍政権もそれを呑む方針であるため先のG20でも日本の円安が大きな議題にならなかったというか日本は批判を受けなかったのだとにらんでいます。

 そのG20に対する反応ですが、中国の経済紙では「安倍の一人勝ち」という見出しを取り、本来批判されるべき日本の行動が全く批判されず容認されて、これでは大問題だとばかりの主張が載っておりました。まぁ「一人勝ち」というのは間違いじゃないと私も思いますが。
 もっとも為替に関してあまり日系メディアは言いませんが、一番操作しているのはどこかと言ったらほかならぬアメリカ自身でしょう。金融緩和を取り続けて米ドル安に誘導しているほか、有り余った資金が先物取引市場に流れ込んで数年前から大きな混乱を招いております。私としてはそんなアメリカに為替誘導がどうのこうのと文句を言われる筋合いはないと思うのですが、腐っても世界最強国ですし表だって批判できな日本とほかの国々の政府の気持ちは理解できます。

 あとG20で日本が円安で批判されなかったポイントとしては、あくまでデフレ脱却のための国内政策を実行したら円安になっただけで、円安に誘導する為の政策を直接的に実施するつもりではないというスタンスだったからだという気がします。仮に今回日本が批判されれば、今後デフレ脱却策を実施する国は同様に批判を受けざるを得ず、そうした悪しき慣例を作ってはならないという判断もあったのではとも、これは素人考えですが思います。

 ではそんなアベノミクスに対する私の表かですが、確か以前に書いた記事でも似たようなことを書いていますが基本的には全面支持です。デフレを脱却することが物事すべてをよくするための必要条件であり、これをはっきりと政策目標に掲げたことは非常に合理的です。しかし前にも書いた通りに付随効果として円安が進むことによって貿易赤字はどんどん拡大するため、政策猶予は以って2年。この2年の間にどれだけ輸出産業を持ち直せるかが重要です。逆に持ち直せなかった場合、どうなるか自分もちょっと聞いてみたいです。

2013年2月26日火曜日

56%が14万8千円超、中国人の1人当たり年間旅行予算

 中国のニュースサイトを閲覧している最中に運営している「中国景気観測局」に載せるのにいい記事を見つけたので、久々に前職でやっていた記事翻訳をやってみました。

旅游者意愿调查报告:半数游客将带薪休假出游(東方網)

 その見つけた記事というのは上記サイトです。見出しを翻訳すると、「旅行者意識調査:半数が有給利用」と書かれており、2012年における中国人の国内旅行データが事細かに載っております。調査を行ったのはCtrip(シートリップ)といって、日本ではなじみが薄いですが中国のネット旅行予約業最大手の会社で、定期的に詳細なデータを発表してくれるので前職在職中もお世話になってました。
 それでは早速、書かれているデータを片っ端から書いていこうと思います。

Q1、旅行に行くタイミングは?
 見出しにも書いてある通り「有給を取得して」が49%と最多で、次いで「土日利用」が15%、「国慶節(10月第一週にある長期連休)」
が12%、「黄金説(5月のゴールデンウィーク)」が最低の9%でした。

Q2、今年(2013年)に予定している旅行回数は?
  ・1~2回:37%
  ・3~4回:47%
  ・4~6回: 7%
  ・7回以上: 9%
  ・予定なし: 0%

 上記の通りに1~4回に8割超が集中する結果となり、日本人と比べてもそう大差はないかと思います。また「予定なし」が一人もいなかったということからも、旅行市場が今後も拡大していくと期待できそうな内容といえるでしょう。

Q3、今年の旅行予算は?
  ・増やす:57%
  ・横ばい:37%
  ・減らす: 6%

 こちらも全体的に増加傾向にある結果となっており、Q2の結果共々先行きの明るい内容です。では2012年の旅行予算はどれくらいだったのか、その気になる結果は以下の通りです。

Q4、2012年通年の1人当たり旅行予算額は?(1元=14.8円で計算)
  ・2000元(2万9600円)以下: 5%
  ・1万元 (14万8000円)以上:56%

 今回この記事を翻訳しようと思ったのは、年間予算とはいえ旅行支出に中国人の半数が14万8000円以上を支出しているというこの衝撃的な数字を出したかったためです。仮に1年間の旅行回数が3回だと仮定すると1回あたりの予算は約4万2700円以上ということとなり、決して低くない数字に思えます。また1万元以上と答えたうちの約5%は、「5万元(74万円)以上」という果てしない金額を上げております。
 今回のこの調査は国内旅行に限定されているため、海外旅行の予算はさらに高くなる可能性が高いでしょう。なお参考までに下記のトラベルズー・ジャパンの調査によると、同年の日本人の年間旅行予算(海外旅行も恐らく含む)は37万5000円だったようです。

日本人の年間旅行予算の平均は37.5万円(@DIME)

 このほかの中国の国内旅行調査結果で面白いと思えるものとしては、旅行プランとして好むのは「フリープラン」が75%、「パックツアー」が25%で圧倒的にフリープランが人気だということです。ちなみに少し専門的な話をすると、中国人向け日本旅行ツアーはパックツアーが大半で個人向けフリープランやフリーツアーがやや不足しており、熱心な中国人旅行者の需要を満たしきれていないと以前に取材したことのある業界関係者が言っていました。

2013年2月24日日曜日

映画「テルマエ・ロマエ」の気になるお値段

 昨日の晩はWBC前の日本対オーストラリア戦を見た方が多かったと思いますが、私は何故かこの時間帯、試合中継があることを知らずTBXの「ジョブチューン~アノ職業のヒミツぶっちゃけます!SP」という番組を見ておりました。この番組はいろんな業界の第一人者がその業界の内情をぶっちゃけトークをするという内容なのですが、ゲストも番組全体の構成もよく、落ち着きのない性格で1時間以上テレビの前に座ることがほぼない自分が珍しくじっと見続けておりました。出演したゲストはスピードスケートの清水宏保元選手やプロゴルファーの片山晋呉選手、モデルの冨永愛氏などいる中で、去年映画化して大ヒットを記録した漫画「テルマエ・ロマエ」の作者であるヤマザキマリ氏もおりました。
 この番組でヤマザキ氏は映画「テルマエ・ロマエ」について語ったのですがその内容というのも、「映画化に伴ってヤマザキ氏に入ってきた収入は、わずか100万円」という衝撃的なものでした。

 ヤマザキ氏によると、映画化が決まった段階で編集部から連絡があり、「100万円を振り込んでおくけどこのお金は映画の原作使用権の物だから」とだけ言われ、公開された映画が興行収入が50億円を超える大ヒットを記録した後も追加報酬は一切なかったようです。それどころか映画化に伴うキャンペーンで日本中のあちこちを訪問することとなったがそれも全部ノーギャラとのことで、同じ番組に出たゲストたちからも「編集部に騙されているのでは(;゚Д゚)」とコメントするほどでした。
 映画やドラマなどの映像化に伴う漫画家への収入は少ないとは聞いてはいたものの、まさかこれほどまでに少ないとは想像だにしませんでした。幸いというか「テルマエ・ロマエ」は単行本が売れているからまだいいのではとも思いましたが、ヤマザキ氏は現在アメリカに滞在している関係で日本にいる人より余計に税金がかかっていることも明かしておりました。

 同じくお金の話だと片山晋呉氏が、「日本のプロゴルファー約5000人のうち、賞金だけで暮らしているのは約50人」という事実を明かしておりました。一見華やかそうに見える職業でも、大変なものはやはり金銭的に大変何だということをつくづく思い知らされます。

2013年2月23日土曜日

近衛文麿について

 先日、「松岡洋介について」の記事のコメント欄でリクエストを受けたので、松岡洋介とはある意味切っても切れない縁である近衛文麿について今日は私見を書いていこうと思います。

近衛文麿(Wikipedia)

 日本人なら近衛文麿と聞いて大体どんな人かはすぐに頭に思い浮かぶかと思います。また日本史に詳しい方なら、「歴代総理のうち最も暗愚だった人物」という評論を聞いたこともあるのではないでしょうか。もっとも現在において暗愚な総理ときたらぶっちぎりで鳩山由紀夫元総理の名が挙がってくるでしょうが。

 近衛文麿の簡単な来歴から書いていくと公家の最高位である五摂家の中でも筆頭に当たる近衛家、いわば公家の中の公家の出身です。父の近衛篤麿も貴族院議長をしており活発な政治活動を行っていた人物なのですが、長男である近衛文麿がわずか12歳の時に借金を残して逝去しております。幼少時は同じく公家出身の政治家であり総理も務めた西園寺公望の庇護を受けて育ち、長じてからは貴族院議員として父親同様に活発な政治活動を開始します。
 彼が政治家として優れていた点を挙げると、身も蓋もないですがそのルックスです。現代で言うなら、本人にとっては心外かもしれませんが小泉進次郎氏のようなイメージに近いように思え、イケメンで背も高かったことから早い頃から有権者の間で高い人気を得ることとなります。また本人もその後の動向を見る限りだとどうも乗せられやすい性格をしていた節があり、周囲から寄せられる期待の声を真に受けたのか貴族院内で独自グループを作るなどやたら熱心に活動しております。

 そうした努力が実ったのか、1937年に日本の総理としては伊藤博文に次いで最も若い45歳7ヶ月で総理に就任します。彼が総理に就任できたのは政界、軍部、有権者から高い人気を得ていたことに加え、当時の日本が置かれたやや特殊な状況があります。どういう状況かというと、世界恐慌と冷害によって日本国内では明日の食事もままならない大量の貧困者が生まれていた一方、政党政治が発達したことによって政界では賄賂をはじめとした汚職が酷かったようです。また予算獲得などのために軍部が徐々に政界に対して過剰な要求を行うようになり、五一五事件や二二六事件など首相暗殺を含む過激な行動に出る軍人も現れるほどでした。この状況下で首相に求められた人物像というのは、国民、政党、軍部のどこからも納得される人材だったのだと思います。良く言えば一つに偏っていない、悪く言えば自分の色が薄い人物がこれに当たり、近衛文麿がそれに適合したためではないかと私は考えています。

 何はともあれそうやって総理に就任した近衛でしたが、就任早々に日中戦争の端緒となる盧溝橋事件がいきなり勃発します。ちなみに日本人は7/7と来ると七夕を連想しますが、中国人はリアルにこの盧溝橋事件の開戦日を覚えており(中国語では「七七事変」のため)、中国にいる間は少し注意が必要となる日です。
 この盧溝橋事件が起きた当初、近衛はあくまで満州にいる日本軍と中国軍が偶発的にぶつかっただけとして、中国政府と話して紛争として処理する方針を打ち出しました。ただそう言っている一方で軍部に臨時予算を認めたりさらなる派兵を匂わせたりなど言行が一致せず、中国というか蒋介石側も徐々に不信感を持っていったと聞きます。そして盧溝橋事件から約1ヶ月後の第二次上海事変を契機に蒋介石との交渉を打ち切り、具体的な攻略目標もないまま全面戦争方針を出すに至ったわけです。

 よく日本と中国が戦争に突入した経緯に対して、「中国側が日本を挑発したり交錯するなどして無理矢理戦争に引き込んだ」という説を主張する人がいます。私としては確かに当時、中国共産党などのように蒋介石率いる国民政府と日本がぶつかることで得する団体や人物がいたことからそうした説が全く有り得ないとは思うのですが、それ以上に日本が中国との全面戦争に至った背景にはこの時の近衛の優柔不断さも大きな要因になっていると言わざるを得ません。
 私個人の意見としては、近衛が「不拡大方針」を掲げながら派兵や軍事予算増額などあべこべな態度を実行したのは、仮に戦闘が本格的になった時への備え程度の感覚だったんじゃないかと思います。そう思うのもこの後の近衛の判断というか行動がどれも場当たり的で、確固たる信念というか政策規範が一切なく、バックボーンがない政治家の典型みたいだからです。いろいろ意見はありますが、まだこの時期であれば近衛が本気で行えば軍部の暴走も抑えられたような気がしますし。

 その後、一旦は総理を辞職しますが間隔を置いての再登板後は「新体制運動」を提唱し、国家総動員法などを作るなど全体主義的な政策を展開していくようになります。また再登板後は松岡洋介のこちらも骨のない外交に振り回され、以前以上に強圧的となっていた軍部も抑えきれず流されるままに太平洋戦争までの過程を突き進むこととなり、開戦が視野に入ってきたところで事実上、投げ出す形で総理職を東条英機に明け渡しております。
 太平洋戦争開始後は戦況の悪化とともに木戸幸一、吉田茂などと協力して終戦工作を展開。終戦後はどうも政界復帰を目論んでいたようで新憲法策定に乗り気だったと伝えられますが、GHQは戦犯として処分する方針を固めたことを悟り、SPが逮捕に訪れたその日に服毒自殺を遂げております。

 近衛に対する私の評価をありのままに書くと、とにもかくにも優柔不断であることに尽きます。対中政策が一致しなかったことはもとより軍部に対する対応、また国内での全体主義路線への傾倒などを見るにつけこの人は日本をどこに持っていきたかったのか全く見えません。ただ唯一一貫していたと言えるのはこちらは公家らしく、国体の護持こと天皇制への高い忠誠心です。
 戦時中の終戦工作もどちらかといえば日本のためというより天皇家を守るために動いていた節があり、最後に服毒自殺を図ったのも佐藤優氏をして「公家は逃げ足が早い」と言わしめております。同じく公家出身の総理大臣としては細川護煕氏がいますが、両者ともに何が何でも何か一つの政策をやり遂げようというよりも、与えられた役割を自分のできる範囲で実行しようというような態度がある気がします。ちなみに、細川護煕氏の父親である故細川護貞は近衛文麿の娘婿で、戦時中の宮中動向を記した詳細な日記を残しております。でもって息子が総理に就任した際のインタビューでは、「あれの性格ではいずれ投げ出すだろう」という、その後現実となる予想を述べているのですが、間近に近衛文麿を見ていたせいもあるんじゃないかと密かに見ております。

2013年2月21日木曜日

ゲームクリエイター・飯野賢治氏の死去について

 ひとつ前のブログを書き終えてネットニュースを再度閲覧してみたところ、度肝を抜くニュースが出ていました。

ゲームクリエーター飯野賢治さん死去 「Dの食卓」作者(朝日新聞)

 知っている人には話が早いですが、「Dの食卓」というゲームを製作した飯野賢治氏が亡くなられたそうです。正直に言って、このニュースは自分にとってもショックなニュースです。

 飯野氏の経歴を簡単に紹介すると、彼は非常に若い時代に「ワープ」というゲーム会社を興し、当時としては珍しかったフルCGのアドベンチャーゲーム「Dの食卓」を世に送り出しました。この「Dの食卓」は日本のみならず世界中でヒットしたことから名クリエイターとして一躍その名を轟かせ、その後もかなり破天荒なキャラクターと風貌(当時は大きく太っていた)からゲーム業界における特異な人物として多数のメディアでよく特集されておりました。

 私自身が遊んだことのある飯野氏のゲームは「Dの食卓」だけですが、やってみた感想としては通常のゲームではなくやはり「特異」という一言に尽きます。豹変した医者の父親が病院で大量殺戮しているのを説得に行くというホラータッチの世界観に3D特有の狭い視界でキャラを動かすという内容が他のゲームと一線を画しており、特別面白いとは感じませんでしたが確かな印象を覚えたゲームでした。
 この「Dの食卓」以降も「エネミーゼロ」、「リアルサウンド」などとはっきり言ってどれもクセの強いゲームを出し続けたことから業界内でも完全な奇人として扱われていましたが、クセの強いゲームばかり出し続けたことからゲーム政策自体は「Dの食卓2」を出したところで一歩引いていたようです。ただ会社経営自体はアプリ製作などに事業を拡げて、多くの有名ゲームクリエイターが独立しては会社を潰していった中、倒産させることなく存続させ続けています。

 今回の記事によると、飯野氏の享年は42歳だったようです。かなり昔から活躍していますが、それにしたって早すぎる死だと感じるとともになんかのリメイクで自分がやったことない「エネミーゼロ」とかでないかなとちょっと思います。ちなみに「エネミーゼロ」が出た当時のインタビューで飯野氏は、街中を歩いていると子供たちに、「あ、あの人、エネミー」って指差されながら言われて「俺は敵か!?」といちいち腹の中で突っ込んでいたと語ってました。

携帯電話の契約完了☆-(ノ゚Д゚)八(゚Д゚ )ノイエーイ



 昨日は契約できないことを散々愚痴っておきながらですが、中国から日本に帰国して二週間強の今日、ついにやっと携帯電話を契約することが出来ました。契約したのは月500回(1回10分)までなら通話料タダのウィルコムで、正確には携帯電話ではなく昔懐かしのPHSですが。

 事の経緯を昨日の時点から話すと、昨日訪れたウィルコムを含む複数の携帯キャリアの契約業務を行っているアンテナショップでは、法人が出来てても法人口座がなければ法人契約はできないとして追い帰されてしまいました。しかしパンフレットには「法人口座、または代表者名義の口座」と書いてあるのでウィルコム専属のアンテナショップ行ったらまた何か違うんじゃないかと思い、今朝に家近くにある地方法務局で登記証明書を取りに行った後に訪れたところ、「登記証明あるならOK( ゚∀゚)o彡°」と、法人口座なくてもあっさり契約してもらえました。なんだったんだ昨日の店の対応は( ´・ω・)ファッキン

 そんなかんだで今日ようやく手に入れた携帯電話が上の写真の物ですが、派手好きな自分にしてはまた随分と大人しいカラーリング、デザインになっています。ちなみにメーカーはウィルコムは京セラ製が多いのにシャープ。
 見方によっては女性ものっぽいデザインですが、今回この機種を選んだのにはちょっとした背景があり、まず色についてはこれまで使用してきた携帯がほぼ全部白色だったので、なんかこの色以外は自分の中ではあり得ませんでした。次にデザインですが、角ばった携帯だとポケットに入れると足に刺さるようになり痛いので、なるべく丸っこいものにしようとした結果、これに落ち着きました。改めて書いてみると大した理由ではないな。



 どれくらいの大きさかを図るために、上海からちゃんと持ち帰ってきた阿修羅像をまた比較対象として置いてみました。並べておいてみたはいいけど、これじゃ携帯電話の大きさというより阿修羅像の大きさがどれくらいかを測っているように見える。



 ついでに自分が学生時代にスーパーで買った「世界の勇者シリーズ」という食玩で当てた、「剣闘士」も置いてみました。なんでこんなものを後生大事に未だに取っているのか自分にもよくわかりません。

2013年2月20日水曜日

HSK問題集にある謎の文章

 HSKと聞いてパッと反応できるのは中国と縁のある人。このHSK、英語で言えばTOEICやTOEFLに当たる、中国語能力試験を指します。中国語で書くと漢語水平考試。

 このHSKは昔、初・中級が1~8級、上級が9~10級で二種類の試験に分かれており、級の数字が高いほどレベルが高くなる仕組みで、留学中に私は7級を取得しております。ただこのテストは数年前に方式が変わり、現在は1~6級の6段階になり、前回は一回当たり2種類のテストでその成績によって級が決まりましたが、日本で実施されている英検同様に各級ごとに6種類のテストが毎回実施されるようになっております。

 ひとつ前の記事に書きましたが、自分の会社が設立されるまでのこの2週間は特にやることがなかったので、今まで受けた事もないのだし来月に実施される新HSKで級資格を取っておこうと勉強をしておりました。受けるのは上海で新聞翻訳の仕事をしていたのだから最上級の6級、と行きたいところですがいきなり落ちたらちょっとカッコ悪いので、今回はひとまず5級を受けることにして既に申請も済ませております。
 そんなわけで今現在、やることもないので問題集をちょくちょくやっているのですが、なんていうかいろいろ気になるというか変な文章が問題に出されてます。一つ具体例を挙げると、

 ”ある所に小鳥がいて、木のてっぺんまで上りたいと思いつつも実際に飛ぶことが出来ませんでした。そんな小鳥を見て牛は、「僕の糞を食べなよ。そうしたら高く飛べるよ」というので実際に一口食べてみたところ一つ目の枝にまで飛ぶことが出来て、二口で二つ目の枝、三口目でてっぺんまで飛ぶことが出来ました。しかし小鳥がてっぺんまで飛ぶや、猟師に鉄砲で撃たれて死んでしまいました。”

 どこから突っ込もう、というのがこの問題文の感想です。いくら何でもフリーダム過ぎる問題文です。
 これ以外にも(;゚Д゚)エエーって思うような問題文がいろいろあるのですが、全体的な特徴として一つ感じたのは、やたら「チャンスを逃すな」というような問題文が多い点です。「その若者は目の前のチャンスを気づかずに通り過ぎた」とか「準備を続けた物がチャンスを得る」というようなテーマの問題文が多く、文化の違いからか日本語の問題文とは異なる印象を受けます。

会社設立完了も……(;一一)

 中国から帰国して2週間+1日の今日、ようやく自分の会社の設立手続きが完了しました。これまで名刺も作れなかったのでこれでやっとおおっぴらに営業できるとワクワクしてまずは法人口座を作りに三菱東京UFJ銀行へ行ったところ、自分の持ってきた登記事項証明書では対応できない(より詳細なものを発行する必要がある)と断られてしまいました。別にこれだけなら法務局行ってくりゃいいだけなので何とも思わないのですが、そうした必要書類を全部提出した上で口座開設にはさらにあと一週間かかると言われました。

 個人名義の口座ならその日中にさっと作れるのになんでだといろいろ言いたいのですが、どうも振り込め詐欺への対策強化のため、どこの銀行でも同じように審査に時間をかけているらしいです。それにしたって一週間、三営業日もあれば審査には充分だろと言いたいのですが末端の人に言っても仕方ないのでそのまま帰ってきましたが、そもそもそういった審査をすることで果たして対策に効果があるのか強く疑問です。それなら法人登記の際に代表者、社員の過去の犯罪経歴などを調べた方が効率がいいような気がします。

 そんなこんだでむかっ腹立ちながら、じゃあ先に携帯電話を契約しようとウィルコムのアンテナショップへ向かいました。実は帰国から大分経っているのに今まで携帯電話を契約してこなかったのですが、そうした理由というのもウィルコムが今法人向けにキャンペーンをしていて、事務手数料をただにするほか基本使用料をずっと半額にしてくれるということだったので、不便を覚悟で今まで我慢してました。ついでに言うと、こっちで再会を約束していた面々とも、携帯電話を契約してからきちっと連絡しようと今まで控えてきております。
 ここまで書けば分かるでしょうが本日、契約できませんでした。理由は法人口座がまだないためです。サービス案内冊子には代表者名義の口座でいいとか書いてあるのにいざ行ったらダメとか言われて、「一体何なんだよこの国の手続きの遅さと制度の温さは」とリアルに門前で怒鳴りながら出てきました。八つ当たりで言っているのはわかりますが、法人登記に二週間も時間かかっているというのに、何故別の手続きでも一様にこんな時間がかかるのか、最初の審査がまるで何の証明作用も持ってないじゃないかと強く言いたいです。

 正直な所、携帯電話の契約が出来ないと名刺すら作れません。会社を作るのに二週間かかるのは納得できるとしても、実際に営業開始するまで一カ月弱かかる今の状況はあまり腑に落ちません。明日は千葉銀へ行って三日くらいで何とかならないものかと聞いてみて、ウィルコムに対しても案内冊子を片手に別のアンテナショップ(今日行ったのより大きい)へ乗り込もうかと思いますが、このところ本当に日本に帰ってきたんだなと悪い意味でよく感じます。審査に慎重になるのはいいとしても、慎重になることでどれだけの効果が得られるのか、一人の犯罪者の行為を防止するために健全な利用者を何人煩わせることになるのかという検証が足りないのではともう言いたいこと言って筆を止めます。

2013年2月19日火曜日

武漢市のタクシー事件

 昔自分が記事に書いた話題が今日続報が出ていたので、一つ四方山話として武漢市のタクシー事件を紹介しようかと思います。
 この武漢市のタクシー事件が発覚したのは去年の12月。確かCCTV(中国中央電子台)が特集で報じたのがきっかけで、武漢市のタクシー車両に使われているプジョーシトロエンの車両に一般車両には搭載されているABSが搭載されていないばかりか、ブレーキパッドも一般車両より小さいという特別仕様車であることが報じられました。しかもそんな仕様でありながら購入価格は一般車両より高く設定されており、しかも武漢市のタクシー業者は当局からこの問題ある車両を強制的に買わされていたというおまけつきでした。そうした当局の仕業もあってこの事件が発覚した当時、武漢市全体のタクシー車両全体に占めるシトロエンの車種比率は99%という冗談みたいな数字を叩きだしてました。
 それにしても、今どきABSがついていない車なんて探す方が難しいのに……。

武汉公布“缩水版出租车”调查进展 两人因涉嫌受贿被立案(毎日経済新聞)

 上記リンク先は中国語のニュース記事ですが、この武漢市の事件に対する続報が書かれてあります。内容を一部翻訳して伝えると、この問題で当局の責任者二人が賄賂を受け取っていた容疑があるとして立件されたようです。ただ立件されたうちの一人は問題の車両が販売されていた時期に統括する役職についていなかったことから事件に関わっていたとは思えず、暗にトカゲのしっぽ切りにされているのではないかと毎日経済新聞は指摘しております。実に中国らしい幕引き策ではあるんだけど。

 なお日本ではタクシーとくれば全国どこでもトヨタ・クラウンが走っておりますが、中国は地域によってはっきり車種が変わります。基本的にはその地域に本社を置いている自動車メーカーの車種が主流となる傾向があり、北京市ではヒュンダイ・ソナタ、上海ではフォルクスワーゲン・サンタナ、合肥市では江淮汽車製の車(車種は忘れた)が走っております。広州市は知らないけど日系車種はあまりタクシー車両では見かけないのですが、香港では逆にトヨタ・クラウンのタクシーしかなくてなんだか奇妙な思いをしたことがあります。

2013年2月18日月曜日

ワコールの注目に値する調査

 メディア職から離れたとはいえ一応義務的に毎日中国のニュースサイトと日系企業のプレスリリースを見ているのですが、今日の企業プレスリリースで見て驚いたものが二件ありました。

PS Vita、2月28日より値下げ ― Wi-Fiモデル&3Gモデル、どちらも1万9980円に(インサイド)

 一つは上記のPS Vitaの値下げです。かつてニンテンドー3DSも一万円の大幅値下げをしましたがここにきてソニーも果断に実行してくるとは夢にも思わず意外性を感じます。ただ発売から間もないのに任天堂は3DSの大幅値下げを断行したことが、昨年末に発売した「Wii U」もまたすぐ値下げするのではと懸念されて販売が伸びないと聞くだけに、今回のPS Vitaの値下げもどれだけ効果があるかとなると未知数です。

 そんなソニーのプレスリリース以上に私が今日目を見張ったのが、以下のニュースです。

「ブラジャーの捨て時・捨て方」実態アンケート結果について(ワコール)

 一体何故男の自分がこんなニュースにいちいち反応するのか我ながら疑問ですが、たまにワコールはこういう面白い調査してくるから京都市民に「下着屋」と罵られてても大好きな会社です。
 それでこの調査、いくつか結果を抜粋すると「自分は捨てられない女」だと考えている女性の割合は約6割に達するそうで、「ブラジャーを捨てるのをためらう女性・・・約2人に1人」だそうです。だからどうしたと言われればそれまでですが。

 参考までにうちのお袋にもこの調査結果を見せたところ、確かにブラジャーを捨てるタイミングは悩むそうで、金属ワイヤーが入っているだけに燃えるごみにそのまま出していいものかどうかためらうとか言ってました。ワコールも多分この編わかってるんでしょうけど、自分たちでやっているブラジャーのリサイクルプロジェクトの内容も調査結果と一緒に載せております。
 なお男の自分はブラジャーとは全く縁もゆかりもなく、自分の下着はいつも擦り切れるまで捨てていません。そんな生活を送っている自分ですが一回だけ不思議なことがあって、履こうとしたパンツが三日連続で一枚ずつ破れるという事がありました。靴ひもじゃないですけど何かこの時は大きな事故でも起こすんじゃないかとちょっと戦慄したのを覚えております。結局何もありませんでしたが。

2013年2月16日土曜日

平成史考察~パナウェーブ研究所騒動(2003年)

 今朝、日本に帰国して初めてランニングを行いましたが、上海で走った時と比べて息が上がらないというか、走っている最中に咳をすることがありませんでした。ペース的にはそんな差がないと思うのですが、これって大気汚染の差?ぶっちゃけ、中国でランニングすることが体にいいのか悪いのか判断しづらいんだけど。
 話しは本題に入りますが、今回は覚えている人も多いと思われるあの白装束集団ことパナウェーブ研究所の騒動を取り上げます。

パナウェーブ研究所(Wikipedia)

 この騒動が起こったのは2003年の4~5月、パナウェーブ研究所と名乗る全身白づくめの宗教団体の動向がお茶の間のテレビを席巻しました。この団体は千乃裕子を代表とする宗教団体で、方針としては統一教会と同じく反共主義を掲げていたようですがそれ以上に「スカラー波」と呼ぶ電磁波が人体に悪影響を与えるとして、防護策として白装束を着るだけでなく周囲に白布をかけたりするといった行動が注目を集めました。
 ウィキペディアの記事によるとパナウェーブ研究所が注目を集めるきっかけとなったのは当時、多摩川に流れ着いてこちらも注目を集めていたアゴヒゲアザラシのタマちゃんに対して捕獲保護を試みようとする動きがテレビで報じられたことからだったようです。その白装束という見た目のインパクトがあった上、テントでの集団移動生活を続けていたことから他のメディアも追従するようになり、この年のGWは岐阜県あたりにいたこの集団の一挙手一足が生放送で報じられました。当時の私もテレビで見ており、それこそ朝から晩まで、いつどの程度動いたかなども詳細に報じられていたことをよく覚えております。

 この騒動自体はGWの終了とともに視聴者の興味が離れたことから徐々に落ち着いてきたのですが、確かGWの後半あたりに、それまで一度も姿を見せなかった千乃代表がどこかのテレビ局のインタビューに応えて初めて姿を見せてきました。それまで千乃代表の姿は若い頃に取られた写真(そこそこ美人)しか出回ってなかったため、テレビで出てきた姿はお婆ちゃんだっただけになんとなくがっかりみたいな気持ちにさせられました。なおそのインタビューで千乃代表は、「私はもうすぐ(電波攻撃によって)死ぬけど、タマちゃんを早く保護してあげて」と訴えておりましたが、千野代表が死去したのはそれから3年後の2006年でした。調べてみて自分も初めて知ったけど、これ以前から「もうすぐ死ぬから」っていうのがこの人の口癖だったようです。

 そんなパナウェーブ研究所の現状ですが、先にも書いたとおりに千野代表が2006年に死去したことから自然消滅していったようです。これだけ見るなら言い方は悪いですが寿命の短い一種のカルト集団だったとして片づけられるのですが、自分が少し気になるのは「スカラー波」こと電磁波という概念です。
 パナウェーブ研究所に限らず日本では「米国が電磁波で日本人を攻撃してくる」とか「メタトロン星の電波によると~」などといった主張を行う人がそこそこ多く、ちょっと変わった精神をしている、神憑りしやすい人を表すスラングとして「電波系」という言葉まであります。この電波系ですが、ネットでの情報だけで二次確認を行ってはいないのですが、その始まりは深川通り魔殺人事件の犯人にあるという説を聞きます。

 この深川通り魔殺人事件の詳細はリンク先のウィキペディアの記事に書かれていますが簡単に私の方から説明すると、覚せい剤中毒者だった元寿司職人の男が路上で児童や主婦を次々と殺傷した事件です。この犯人は勤め先で毎回といっていいほど騒動を起こしており本当に救いようのない男なのですが、逮捕された後の供述で、恐らく薬中の影響もあるでしょうが度々「電波が引っ付いて」などと「電波」という言葉を多用しわけのわからない主張を繰り返しております。
 それ以前から電波系と呼ばれる人々が存在したのかどうかはわからないのですが、仮にこの深川通り魔殺人事件の犯人から現在の様な電波系の概念が生まれ、パナウェーブ研究所をはじめとする団体などにも影響を与えたとすると世の中、実に不思議なものだと感じます。あとこの電波でもう一つ気になる点として、この概念ってもしかして日本にしか存在しないのではないかという疑念を持っております。欧米はどうだか知らないですが中国においては「電波が精神を惑わせる」という概念は少なくとも私が見る限りほとんど存在せず、改めて考えると独特な概念のように思えてきたりします。最後に一応断りというか、私はこのような電波が精神を惑わすという概念は全くと言っていいほど信じておりませんが、社会学で言うと無機論というか、人間はその環境や条件によってロボットみたいに大半の行動や思考を決めるという立場を取っております。

2013年2月15日金曜日

猛将列伝~藤堂高虎

 歴史好きの人間なら誰しも自分を重ねる歴史上の人物の一人や二人はいるかと思いますが、私の場合は一番重なるのはほかでもなく、新撰組局長の近藤勇です。理由はいくつかありますが学生時代に私は実家のある関東から大学のある京都へ学期ごとに往復しており、このルートが近藤勇の辿った足跡とほぼ完全に重なるからです。あと彼は水木しげる氏をして「星をつかみ損ねた男」と評されており、私もそうした生き方に変に共感するところがあります。
 ではこのほかに自分を重ねる人物はいるのか、戦国時代の人物で挙げるとしたら本日紹介する藤堂高虎が入ってきます。

藤堂高虎(Wikipedia)

 戦国史が好きな人物なら藤堂高虎のことは誰もが知っているでしょうし、その能力の高さから歴史ゲームではいわゆる「かわいがられる」キャラクターであります。私もこの前に「太閤立志伝5」というゲームでこの人を使用しましたが、そのあまりの能力値の高さによってゲームが簡単になってしまい、かえって面白くないという妙な状態に陥りました。

 ではそれほどまでにKOEIさんからも能力値が高く評される藤堂高虎はどんな人物なのかですが、簡単に言ってしまうと現在の三重県に当たる伊勢国津藩の藩祖です。彼の出身地は近江(滋賀県)で初めは地元の浅井長政に仕えており、織田家と浅井家が激突したあの姉川の戦いでは一兵士として奮戦しており浅井長政から感謝状も受け取っております。ただ主家の浅井氏が織田家によって滅ぼされるとその後は主を転々とし、豊臣(羽柴)秀吉の弟である羽柴秀長の家臣となったところで一気に世に出ます。
 羽柴秀長の家臣となってからはその才能を戦に、施政に存分に発揮し、秀吉からも高く評価され秀長の死後も順調に出世していきます。この時(安土桃山時代後期)の藤堂高虎の事績として注目に値するのは数多くの名城を築城している点で、和歌山城をはじめ宇和島城、今治城、篠山城、津城、伊賀上野城、膳所城などと、森ビルや大林組も真っ青なくらいに全国各地で築城工事を指揮しております。「その時、歴史が動いた」の松平定知氏も藤堂高虎の高い築城技術を指摘した上で、コアコンピタンスを発揮して出世した好例だと以前に著書で評価しておりました。

 このように豊臣政権下で大活躍し出世を続けた藤堂高虎ですが秀吉の死後は真っ先に徳川家康の側につき、関ヶ原の戦いでも西軍大名の切り崩し工作を担当したほか大谷吉継隊とも死闘を行っており、家康から戦後は20万石に至る加増を受けております。その後の大坂の陣でも真正面で戦って奮戦したことから家康にも「有事の際には高虎を先鋒とせよ」と評されるなど絶大な信頼を勝ち取り、死の直前に枕元に侍ることを許された数少ない人物となっております。これらの業績から藤堂高虎の国津藩は江戸時代にあって「別格譜代」という扱いを受けており、外様大名でありながら譜代大名と同様の扱いを受けていたと言われます。

 以上が藤堂高虎の事績ですがよく言われる彼への評価としては、「能力は高いが主君を変え過ぎ」というものが大半です。本人も「武士たるもの七度主君を変えねば武士とは言えぬ」と居直っており、特に豊臣家から徳川家への転身ぶりには批判も少なくありません。ただ自分がそういうキャラだからかもしれませんが家臣が暇乞いした際には快く送り出し、他家で思うようにいかなくて戻ってきた際にはこれまた快く迎え入れて元の役職に就かせていたといいます。こうしたことから現代で言えば「風見鶏」と呼ばれた中曽根康弘元首相同様に、実力のある主君を見極め転身を図るのも一つの必要な才能と割り切っていた節があります。

 ただそのように仕官というか就職に関してはドライな感覚であったものの、数寄というか風流が全く分からない人物でもなかったようです。そう窺わせるエピソードがいくつかあるのですが一つは関ヶ原の合戦直後の石田三成との話で、捕縛された三成に「此度の戦、ご苦労でござった。ところで我が隊はどのように見えた」と尋ね、「鉄砲隊が良くないように見えた。指揮官を変えるべきでは」との答えに「まさにそのように思っていたところです。ご助言、ありがとうございます」と交わしたと伝えられております。
 また宇和島藩主だった時期に隣国の今治藩を修める加藤嘉明とは境界争いで不仲であったものの、蒲生騒動で会津藩を治めていた蒲生家が取り潰された際に後釜を誰にするか徳川秀忠に問われ、「要衝である会津を治めるに当たっては加藤嘉明が適任」と答え、遺恨なく実力の足る人物として推挙しております。

 このような藤堂高虎に対して何故自分がやたらと親近感を覚えるのかというと、良くも悪くもマイペースな人だからだと思います。周囲から「不忠者」と罵られながらもそれが処世術とばかりに次々と主君を変え、それでいて奉公人でいる間はこれと決めた主君のために手抜きせず存分に力を発揮する姿勢がビジネスライクで強い好感を覚えます。
 昔というほどでもありませんが二年前に同僚から、「花園さんが最初に勤めた会社は花園さんを持て余したのでしょうね」とやけに突然言われたことがありましたが、はっきり言って同じことを自分も考えて退社しました。忠誠といえば聞こえはいいですが、自身の才能を使い切れない会社というか環境に留まるのは自分以外にとっても損だと思え、たとえ後ろ指を指されてもより自身の成長を期待できる環境へ身を置こうと決断し、私は中国へ行きました。そうして実行した決断に価値があったのかどうかはこれからの自分にかかっているわけではありますが。

 それにしても「七度主君を変えねば武士とは言えぬ」という藤堂高虎のセリフ。自分はもう三回変わっているからあと四回しないと武士にはなれないのかなとか不遜なことを思っちゃったりします。

  おまけ
 藤堂高虎が起ち上げた津藩ですが、幕末の戊辰戦争の頃は幕府軍として出陣したにもかかわらず真っ先に官軍へ裏切っており、藩祖が藩祖だけに「さすが藩祖の薫陶著しいことじゃ」と罵られたそうです。

2013年2月14日木曜日

短期集中的な報道をする日本のニュース番組

 先週に日本に帰国後、出会う人みんなに十中八九聞かれたのは「中国の大気汚染はどう?」という質問でした。あまりにも質問が多いもんだから前にも記事化しましたが、一体何故これほどまでに日本人が中国の大気汚染を気にするのかというとその原因は間違いなく日本のテレビ局による報道によるものでしょう。
 私の帰国直後も中国の大気汚染はどこも朝、昼、夕方、夜のどの時間帯でもトップニュース扱いで報じており、あんな報じ方されれば中国に関心のない人ですら嫌が応にも気にするようになるでしょう。ところがそれほどまでに報道が集中していた頃から一週間も経たない今日の報道は、中国の大気汚染はほとんど報じられずにグァムで起きた無差別殺傷事件で一色といっていいほどに報道が集中しました。

 独立するとは言ってもまだ会社の設立登記が済んでないこともあって(来週完了予定)ニートと変わらない生活を送っておりニュース番組ばかり見ていますが、NHKはまだ違いますが、民放のニュース番組はほとんどどれも同じ時間帯に放送されるにもかかわらず報じる内容、報じ方、果てにはフリップに書かれている内容までほとんど瓜二つであるような印象を受けます。特に今回のグァム島の無差別殺傷事件に関する報道では、生放送のある番組で現地日本人向けメディアの記者がインタビューに応じており、一通り話し終えたので別のチャンネルに回すとさっきまで別番組に出ていた同じ記者がまた同じようなインタビューに応じるという一幕もありました。もちろん、話す内容は一緒です。

 どのチャンネルを回しても同じような語り口、同じ内容のニュース番組が報じられており、はっきり言ってしまってなんか自分、洗脳されいるんじゃないかなという印象を日本のニュース番組に持ちます。確かに一番注目度の高いホットな話題を大きく取り扱うのはメディアとして当たり前の姿勢ではありますが、日本の民放におけるニュース番組関してはその集中度合いがあまりにも高すぎる気がしてなりません。
 たとえばNHKなどはトップニュースに長く時間を割くとしてもせいぜい開始10分程度で、残りの時間はその他のニュースを淡々と報じます。一方、民放のニュースでは放送局にもよりますが長いところだと30分以上も長々と報じ、その他のニュースに関しては非常に短くさらりと流してしまいます。さっきも言いましたがこれでは視聴者を洗脳したいのかといいたくなるような報道で、延々と同じ話題を取り上げ続け、コメンテーターも同じようなことを言い続け、さらにはほかの番組でも同じような内容が続くときたらその報じられている内容通りにしか物事が考えられなくなるのではという懸念すら持ちます。

 またトップで報じる内容にも少し疑問を覚えます。先週まではほかに注目するニュースがなかったためかほぼ毎日中国の大気汚染について長々報じていましたが、今週に入って北朝鮮が核実験をしたと発表するや大気汚染は忘れて核実験一色、そのすぐ次の日にオリンピックでレスリングが除外されそうだとなるや核実験の報道時間は一気に急減し、グァム島の無差別殺傷事件が起こるやレスリングもほとんど扱われなくなりました。なにも無差別殺傷事件より核実験を大きく取り扱えと言うつもりは毛頭ありませんが、内容が大きなものであるだけに放送時間の配分などはもう少し考慮する余地があるのではと強く疑問に感じます。そしてレスリング問題、無差別殺傷事件が起きなければ、今も核実験について延々と報じていたのかもと考えるといろいろ複雑な気分にさせられます。

 私は常々、何事も過小にも過大にも評価してはならないと自分に言い聞かせております。たとえばあるニュースの話題性が百分率で言って50程度だったとすると、70とか80のような価値があるように報じてはならないと、くだらないニュースを実態以上に大きく報じてはならないと考えております。そういう目で見て今の民放ニュース番組は、やはり一つのニュースに対して過剰に大きく報じ過ぎているように見えます。
 もちろん、それならば民放のテレビニュースを見なければいいのではないのかという意見もあるでしょう。実際に自分もこれからNHKだけ見てればいいかなと考えてますが、それでも民放にはもっと工夫してもらいたいという一心があり、今回こうして記事にしたためました。

2013年2月13日水曜日

中国の新型エイズ報道について

 コメント欄で質問をいただいたので、かなり昔に出た中国の新型エイズ報道について私の見方と意見+中国のエイズ事情について簡単に解説します。

唾液で感染する新エイズが中国全土で蔓延中です!(ひめのブログ)

 引用した記事自体は3年前の2010年の物ですが、逆を言えばその後3年間に全く続報がないとも言えますね。
 書かれている内容は中国では通常のエイズとは異なる新型エイズが発生しており、唾液からも感染することから各地で患者が増加していると報じるものです。でもって中国政府はこれら新型エイズの存在を隠蔽し、患者たちは「エイズ恐怖症患者」と呼んで実際にはエイズに感染していないのに自分がエイズと信じ込んで精神的に参っているだけだと説明していると書かれています。

 さすがに自分は医者ではないので断言することはできませんが、まぁこれはデマもいいところでしょう。そう思う根拠としてこのブログの筆者が情報ソースの一つに、大紀元というニュースサイトを引用している点があります。

「未知のウィルス」=エイズに似た怪病、中国で急速に拡散か(大紀元)

 この大紀元というニュースサイトは中国政府に弾圧されている宗教団体、法輪功が運営しているニュースサイトで、中国に関するネガティブな情報を東スポばりになんでもかんでも報じるところです。直近だと去年の秋頃、酒鬼酒というメーカーの白酒に可塑剤が混入していた事件が発覚した際、「中国で売られているリプトンの紅茶にも可塑剤が混入されている!」と大々的に報じてました。大紀元だから信用するなよと上司から言われていたので記事化せずに一応眺めていましたが、リプトン側は「ほかの国と全く同じ成分で作っていてどうして中国だけ可塑剤入っているんだ!」と反論し、中国の国家質検管理当局も「問題の成分は混入していない」と発表したことにより、しりすぼみに消えていきました。

 はっきり言って大紀元をニュース元とすることは東スポをニュース元にするのと同義で(東スポ自体は私は好きだが)、しかも内容はただ過激なものでかつエイズでよく誤解されがちな、「唾液で感染する」という話であるだけに、真実であるとは私には思えません。なおエイズは血液などからは非常に感染しやすいですが、唾液から感染するためにはバケツ数杯分を一気に飲みきる必要があります。
 こうしたニュース元の怪しさに加え、中国の報道を見ていてこの新型エイズに関する報道は少なくとも私はほとんど見受けません。仮に中国本土だけならともかく、こういうネタに飛びつきそうな香港メディアもほとんど取り扱っていないようですし、まぁ引っかかるネタではありませんね。

 そんな具合でこの新型エイズ自体はデマだと私は主張しますが、中国のエイズ事情、特に記事中にある「エイズ恐怖症」に関しては実際にあるとよく報じられています。このエイズ恐怖症はあくまで「自分がエイズ感染者だと思いこむ」ことによって身体的変調が起こる症状ですが、中国ではエイズ感染者が増加しており、市民が持つ恐怖感は日本と比べても高いような気はします。去年にもタクシー車内にエイズ患者の物と思われる注射器が転がっていて気づかずに座席に座ったら注射器が太ももに刺さり、感染したのではないかと感じたその男性が思い悩んだという事件が起きています。検査したら陰性だったようですが。
 中国政府もエイズの感染拡大には様々な防止策を打ち出しておりますが、歯止めをかけるには至っておりません。国立艦船研究所によると日本はやや横ばいの状態のようですが、目的は一致しているのだしこういう方面で両国が協力しあってければいいなと個人的に思います。

2013年2月12日火曜日

アベノミクスの円安メリット、デメリット

 本日北朝鮮が核実験をやったと発表し、国際政治を専門にしている当ブログの方向性からは取り上げるべきなんでしょうが、報道ベース以上の内容は語れないし、日本のメディアが今日はこの件ばかり報じているのが少し煩わしさを感じるので、延び延びになっていたアベノミクスについて今日は書いてきます。日本帰ってきてから気になるけど、どうしてどの放送局のニュースも同じような切り口ばかりなんだろう。

 話は本題に入りますが、もはや海外でも「アベノミクス」と報じられるほどに日本の円安が昨年末から一気に進みました。これほどまでに円安が進んだ理由はいうまでもなく安倍首相が前回衆議院選挙前から主張してた、インフレ目標を2%に定めるという強い方向性が最大の要因でしょう。そしてこの方針に当初反対の姿勢を示していた白川日銀総裁も退任が決まっており、後任にはより安倍首相の考えに近い人が就くでしょうから、円安が1ドル=100円を大きく上回ることはないでしょうが円高に再び戻ることはしばらくはないと見てもいいでしょう。
 その上でちょっと下世話な予想をすると、今夏に予定されている次回参院選で自民党が大勝すれば株価は現状よりさらに跳ね上がる可能性があると勝手に見ています。今のままならまず間違いなく大勝するでしょうが、まだ失言など波乱もあるかもしれず、4月くらいまでは様子を見る必要があるのでしょうが、4月まで波風なく政権運営をし続けていれば株は買い時かなと友人と話してます。

 さっきから話が脱線しまくっていますが既に1ドル=90円を超えており、円高によって青息吐息だったメーカーをはじめとした輸出産業は復活の兆しを見せております。この円高、私はアメリカが先に「いい加減にしろ(#゚Д゚) プンスコ!」と言ってくるかと思いましたが、意外というのもなんですがドイツのメルケル首相の方が先に「日本の為替操作だ(#゚Д゚)ゴルァ!!」と怒ってきました。このドイツの主張に対して麻生財務相は昔には1ドル=120円だったこともあり、今以上に円高は進んでいたので為替操作に当たらないと言い返しましたが麻生財務相にしてはといってはなんですが、うまい切り返しだったように思えます。本音としては「あれだけ日本円高でボーナスタイムあげたのに、それしかシェア取れなかったの?( ̄ー ̄)フッ」とまで言ってもよかった気がしますが。
 ただこの時のやり取りを見て少し感じた事なのですが、思っている以上にドイツが焦っているようです。ドイツ、日本と同じく輸出がメインの韓国も円安に加えてウォン高が始まり苦しんでいると聞きますが、逆の見方をすればこれらの競争相手から恐れられるほど昨今の円安は強烈なパンチになっていると言えるでしょう。

 ただこの円安、メディアでは万事が万事福を運ぶものとして経済的に歓迎する報道が多いですが、私は必ずしもメリット一辺倒のものではなく大きなデメリットも含んでいると考えております。もったいぶらずにそのデメリットを指摘すると、輸入費用の増大です。
 円安は基本的に輸出企業にとってはメリットしかありませんが、輸入企業にとっては100万円で輸入できたものが120万円になるなど、マイナス要因でしかありません。日本は確かに輸出企業が多いことは多いのですが、その一方で食料とエネルギーの大半は輸入に頼っており、市場規模も決して小さくありません。特にエネルギーに関しては原子力発電所が止まっている関係で火力エネルギーの輸入量が増大しており、昨年末に戦後かつてないほどに貿易赤字が拡大した原因ともなっております。

 敢えてクエスチョン形式に書きますが、どうしてこうした円安のデメリットについての報道は少ないのでしょうか。答えは非常に簡単で、重工業をはじめとした輸出企業が日本ではやけに発言力が強く、食品など輸入企業の声は非常に小さいからです。まだ東電などは声がでかい方ですがそれでも円安は絶対的な善とまで報じられるのはこうした日本の産業構造というか、財界での発言力の差が大きいと私は見ています。
 皮肉な話ですが、東日本大震災以降に日本は円高に振れて大きく助かったという面も少なくありません。先にも書いた通りに震災以降は減少した原子力発電量を火力発電で補ったために重油などの輸入量が増えましたが、円高によってその費用は少なからずペイできておりました。それが今回円安になって、関電なんかは役員給与などもうちょっと絞れるでしょうが、やっぱり電力会社はこの先厳しさを増すでしょう。

 では日本は円高のままがよかったのか。この問いに対する私の答えはNOで、円安に誘導するアベノミクスを支持します。その理由というのもあまり深く考えた物ではありませんが、あのまま円高が続けば日本の産業全体が打撃を受けたままで、即死とはいきませんがジリ貧になるのは見えていたからです。それならば輸入企業には多大な負担をかけ貿易赤字も一気に広がる可能性を孕んでいるものの、輸出企業の活性化を促して外貨を稼ぎ、その上でエネルギー対策をするという博打に出る方がまだ活路があるような気がします。
 ただ円安に誘導するこのやり方、決して簡単な道程ではないでしょう。それこそ1ドル=120円くらいまで一気に飛んだら冗談抜きでエネルギー資源の輸入に支障をきたすでしょうし、外国からも猛烈な批判を受けダンピング措置を取ってこられる懸念もあります。そういう意味では現在政府が出している1ドル=95円前後という指標は私からしても適切な数値に思え、これ以上に円安にぶれるようであれば政府も本腰で抑えにかかってくるのではないかというのが私の意見です。

2013年2月11日月曜日

続、中国艦船のレーダー照射事件について

 以前にも取り挙げた、中国の艦船が火器管制レーダーを日本の艦船に照射した問題について、続報が出てきたので軽く自分の意見も書いていきます。

中国艦船のレーダー照射を「面子」から考える (1)

 上記のページは国際政治学者の六辻彰二氏のブログの記事ですが、言いたいことは基本的に私も同じです。六辻氏は上記のページにて今回のレーダー照射問題の背景には下記二つのシナリオがあると指摘しております。そのまま抜粋すると、


1、国際常識に乏しく、なおかつ反日的な末端の兵員が、勝手にレーダーを照射した。それを公にすれば、人民解放軍の管理能力に対する評価を著しく損なうため、「事実でない」と強弁している。

2、日本に対してプレッシャーをかけるため、実は政府レベルから、明示的であれ暗示的であれ、フリゲート艦にレーダー照射の指示があった。それもやはり公にできないので、知らなかったふりをして、「事実でない」と強弁している。


 現状出ている情報を見ている限りこの二つのシナリオのうちどちらかでほぼ間違いないでしょう。その上で私の意見を述べると、やはりシナリオ1、つまり政府の指示がないままに現場の人民解放軍が勝手に照射してしまったという可能性が高いとみております。今日ニュースを見ていたら自分が尊敬する富阪聰氏も同じこと言ってたし。
 こう考える理由は一つ、事件発覚直後の中国政府報道官の反応です。記者団にこの件を触れられた報道官は当初、「この件に関して把握しておらず現在回答できない」と、ビデオ映像で私もこのように述べているのを確認しました。正直に申してこのような回答は異例中の異例で、事件発生に中国側も明らかに戸惑っているように私には見えました。では何故戸惑ったのか、やはりレーダー照射が行われていたことを政府は把握しておらず、対応を当時検討していたからだと思えます。

 ここで少し話は変わって、中国政府と共産党の関係を少し解説します。中国の政治は共産党一党独裁なため基本的に共産党=中国政府と考えていいのですが、役職とかそういうものは国と党とで微妙に異なっております。たとえば「総書記」という役職は共産党の最上級役職であって、中国政府の役職ではありません。一方、「首相」というのは中国政府の役職で共産党の役職ではないのですが、共産党のナンバー3とか4が就く役職なので、共産党内の「総書記」の命令には従うという仕組みになっております。
 そうした事情を踏まえて述べると、「人民解放軍」というのはあくまで共産党の軍であって中国という国家の軍ではないのです。最近は制度上でも国家の軍になりつつはありますが、共産党の言うことを聞く理由はあっても中国外務省など国家の機関の命令に従うという制度規則はあるのかないのかあいまいな状態です。それゆえ上記のシナリオ1のようにレーダーを照射したかどうかで、中国外務省は確認に戸惑ったのもさもありなんという話になるわけです。

 それだけに今回の事態、政府の意向を関係なしに人民解放軍が勝手に行ったとなるとなかなか怖い話だと思います。仮に六辻氏の言う通りに現場の指揮官が国際感覚に疎くてちょっと脅かしてやろうっていうつもりで照射したならともかく、確信犯で紛争になってもいいやとばかりに、政府のコントロールなしにそう判断して実行したとなると、何かひょんなことで実戦に移る可能性も否定できません。可能性は低いとはいえ。
 実際にこの問題、人民解放軍にとっては前々から非常に都合のいい問題だと考えています。軍隊というのは平和になれば予算は削減される傾向にありますが、危機感が高まれば高まるほど強く予算増額を要求できます。連中にとって、尖閣問題が大きくなればなるほど都合がいいのです。もっともそれを言ったら日本の自衛隊にも当てはまる節がありますが。

 私が何を言いたいのかというと、中国政府のコントロールがあまり効いてないようであれば人民解放軍はより危機感をあおるような過激な行動を取りかねないことです。もし中国政府が事態を発展させたくないと考えているのであれば、この点に関して日中両政府でしっかり押さえていくことが肝要になるというのが私の結論です。

2013年2月10日日曜日

日本人の視線

 自分のパソコンは中国関連の単語をタイプすることが多いので「しせん」と入力すると「四川」と変換されて「視線」にならないことが多いです。それとはあまり関係はないですが、日本帰国から五日経ち日本人の視線について思うことがあるので今日はこのテーマで一本書いていきます。

 日本に帰ってから当初は自転車で自宅周辺を回る日々でしたが、昨日は用事があって東京の方へ電車に乗って遠出しました。その電車乗車中、駅に停車して乗客が乗り込むあの瞬間に何故だかよく乗り込む客が自分に視線を向けてくるのでこちらも視線を向けたところ、パッと逆方向に視線を向きかえられるということが異常に多かった気がします。もっとも前から日本にいる人からしたら当たり前の光景かもしれませんが、つい一週間前まで上海で過ごしていた自分からしたら違和感があり、なんでそんな視線の向け方するのかなと少し不思議に感じました。

 あくまで私の実感ですが、中国でも道歩いていて向かいから歩いてくる中国人がこっちに視線を向けてくることは多いにあります。でもってその視線にこちらが反応して相手に向けると一瞬目が合い、「ん、なに?」って具合で見据えるとまた自分の進行方向、または周囲へ自然と視線を戻すというパターンが大半です。これに対し日本人(自分もだが)はやたらめったら周囲の人間に視線を送る、それも相手にばれないようにそれこそ忍者みたいに視線を張り巡らそうとする人が多いような気がします。といっても視線なんて後ろからならともかく正面180度以内から向けられでもしたらいくら忍んでいたってすぐわかりますし、私が反応して逆視線を向けるといかにも「マズっΣ(゚Д゚;)」っていうくらいに真逆の方向に視線そらすから、こういってはなんですがバレバレです。

 私がクエスチョンを持つのは、全員が全員ではありませんがどうして日本人はやたらめったら周囲に視線を向けるのか、でもって逆に視線を向けると何故そんなに慌てるのかの二点です。私個人の考えとしては普通に歩いてりゃ進行方向などに注意向ける必要があるのだし他人と目が合うことはおかしなことではないのだから忍んだりせず堂々と見りゃいいのに、はっきり言えば何故それほど怖がるようなそぶりを見せるのかがわかりません。ただこういうのは思い起こすと関西では中国と同じく全くこういうことはなく、関東限定の現象なのかもしれません。
 ちょっと紙幅が余っているので帰国後の近況を書くと、環境の変化に伴って躁鬱状態になるだろうと予想してそれなりに対策を立てておりましたが、案の定というか昨日までハイテンションな状態が続いておりました。今日昼寝したあたりから前ほどの高揚感はなくなったので鬱期に突入したかと思いますが、鬱といってもなんとなくだるいなぁって思う日が続く程度なので、そこそこ対策が奏功したかと考えています。後ほんとどうでもいい話ですが先程スーツを買いに洋品店行ってウエスト測ったところ、長い中国生活で細くなってたせいか「このサイズに合うのはうちでは一着です」と言われてしまいました。そりゃまぁ、選びやすいんだけどさ。

2013年2月8日金曜日

レールアウト、トライアウト~後編

 前回に引き続き今回も自分語りですが、前回では自分が中国に渡ったところまで話しました。少し解説し忘れた点があるのですが、中国での私の雇用形態は現地採用方式で、雇用に関する基準も日本の法令にではなく中国の法令に沿ったものでありました。これが何を意味するかと言うと、一番大きな影響は賃金にあり、時間給では確実に日本の最低賃金をブッちぎっててリアルに年収は為替変動もありますが、日本円で150万円を切っておりました。ただこの賃金の低さ自体は契約前に提示されており私も納得してサインしているので文句を言うのは筋違いですし、むしろ未経験者が入り辛い編集業務に入れてもらったことに強い恩を感じております。まぁこれで給与も高かったらもっと良いに決まってますが……。

 何はともあれそうして編集職での生活が始まったのは2011年3月からで、最初は中国語の翻訳すらおぼつかなかったものの何とか仕事も少しずつできるようになり、また2011年10月から12月には香港へ長期出張に出かけるなど、2011年の一年間は今以てしても中身の濃い一年だったと記憶します。本格的に中国、上海での仕事生活が始まったのは香港から帰ってきた翌2012年1月からですが、この頃からは取材などにも頻繁に出かけるようになりそれなりに充実していたかと思います。
 知ってる人には早いですが私はもともと記者職に就きたいと考えていたものの、この業種への就職では不利となる関西圏の大学に進学した上に見事に新卒で入れなかったことからもうかかわることはないと思っていただけに、中国に来てこのような職に就くとは非常に運命はわからないものだと強く感じました。先にも書いてある通りにこの業界は異業種からの転職が難しく経験者が優遇される業界だけに、恐らく日本国内に留まっていれば全くチャンスはなく、最低限翻訳することのできる中国語能力が求められた現地採用だからこそうまくもぐりこめたと思うし、実際に会社の上司らもそう言っていました。

 ただそうして憧れの職業に就いたものの、迷いと言うかこのままでいいのかという気持ちは常に抱いておりました。というのもこれは新卒の就職活動時にも考えていたことですが、仮に新聞社なりで編集職に就いたらほかの大多数の人間が就く仕事、たとえば営業なり経理なり事務なりといった仕事が一切体験できない、分からないままで一生が終わるのでは、それはそれでなんかおいしいところを逃してしまっているのではという懸念がありました。まどろっこしい言い方せずにストレートに書くと、記事しか書けない人間で終わってしまうのはもったいない、記事も書ける、営業もできる、経理もできる、経営もできるような人間の方が圧倒的に強くて楽しそうじゃないかと考えてました。幸いと言うか自分の場合はまだ日本で就職した会社で貿易事務をやり、簡単な営業とかも経験してはおりますが、それでも仕事内容は新人の範囲に留まっており個人的にはまだ納得できる量ではありませんでした。

 そんなわけの分からない思想を持った自分が出した結論というのも、もったいぶって言うほどのものではありませんが三度目の退職でした。素知らぬ振りしてブログも更新し続けておりましたが、実は三日前に日本に帰国し、現在自分の会社の設立手続きを進めております。編集職に未練がなかったわけではありませんが、もっと自分の力量を試してみたい、伸ばしてみたいという気持ちと共に、中国への転職前にNHKの取材を受けた際、「やる気のある若者を日本はどんどん海外に送り出すべきだ。そして将来、そういう人たちに日本に帰ってきてもらって国内の成長を担ってほしいです」と、NHKの記者に言われた言葉を自分自身で実行すべきだという、また妙な結論に至ったわけです。前から単純に、今日本に何をするのが一番ためになるのかと言えば少しでも雇用を作るべきだと思っていたし。

 そういうわけでプロフィール欄もちょっと変更し、また心機一転でこのブログを運営して行こうと思います。最後になりますが現時点でもう自分は、日本において一般的な社会地位向上のレールから大きく逸脱したと考えています。多分この後は落ちる一方でしょうが、少なくともそれはすべて自分の責任に由来するもので納得することはあっても後悔することはないと思います。
 それにしても、我ながら思い切った性格してるなぁとため息出てきます。

2013年2月7日木曜日

レールアウト、トライアウト~前編

 学生時代に何気なく友人に言われた一言の中で印象に残っているものとして、「花園君って、これまでパーフェクトな人生を送ってきたんでしょ」というものがあります。この発言をした友人は自分の出身大学に入学するまで二浪していたというのが大きな要因でしょうが、中高一貫の私立校に入学してストレートで四大に入った自分は確かに一見すれば日本で典型的な学歴獲得ルートで、そのように見えたのかもしれません。
 ただ私個人としてはこう言われてやや心外だったという気分を当時に持ちました。というのも私立中学への進学は自分が望んだものでなく、なおかつ当時の同級生にこのところ「そこまで嫌だったの?」と言われるくらいに中学、高校時代は楽しいものではなく、なんていうか非常に制限が多くて煩わしいの一言に尽きる時代だったからです。もっとも、別の学校に行っていたら違っていたのかといわれればそうではなく、多分大きな違いはなかったでしょうが。

 ただ大学への進学は浪人を経験することなくストレートで、満18歳での入学は今じゃ決して珍しいものではありませんがスタート的には恵まれた状態だったと言えますし、横並び的な年齢価値観で言えば一応最前列ではありました。そんな自分が初めて最前列から降りたというべきか、年齢の基準を一段落としたのは大学三回生の頃で、通っていた大学を休学して一年間中国に留学に行ってきました。休学した関係から帰国後は学年が一つ落ちてかつて同学年だった友人らは就職内定を得て卒業を待つ身となっておりました。
 もっとも、学年が一年落ちたといってもブラブラ遊んでいたわけでなく留学だったので、見方によればプラスな経験ともとることができます。その後も無事に就職内定を得て大学卒業後はきちんと正社員の身分で社会人生活もスタートでき、細かい内実はどうあれ終身雇用的な価値観では経歴的に全く傷のない状態がこの時も続きました。

 そんな自分にとって初めて、ドロップアウトとまでは行かないまでもレールアウト、脱線的な事件が起きたのは三年前の2010年で、新卒で入社した会社を退社して中国にある会社への転職を図りました。今現在を以ってしても最初に自分を拾ってくれた会社には強い恩義を感じておりますし退社したことに後ろめたさを感じておりますが、はっきり言ってしまえばどうしても譲ることのできない事件が起こり、自分の意に反して引かざるを得ない立場に追い込まれたことが退社の理由です。
 こういうとなにか大きな事件に巻き込まれたように見えますが、事件自体は非常にごく些細なものです。ただ当時もそうですし今現在も同じ考えですが、あれだけごく些細な問題にもかかわらず、周囲も自分に全く責任がないと認知しつつも自分に謝罪するよう要求したことを受け、「このままこの会社にいたら、問題の大小にかかわらずなんでもかんでも責任をおっ被せられるかもしれない」という懸念を抱きました。この辺は「~に過ぎない」か「~にもかかわらず」のどっちかを取る議論となりますが、自分は後者を選びました。

 今時入社数年で転職すること自体はそれほど珍しくありませんが、それでも終身雇用的な価値観が強い今の日本で転職、それも国内ではなく海外に求めたというのは経歴上、明確な脱線に当たると思います。私個人としてもこれが一つのルビコンに当たると当時認識しており、一般的なレールの上から外れて別のレールに乗り移るか、レールのない荒野を走るかのどちらかになるだろうと自覚しながら中国にやってきました。
 もっとも最初の転職は見事に失敗というか、グラスワインを5杯くらい連続で一気飲みすることを強要したり、自分の入社前の問題(仕入れ発注ミス)を自分におっ被せるような前近代的な会社に入ってしまっていろいろ苦労し、乾坤一擲のつもりで中国に渡ったものの運がなかったとこの時はつくづく思いました。ただ自分の運は尽きていなかったというべきか、中国に渡って4ヶ月目で別の会社に再転職し、曲がりなりにも経済紙の編集職を得ることができました。もはやこの時点で三回目の新入社員体験をする羽目となり、変わった星の下で生まれたのだろうと自覚し始めておりましたが、この時点できっとまだ波乱はあると内心考えておりました。続きは次回で。

2013年2月6日水曜日

中国の大気汚染について

 先日に日本にいる友人とスカイプで会話をした際、「そっちの大気汚染ってどんな状況なの?」と真っ先に聞かれました。何でまた急にそんなこととか気になるのかなと当時は思いましたが、どうもネットニュースとかを見ている限りだと中国の大気汚染について華々しく報じられているようで、その友人以外の人間に誰に聞いても同じような質問がされるので、今日はこの辺で私の知っている話を軽く紹介しようと思います。

 まず中国の大気汚染の状況ですが、現地の報道でも年々悪化していると報じられております。悪化している原因というのは複数ありますが、一番大きなものは経済成長に伴う生産増加によって工場などの煤煙排出量が増えていることで、その次としてモータリゼーションに伴う自動車の排気ガスが来るといったところです。汚染の程度は地域によって差があるのですが、もとより交通渋滞が激しく乾燥した土地の北京市が最悪とも伝えられており、先月には北京市郊外にある鉄工所などに臨時で休業するよう当局が命令を出すなど矢継ぎ早に対策を出しております。少し経済情報的なものを流すと、こうした臨時休業命令は今後拡大する恐れがあり、北京市に工場を持っている日系企業も対象となってくる可能性があります。また市街地に近い場所にある工場に補助金を出して移転させるという政策も既に実施されており、設備移転や拡張を考えている日系企業にとっては考慮していく材料にはなるでしょう。
 北京以外の都市でも内陸部を中心に大気汚染がひどく、たとえば先週に私が行った合肥市などは滞在中、ついぞ一度たりとも青空を見ることができませんでした。この辺などは中国にいったことがない人にはあまり感じづらいかもしれませんが、日本に帰国するたびに青空がきれいだと心底感じるほどに中国では空が澄み渡ることはほとんどありません。夏場などはまだマシですが、冬場はほぼ毎日に渡って曇った日が続きます。あと上海市に関しては、工場の郊外移転や排出基準などがある程度厳しく設定されているのと、しないに黄浦江という川が流れ海に近いことからまだほかの都市よりはマシだと思え、青空も見ることができます。

 話は変わりますがこれら大気汚染の程度を測る基準として、日本でも報じられておりますが「PM2.5」という物質の飛散量が中国では採用されております。このPM2.5という物質ですが自分も具体的にはどんなものかまでは専門でないので分かりませんが、非常に細かい微粒子のためマスクをしても貫通して喉に入るという物質らしく、厄介そうなものだとはつくづく思います。
 このPM2.5、報じられるようになったのは去年の春頃でそのときにも大気汚染がニュースの大きなテーマとなっていたのですが、確か5月くらいにアメリカ大使館が、「俺たちも自前で測ってみたけど、中国政府の発表以上に飛散量が多い」と発表したことがありました。これに中国政府が「勝手に計測するな(#゚Д゚) プンスコ!」とマジになって怒り、アメリカ大使館側も「だが断る(゚ω゚)」と言い返した後はなんか急に尻すぼみになって報じられる回数が急減したのですが、何故か今年になってまた急に報道回数が増え始め、この辺に何か意図があるのではないかと思います。

 ちょっと回りくどい言い方になりましたが、中国の大気汚染は何も今に始まったことではなく以前からです。確かに程度は徐々にひどくなっている実感はありますが、今突然急に悪化したのではなく、今突然急に報じられるようになったというのが真実だと思います。一体何故急に報じられるようになったのか、推論で申せばこれから中国政府こと習近平政権は環境問題とその対策を大きな政策テーマに持っていこうとしているのではないかと思います。
 専門家には話が早いですが江沢民政権は「科学的発展」というスローガンの下に経済成長を、胡錦濤政権は「和階社会」というスローガンの下に格差改善を最大の政策テーマに掲げました。日本だとあまりなじみがありませんが中国ではこうしたスローガンが大きく意味を持つというかいろいろあるのですが、これまでの軌跡とかを見ていると習近平政権は「緑色社会」など環境改善をテーマに持ってくるのではないかと前々から感じております。そのためお膳立てとばかりに、今の中国は環境が大きく悪化していると報じて危機感をあおり、それを改善させることで支持向上につなげようとしているのではないか、というような考え方もできるというわけです。あくまで推論ですが。

 最後に中国の大気汚染が日本に与える影響ですが、言うまでもなく偏西風は西から東へ流れるので日本の空気も巻き添え食って悪くなるのは自明で、勝手な見立てだと黄砂も一緒に飛んでくる4月あたりが花粉とのダブルパンチになって最悪な状況になるんじゃないかと思ってます。この辺に関しては日本も中国に対して対策実施を強く主張するべき位置にあるのでもっと強気に攻め、それこそ日系企業の環境対策グッズを率先して買うように話を持っていくべきでしょうし、政府だけでなく一般市民に対して、「日本製を使えばよくなる」という事実をしっかり伝えていくことが肝要です。

 なおこれは恐らく蛇足になるでしょうが、日本のテレビ番組で本日テリー伊藤氏が、「中国人は日系企業が中国で製品を作るために煤煙を出しており、日本人が大気を汚染させていると主張している」という発言を行いましたが、少なくとも私が見ている限り、中国の主要メディアでこのような主張をしている媒体は見たことがありません。テリー伊藤氏には是非出典を明らかにしてもらいたいのですが、勝手な想像だとそれこそネット上の一意見をさも代表性があるかのように言ったのではないかと思います。
 先にも申している通りにこの問題では日本は中国に対して対策実施を強く主張できる立場にあると思います。しかし不必要に日本人の対中感情を煽ってまで問題の深刻性を主張するのは筋違いでしかなく、このような主張に対しては批判的な立場をとらせていただきます。

2013年2月5日火曜日

中国艦からの火器管制用レーダー照射について

中国艦、海自艦に火器管制用レーダー照射(読売新聞)

 もう今日は合肥の旅行記事だけで終わりにしようかと思っていましたが、大きなニュースが飛び込んできたので簡単に現地の報道などを紹介しようと思います。
 まず上記ニュースの内容を簡単に説明すると、尖閣諸島付近に出張っている中国の軍艦がミサイルなどの火器照準用レーダを日本の海上自衛隊の護衛艦に照射してきたと日本側は主張しています。さすがに根拠もなくここまで日本も主張することは考え辛く、実際に中国側は照射してきたのだと私は思います。そしてこの行為はいくら示威行為だとしても、軍事関係に疎いのでどうかはわかりませんが、やっぱり極端な行為だと思え日本側が取った抗議も正当なものだと考えています。

 それで今回のこの事件、中国ではどのように報じられているか調べてみました。新華社の記事を見る限りではレーダを照射したという上記の日本側の主張と、その行為に日本が抗議したという事実だけを簡潔に報じており、特に解説とか反応に関しては何も報じておりません。明日、どのように書いてくるかが注目でしょう。

安倍晋三の苦しい踊り(人民日報 日本語版)

 少し気になったので人民日報の日本語版も見てみたのですが、レーダー照射に関しては何も書かれていなかったものの、上記の安倍政権を批判する論説記事が載っておりました。中国メディアが安倍政権を批判するのは何も今に始まったことではないのですが、今回のこの内容はかなり過激にかつ強力に批判しており、考えすぎかもしれませんが掲載タイミングにきな臭さを覚えます。

 ちょっとこれだけでは短いので少し私見を加えると、何故このタイミングなのかというものを感じます。というのも先日、公明党の山口代表が習近平総書記と対談するなど去年9月に冷え込んだ日中関係は回復の兆しを見せており、日系自動車メーカーの販売台数などもまた盛り返してきております。政治的、経済的にも雪解けが起こり始める中でどうしてすべてを無碍にするような今回の行動を取るのか、勝手な推論を書けばこの行動は習近平総書記をはじめとする共産党幹部が承認しての行動なのか、人民解放軍が独自に行っての行動なのか、ここが気になります。また中国は今週末から旧正月こと春節が始まり経済はおろか政府機能がほぼ停止します。そうしたことも考慮されて今回のような行動を取ったのか、考えればきりがありません。
 どちらにしろ、相手がどのような反応をするのかを見極める必要があり、余裕があればまたこの件で続報を書いていきます。

  おまけ
 今回の記事を書くに当たって新華社のサイトを見ていたら、「日本の”変態的”女子相撲文化」という記事が目に留まり、思わず見入ってしまいました。その内容、相撲は女性禁制で太田房江元大阪府知事が土俵に上がれなかったことやら、相撲の歴史は日本書紀に遡るとかやけに詳細に書いており、明治や大正時代の女子相撲の写真やポスター、この前青森で開かれた女子相撲の世界大会の写真など驚くくらいに充実しており度肝を抜かされました。それにしても「変態的」と書かれても強く言い返せないなと素直に感じます。

合肥旅行~包拯と李鴻章

 昨日に引き続き合肥の旅行記です。昨日は動物の写真ばっか載せて「合肥関係ないやん」と自分でも突っ込みたくなる内容でしたが、今回は合肥出身の有名人二人こと、包拯と李鴻章を中心に書いていきます。


包拯(Wikipedia)

 包拯(包公)というのは北宋時代に活躍した官僚で、日本ではあまりなじみがありませんが裁きが厳正だったことから悪人からは恐れられ、善人からは親しまれるという絵にかいたような名役人で、死後は講談などにも取り上げられてますます人気となっていった人物です。この人物、日本風に言うならば「大岡越前」に当たる人物で、講談などではよく裁判シーンが取り上げられて名裁きを下す人物として描かれております。
 先にも書いたようにこの人は合肥出身で、市内には彼を祭った祠、そして併設する彼のお墓があります。友人の上海人は包拯のことはもちろん知っておりましたが、彼が合肥出身だとは知らず墓を訪れた際は非常に驚いておりました。なおこのお墓ですが、案内書きを見てみるとつい最近までどこにあるのかでもめていたそうです。恐らく合肥にあるのだろうとは考えられていたものの確証がなく、20世紀に入って発掘調査が行われ、彼の遺骨を納めた石室が見つかったことからはっきりしたそうです。この石室ですが小さなトンネルとなっており入ることも出来るのですが、さすがに罰当たりだと思って写真は撮りませんでした。


 何故か包拯の祠の前の水がめにはコインだけでなく紙幣が投げ込まれておりました。ここはコインだけにすませばいいのに。


 上の写真の胸像は包拯と同じく合肥出身で、日清戦争で北洋軍閥を率いて明治の日本軍と戦った李鴻章です。日本史だと清側の敗軍の将で下関条約(中国では馬関条約としている)の代表として人物名は覚えるもののあまりパッと書かれてはおりませんが、実際の中国史では自らの民兵組織を元に北洋軍閥を起ち上げて、西洋技術の導入を目指す洋務運動を推進するなど超重要人物です。私個人的にも興味のある人物で彼の住居跡が博物館になっていると聞いて今回訪れてみたのですが、何に一番驚いたかっていうと招商局を作ったのがこの李鴻章だったということです。

 招商局というのは現在は香港系コングロマリット(複合企業)で、海運から不動産、金融まで幅広くやっている企業団体です。中国本土なら招商銀行というATMが充実した金融機関が一番目につくかと思いますが、中国本土以上に香港での影響力は半端じゃありません。香港で開かれる国際見本市にはほぼ必ずここが協賛しており私もよく見ていたのですが、この招商グループを李鴻章が作っていたというのは正直言って意外でした。調べてみると官営海運会社としての位置づけで作られたようですが、設立から地味に100年を既に越しております。

 この日はその後、宿泊先のシェラトンホテルへと向かったのですが、捕まえたタクシー運転手に「シェラトンだ」と伝えると、我々が予約した本物のシェラトンではなくみんな偽物のシェラトンホテルへと行こうとするので、住所を何度も説明させられる羽目になりました。それにしても、偽ブランドなのにこうもみんな信じるのだからやっぱり効果はあるのだろうな。
 そのシェラトンですが、合肥駅の近くにあるものの道路が一部修理中のために大回りをさせられる羽目となり、また渋滞がひどくてなかなかたどり着かず6時半くらいになってようやく着くことが出来ました。そして次の日は午前中はぶらぶらし、午後一の列車で上海へと帰ったわけです。

 ざっとこんな感じで合肥旅行を終えたのですが、昨日にも書いたように交通事情は最悪といってもいいほどでした。同じ内陸部でも合肥以上に日本から遠い武漢や重慶と比べても日系企業の進出は少ないのですが、あの交通の悪さを見るにつけ、自治体のガバナンスが弱いというか外資誘致の仕方とかがうまくないのではないかと思わざるを得ません。断言してしまうと、合肥に進出するくらいなら武漢や重慶へ行った方がマシです。
 ちなみに合肥の交通ですが地下鉄はなく移動は基本タクシーかバスしかないのですが、タクシーが全然少なく待っても待っても来ません。その一方、正規に営業許可を取っておらず違法にタクシー業に従事する、通称白タクは跋扈しており、ただ路上で信号待ちしているだけでも「どこ行く?」って車を止めて聞いてくるので、友人の「無秩序な場所で秩序に従ってはいられない」という言葉の元に大いに活用しました。意外に料金もリーズナブルだったし。

 ただ一回えらいことがあったというか、自分と友人の二人を既に乗せているにもかかわらず別の歩行者にも「どこ行く?」とさらに乗っけようとする白タクがいたのですが、まさにその現場を警察官が見ていて、そのまま運転免許証を取り上げてしまいました。「免許証ないからここで降りてくれ」と言われてそのまま下りてまた別の白タクを捕まえましたが、二兎を追うものは一兎をも得ずを間近で見ることとなりました。

2013年2月4日月曜日

合肥旅行~大気汚染と野生動物園


 昨日にも書きましたが、先週末に安徽省合肥市に友人の上海人と旅行に行ってきました。なんで合肥に行こうかと思ったかというと、割と近場で三国志の「合肥の戦い」で有名だし、ちょうどいいから行ってみようということになりました。結論から言えば、そんないい旅行じゃなかったです。

 まず上の写真を見てもらえばわかる通り、というか日本でも大きく報じられてるかと思いますがめちゃくちゃ空気悪かったです。上海なんかはまだ空気はマシな方だし昨日はきれいな夕焼けも見ることが出来ましたが、合肥にいる間は青空なんて一片たりともありませんでした。また空気が悪いだけじゃなく、路上を走る車が中国の都市の中でも異常に多く排気ガスがリアルにきつかったです。これまで中国で渋滞が起こりやすく道路が悪い都市といったら真っ先に北京を思い浮かべていましたが、下手したら合肥は北京以上にひどいかもしれません。実際にタクシーに乗ってホテルに向かう際、渋滞がひどくてなかなか前に進みませんでした。

 時系列に沿って日程を説明しますが、2/1(金)に上海駅から高速鉄道に乗り込み、合肥市へと向かいました乗車時間はわずか3時間で距離を考えると非常に早い移動です。合肥に着いたのは午後5時過ぎだったのでそのまま宿泊先のインターコンチネンタルホテル、今回の旅行は近場な分、いいホテルを選んだのですが、タクシー乗り場を見ると凄い長蛇の列。結局、タクシーに乗ったのは一時間過ぎた6時半くらいで、ホテルに着いた頃には8時前となっておりました。
 ホテル自体はインターコンチネンタルなだけあって立派でしたが、部屋に入って驚いたのは浴室です。




 ちょっと見た目わかりづらいですが、なんとバスタブが浴室の外から丸見えという驚きの設計。普通、カーテンレールとかあるのにこのホテルに至ってはそんなの皆無。奥にはちゃんと仕切りが設けられたシャワー室がある分、何故浴室は丸見えなのか理解に苦しみました。結局、それで使わなかったんだけど。


 一夜明けて次の日、ホテル近くにある合肥野生動物園に行ってきました。野生というだけあってかなり近距離から動物を見ることが出来て非常に楽しめました。上の写真は鹿ですが、何故か奈良のと同じでカメラ目線の鹿が多かったです。それにしても奈良市内は野生動物園ってレベルじゃないよな。


 こちらはテナガザルですが、ピーナッツなりみかんなりを投げるとジャンピングキャッチで取ったり、遊具につかまって回転しながら受け取ったりするなど、動画を撮っておけばよかったと思うくらい動き回っており、友人がえらく興奮してました。確か30分以上はここにいたような。


 客にもらったペロキャンを人間っぽくなめてる写真です。


 テナガザルのほかにもこの動物園はやけに猿が多く、しかも客からエサをもらい慣れているというかこうして露骨に手を伸ばしたりする猿を多く見受けました。中には隣の猿がエサをもらっているのを見て、俺にもよこせとばかりに檻を揺らして音を鳴らすのもいたくらいです。




 自分が好きなレッサーパンダももちろんおり、写真のように二本足で立ってはエサをねだってました。それにしてもレッサーパンダは風太君以外も普通に立つんだな。



 本当は野生動物園の後に三国志の古戦場である「合肥新城跡」に行く予定でしたが、中心部から非常に離れた距離にあるだけでなく、一度行ったことのある同僚が「期待するな」と言っていたので、そのまま敢えて見送りました。郊外だから渋滞はないとはいえ、ほかにも回る所もあったし。そんなわけで、続きはまた次回に。

2013年2月1日金曜日

春節前の中国人大移動



 本日旅行から帰ってきたので、このブログも再開です。旅行先を先に明かしてしまうと安徽省の合肥市といって、三国志を知っている方なら魏と呉の「合肥の戦い」で有名なところです。詳しくはおいおい書いていきますが、今日は夜も遅いので中国のお正月に当たる春節前の民族大移動について紹介します。

 上の写真は2/1に上海駅で撮ったものですが、確か2/8から始まる春節を目前に控えて非常に混雑していました。この春節前の大移動、中国語で「春運」といいますが、ゲルマン民族もびっくりなくらいの大移動で中国の鉄道部にとってはこの時期をどれだけ上手く捌けるかによってその後の昇進などに影響してくると聞きます。中国は昔の日本のようにお正月は一族が集まるべきだという意識が強く、都市部に出稼ぎに出ている人間もこの時期だけは何としてでも帰ろうとするので鉄道チケットもすぐ売り切れてしまいます。

 今回自分が移動したのは上海~合肥間なのでそれほど長い距離ではなかったことからそれほど激しいものではありませんでしたが、これが上海から湖北省や四川省行きとかだったらいろんな意味で半端じゃなかったと思います。というのも鉄道のチケットは原則、指定席予約制となっておりますが「席なし」というチケットもあり、廊下とかに何時間も立ちっぱなしで乗り込んでくる客も珍しくなく、実際この時期に乗ったことないけど相当混雑するのではないかと思います。また洗練された上海人と比べて地方出身の中国人ははっきり言ってマナーが悪く、車内だろうとなんだろうと唾を吐くわ大声で話すわであまり同道したくない輩が多いです。そのためこの時期の鉄道移動は体力的にも精神的にも負担が大きいです。

 ややオチが弱いのでもう少し付け足すと、中国の経済統計を見る上で1~2月は要注意な月です。というのも春節は旧暦で決まるため年によって変動し、1月になることもあれば2月になることもあります。休暇期間は大体2週間弱ですが、この間はほぼすべての工場と企業が活動を停止するため経済は動かず、例えば自動車の販売台数なんかは春節のある月は前月比で大きく落ち込むわけなのですがこれらは季節的要因であるため景気的なものではありません。
 にもかかわらずたまに日系メディアで、「住宅販売が前月比で急落、中国バブルが崩壊」などという見出しを取っては春節のある月の経済指標を取り上げるところが見受けられます。きっと確信犯でしょうが、春節のある月はほかの月と違って特別な月であるため混同したりせず、経済指標を見る上では1~2月の前年比で測る必要があります。日本もお盆のある8月は同じような傾向があるため、こうした社会的事情を考慮した上で経済指標は考えることが大事という、当たり前といえば当たり前ですが肝に銘じなければならない点だというのが今日の私の意見です。既に日付変わってるけど。