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2015年12月31日木曜日

サンドラ・ブロック女史の輝かしい栄光

 本日最後の五本目。一気に記事を連投したためか右腕に軽くしびれるような痛みが走っています。こういう感覚も久しぶりだなぁ。
 当初は「確かあと4本で300本だったはず」と思っていたら実際には5本足らなかったので、ネタは四つくらい抱えてたけど最後の子の五本目は何書こうかちょっとタイプする手が止まりました。逆に言えば先の四本はマジでノンストップで一気に書き上げたんだけど。最後はどうでもいい記事がいいなと言う風に考えたらサンドラ・ブロックが思い浮かんできたので、最終的にこの人について書くことにします。

サンドラ・ブロック(Wikipedia)

 日本でサンドラ・ブロックというと、1994年にヒットした「スピード」という映画のヒロイン役をやった女優というのが一番多い印象ではないかと思います。一発屋で終わるハリウッド俳優が多い中でこの人は実際にはその後もコンスタントに活躍を続けているのですが、生憎というかスピード以降の彼女の出演作はそんなに日本では大ヒットするものが多くなく、なんか古いイメージのまま現代に続いてきてしまっているような感があります。ちなみに自分は2009年の「幸せの隠れ場所」がこの人の出演作だと好きな方ですが、この映画はちょっと邦画タイトルで損しているなという気がします。

 この人の魅力を述べるならば、割と姉御肌、というより兄貴肌で日本で言えば杉本彩氏みたいなキャラクターを演じるのが上手い点にあると思います。スピードでもそうですが女性でありながら妙に頼りがいがあってリーダシップ満々で物事進める、でもって美人ってのがいいのだと思え、本国でもそういうキャラなのか何故か「GIRL NEXT DOOR」、邦訳するなら「隣のお姉さんにしたい人で賞」というものも受賞しています。それにしてもアメリカ人もマニアックな賞を作るもんだ。

 話は戻りますがサンドラ・ブロック自体はスピード以降もキャリアを上重ね、主要な映画賞を物にするなど役者としては大成したといえる人です。ただいくつかの受賞歴でちょっと変というか妙な記録も作っており、知ってる人には有名ですが2009年にさっき挙げた「幸せの隠れ場所」でアカデミー主演女優賞を受賞しているのですが、同年に公開された「ウルトラI LOVE YOU!」といういかにもB級臭いタイトルの映画でラズベリー賞の最低主演女優賞も獲得しており、なんと同じ年に最高と最低の女優賞をダブル受賞するという史上初の恐ろしい快挙を成し遂げちゃっています。
 しかもラズベリー賞の授賞式に普通はみんな嫌がって来ないのにこの人は何故かわざわざ来て、「てめぇらどうせこの映画見てねぇだろ!(#゚Д゚)ゴルァ!!」と言って、わざわざリヤカー引いて持ってきた映画のDVDを会場で配ったりするなど、明らかにサービス精神が満点な人のようです。

 このラズベリー賞のエピソードといい、映画で演じるキャラ同様に割と男性的でカジュアルな性格した人なんじゃないかと勝手に想像しているのですが、実は日本とも少し縁があるというか、東日本大震災の折には真っ先に100万ドルを寄付してくれています。もちろん彼女だけでなく多数のハリウッド俳優らが当時日本へ支援してくれていますが、やっぱり折に触れて思い出さなければならない恩じゃないかと個人的に思うわけです。なもんだから、彼女の出演作を見る度にこの記事ネタをちょこっと思い出してもらえればなと思い、たまにはこんな記事も書いてみました。

自分の忠の矛先

 本日四本目。

 先日書いた愛国心についての記事で私は「忠」という言葉を用いましたが、これは現代的に言い換えるなら「信念」とした方が案外適当だと思います。通常は主従関係に用いる忠ですが、「他の何よりも優先する対象への意識の深さ」という風に解釈するなら、何も主人に限って使うものではないと思えるからです。
 先の記事では「メタルギアソリッド3」で使われた、「国に忠を尽くすか、任務に忠を尽くすか」というセリフを引用しておりますが、国家への忠は紛れもない愛国心でしょう。では任務への忠は何になるか、どちらかと言えばプライドに近いものになるかもしれません。
 
 ここでそんな私の忠の矛先をを明かすと、それは間違いなく自分自身の能力と才能です。ちょうど先月にも後輩にこの意味を説明しましたが、私が生きる上で何よりも優先するのは自分の能力を最大限に発揮できる場所に自らを置くこと、そして最大限に才能を引き延ばす、自らの感覚を可能な限り広げるということを子供の頃からかなり強く意識して生きてきました。何故こんなみょうちきりんな概念を持ったのかというとナポレオンに強く影響を受け、彼が幼年学校時代に述べたとされる、「人間の最大の幸せとは、自分の能力を最大限に発揮することです」というセリフをみてまさに自分が捜していた概念はこれだと中学生くらいの頃に思いました。

 このような考えだから一般人と常識が異なるのは当たり前で、自分の力が発揮できないとわかればその場を去るし、逆に自分の感覚を広げられると感じられるものには割と率先して学ぼうとしにいきます。その行く末には何があるのか、そんなの他の人間に言われる筋合いはないと言いたいところですが無難な言い方をすると論語における、「朝に道知れば夕に死すとも可なり」といったところです。

 では普通の日本人の忠の矛先はどこなのか。家族か、会社か、生活か、お金か、日常か、世間体か。私の見方だというまでもなく最後の世間体である人が大半であるように思え、如何に集団の中で目立たず浮かず脱落せずに生きていけるか、世間で言われるモデルケースのような人生をなぞることこそが最大にして唯一の生きていく上での信条なのではないかと、皮肉っぽい言い方ですがそう思います。別にこれが悪いというつもりは全くないですが、そうじゃないというのなら何を信じて生きてるのか聞いてみたいです。それこそ名誉やお金、家族を犠牲にしてでもこれだけは欲しい、信じてたいっていう信条をです。

忍者関連部署、科目の設置案

 本日三本目。

 昨日友人にスカイプで、「イギリスの子供は将来の夢にMI6とかスパイとか書くのかな。こういうこと書ける国って夢があっていいよね」といったらまた嫌そうな感じで黙って聞いてくれました。なんでこんなこと急に言い出したのかというと映画の「007」が頭に浮かび、スパイが確実に存在する国なら夢の職業として実際に書けるのかなと思ったためでした。

 それに対して日本。見出しにも掲げた通り忍者発祥の国でありながら世界に誇れるような堂々たるスパイ機関は存在しません。内情はあるけど、あれってどういう風に機能しているかよくわからんし、少なくとも海外のスパイ小説に出てこない時点で国際スパイとしては失格でしょう。
 何が言いたいのかっていうと日本も子供が堂々とスパイになりたいと思えるような夢のある国になるべきだということで、そのためにはまず政府内にはっきりと忍者関連の部署を設置する必要があるでしょう。構成員はMI6だって新聞広告で募集掛けるくらいなんだからリクルートとかで、

諜報員(忍者)急募!
募集年齢:全年齢(若手も活躍出来る職場です)
仕事内容:敵対国家への嫌がらせ、表じゃ言えない汚れ仕事
その他:経験者優遇(国籍問わず)

 こんな具合で募集広告乗っけたら一人や二人は応募してくるんじゃないかと思います。よくこういうのは内密に人を取ろうとしますが、どうせ内密になるのは後からでも構わないんだし募集くらいはオープンでやってもいいはずでしょう。

 でもってこうした募集にとどまらず、国内で諜報員の直接養成も手掛けるべきです。具体的に言うと前にも書いたかもしれませんが日体大とかで「忍者科」ってのを作って、尾行の仕方とか実践的な忍術とかを教えるコースを作っておくと万全です。もっとも学生の募集掛けたら日本人よりも外人の方がたくさん来そうな気がしますが。

 最後に映画の「007」についてですが、実は古い作品は見ておらず現在のダニエル・クレイグが主演するバージョンしか見ていません。この人は舞台での経験が長いだけあって立ち居振る舞い、特に姿勢が非常にきれいなのでアクションシーンも見栄えがよく私もお気に入りの俳優なのですが、なんていうか最初の「カジノロワイヤル」はまだそうでもありませんが、「慰めの報酬」、「スカイフォール」と続編が出る度に寡黙で冷徹な諜報員というキャラになっていき、見かけの強面と相まってなんとなくプーチンっぽいなとこの頃思えてきました。あっちもリアルスパイだったんだからさもアリなんだけど。
 ってか、ロシアは諜報員でも大統領になれるってんだから、ある意味夢のある国だ。

海に沈んだ南宋のラストエンペラー

 本日二本目。

 前に南宋末期の著名な戦いである襄陽・樊城の戦いを取り上げましたが、今日するのはその後のお話しです。襄陽・樊城の戦いの戦いで最大重要防御拠点である同地を元軍に攻略された南宋軍はその後も連戦連敗で、ついには首都である臨安を落とされてしまいます。しかし南宋の家臣団は抵抗をあきらめず幼い皇帝一族を連れて南へ南へと逃げ、当時はほとんど開発が進んでなかったと思われる現在の広東省地域にまで逃げて亡命政権を打ち立てていました。

 しかしそんな抵抗勢力の存在を元軍は許すことなく、亡命政権に対しても追撃軍を差し向けました。無論南宋軍はそうして迫りくる元軍に勝てるわけはなく依然と連戦連敗を続け、最終的には源氏あの香港近くにある崖山という場所で、元軍と海上決戦に臨みました。しかし海上戦に不慣れな元軍が相手とはいえ時既に大勢が決まっていた状況で、当初は有利に戦いを進めたものの徐々に追い込まれ、結局南宋軍はこの決戦においても敗北することとなりました。
 当時の南宋の皇帝は9歳の祥興帝で、ほぼ間違いなく政治の実権は持っていなかったと思える年齢です。決戦後、祥興帝に講義を行っていた陸秀夫は運命を決めたのか幼い皇帝を抱いたまま入水し、これによって南宋は完全に滅亡することとなります。

 この過程を見てピンときたら110番ですが、見てわかる通りにまるきり壇ノ浦の戦いの再現です。この崖山の戦いは1279年ですが、壇ノ浦の戦いから約100年後にほとんど同じ経過というか日本の安徳天皇のように入水して亡くなった幼い皇帝がいたというのはなかなか奇妙な縁でしょう。当時の日本側もこの偶然に感じるものがあったのか漢詩などで幼い皇帝を悼む詩が作られたりするなどされたとのことで、自分も面白いと思ったのでここで紹介することとしました。

また海外の床屋で……

 あと記事5本で今年の年間投稿数がちょうど300本になるので、あと一日ですがちょっと頑張って書いてみようとやる気になってしまいました。昨日もちょっとよぎったんだけど、別にこだわらなくていーしとか思ったのですが心変わり早過ぎ。

 ってことで早速今日早朝の失敗エピソードですが、床屋で失敗しました。
 海外生活で何が一番困るかって言ったら案外大きいもので散髪で、というのも微妙に出身国と美的センスが違うし、言葉も通じ辛くて変な髪型になってしまうケースが多いからです。なもんだから中国にいる日本人は大抵上海とかに行ってそこにいる日本人理髪師に切ってもらうのが普通ですがこれだとお値段が200元とかして結構お高い。ローカルのお店できれば大体20元以下で切れるのだし、そんなとこいってられるかと私はいつもローカルなお店で切るようにしてますが、自分の知る限りこんなことしてるのって私だけです。みんな高くても日本人に切ってもらうようにしてるし。

 ローカルの床屋で困るのが、地方出身者が多くて普通話がほとんど通じないことです。昔から「三本刀」といって中国人は散髪用ハサミ、包丁、裁縫用ハサミのどれかが一つがあれば世界中どこでも生きていけると主張するほど万能な技術として理髪は使われてきましたが、万能すぎて言葉が通じないってのは案外考え物です。
 ただ中にはきちんと話が通じるし、センスも似通っていて「短くして」といったら割ときれいに切りそろえてくれるローカルな床屋もあります。以前上海で通っていたところなんかまさにそんなお店で重宝していたのですが、今回は昆山市内にあるっていうか家の近くのお店に強行突入してきました。

 前も昆山市内で切ってはいるのですが、そのお店は今日なんかやたらとお客が入っていて仕方なく近くの別の店に入ったのですが、言葉は通じるもののいかんせん段取り悪く、「短く」つってるのに何故か七三分けにするし、「余計なことするな」つってるのに何故かドライヤーで髪膨らまそうとするしで、非常にファッキンな床屋でした。別にここに限らず中国の床屋は頼んでなくても勝手にあれこれ工夫することが多く、やたらパーマをかけたがる店が多い気がします。
 正直な感想を述べると、今日行ったところはワースト2な水準でした。過去最悪だったのは杭州市の床屋で、あそこは妙なムースとか片っ端からかけられ、変な髪型になるしムースは無駄に臭いしで、ちょうどアルハラで殺されかけてた時期でもあったので自宅でリアルに泣きながら自分で髪を切り直しました。今日の出来もよくなかったので、やっぱり自分で切り直しました。

 ただ人間って案外適応できるものなのか、何度もこういう風に妙な髪型になる度に納得できず自分で切りなおしているせいか、前髪だけなら自分で切ってある程度調髪できるようになってしまってます。私自身、元々髪型にはこだわらず伸びたら切る、「伸即斬」なので短ければそれでいいってのもありますが、ただ短く切ることすら満足にしてくれない中国の床屋はほんと何なんだろうとつくづく思います。なお今日の散髪料金は15元(約300円)で、昼飯にサイゼリヤで食べたミラノ風ドリアとコーンスープの合計料金は16元(約320円)でした。ミラノ風ドリアは中身が米じゃなくて餃子で、店員も文句多いのか注文前にわざわざ教えてくれましたが。

2015年12月30日水曜日

2015年を振り返って

 今年も残すところあと二日ですが、中国だとあまり年越し前のそわそわがないのであんま季節感持ってないです。ただ一つの区切りでもあるので、今年を振り返っていくつかトピックをまとめてみようと思います。

今年一番ニュースだったと思う人:サノケン
今年一番輝いていたと思う人:五郎丸
今年最後に輝いたと思う人:キンコメ高橋
今年以前からずっと輝き続けてる人:ムネリン
今年一番ニュースだったと思う犬:紀州犬

今年一番の茶番だったと思う議論:安保関連法の議論
今年一番大きな事件:水木しげるの逝去
今年一番の爆発事件:天津大爆発
騒がれたけどもうみんな忘れてる事件:建設業界のくい打ち不正

今年一番の衝突事故:自転車で三輪トラックと正面衝突
今年一番おいしかった料理:伊勢のホテルの晩飯
今年一番の衝撃的体験:「レッド」の主人公と会ったこと

今年読み始めて一番ハマった漫画:「ちおちゃんの通学路」……ではなく「だがしかし」
今年遊び始めて一番ハマったゲーム:「メタルギアソリッド ピースウォーカー」

今年のこのブログの変化:フォント、デザインの変更
今年書いて気に入っている記事:日米のヒーローの違い
今年一番読まれた記事:人材派遣企業各社のマージン率一覧、及びその公開率

 少し解説を入れると、漫画に関してはレビューも描いた「ちおちゃんの通学路」が文句なしで来るかと自分でも思ってましたが、つい昨日買って読んだ「だがしかし」の方が遥かに面白く、こっちの方に軍配を挙げました。誉めすぎかもしれませんが、センス、デッサン、構成どれをとっても超一級と呼んでいいくらいの面白さで、一体何なんだこの作者はと戦慄を覚えた作品でした。

 今年書いた記事に関しては一月に書いた「日米のヒーローの違い」が地味に気に入っています。なんでかっていうと誰も指摘していないまでも日本人にとっての平和の価値観を非常にわかりやすい例と共に一発で浮かび上がらせたという自負があり、これ一つでも十分論文書けるネタを一本の記事にまとめきったという達成感がありました。なお構想は、自転車で蘇州(往復約70km)向かっている最中に走りながら、「マグニート―を軸に……」なんて考えながら練りました。

 一方、一番読まれたのは間違いなく「人材派遣企業各社のマージン率一覧、及びその公開率」です。これも少ない量とはいえ実際に調査してまとめた記事であるのと、誰も手垢をつけていないネタを最初に物にしたという自負があるのですが、実は内申で大手メディアが今年に同じ調査をやられたらきついなぁと思ってました。大手メディアがそういうことやってきて、「最初にこの問題に手を付けたのは我々です」なんて言われたら手も足も出なかっただけに、こうして一年が過ぎ、既成事実的にこのネタを最初に手を付けたのは自分以外もう生まれなくなったのでほっと一安心、でもって来年は……ってところでしょう。

 今年一年は割とこのブログを契機に人間関係を広げられたのはプラスでしたが、世を忍ぶ仮の姿の方はやや中途半端というかあんま面白味のない一年でした。来年はまたどうなるかわからないけど、年始早々上海へ引っ越すのでまぁ今年よりは確実にマシにはなるでしょう。

  おまけ
 今日電気代の請求書を持ってきた人が、「お前、本当にここに住んでるの?」と、妙なことを何故か聞いてきました。最初はぴんと来なかったけど、ほかの家のドアとかポストに貼られている請求書の額が150元とか80元という金額だったのを見て、自分の請求書に描かれている29元という金額が理由かとやっとわかりました。もう少し電気使った方がいいのかな。

2015年12月29日火曜日

漫画家の主な出版社の移籍事例

 プロ野球のオフシーズンと言えばドラフトとFA移籍ですが、前者はともかく後者が見ていて面白いのは選手の移籍次第で翌年のチーム成績がガラッと変わることに尽きるでしょう。エースや四番が抜けたら痛いですし、逆にがっちり補強ポイントを埋めたチームは翌年の成果が期待できることもあり、そして何より移籍を選ぶ選手個人のドラマが見ているファンを魅せるのでしょう。
 っていうことで、今日は野球界ではなく漫画界での移籍について自分がさっと調べた範囲で実例を紹介しようと思います。我ながら強引な展開の持って行き方ですが、プロ野球持ち出さないよりかはいいかなと思ったので取って付けてみました。

 今回紹介するのは漫画業界、というより漫画家の出版社を跨ぐ移籍例です。別に漫画家はプロ野球選手みたいに契約でチームならぬ出版社が縛られる立場ではないのですが、漫画製作というのは漫画家と編集者による共同作業的な面も大きいだけに出版社を替えるということはなかなか大きな決断になると伺っております。また出版社側としてもエース級の作家が他の出版社に移籍するとなればそれはそれで痛手でもあり、なんていうかドラマチックというか金勘定が絡んでくるだけに、でもってあんまりこういうまとめ書いている人いないと思ったので自分でやってみたわけです。なお今回の調査は自分が適当に調べてまとめただけなので、厳密さとか網羅性は低く話のネタ程度に軽く読んでくれると助かります。

 最初に注意書きを書くと、お家騒動などで出版社が分裂したり、編集者が独立して新雑誌を起ち上げた際に移籍した例は趣旨と異なるので今回対象から省きました。また各例に挙げている作品は独断と偏見で代表作と思うものを入れているだけで、読み切り作品などは対象には入れていません。
 なわけで、まずは比較的移籍時期が近くてエース級だった漫画家の移籍事例を紹介します。

<エース級の移籍例>
移籍した漫画家 移籍元 移籍先
柴田ヨクサル 白泉社 集英社
エアマスター ハチワンダイバー
大高忍 スクウェア・エニックス 小学館
すもももももも マギ
鈴木央 集英社 講談社
ライジングインパクト 七つの大罪
八神健 集英社 秋田書店
密・リターンズ ななか6/17
荒川弘 スクウェア・エニックス 講談社
鋼の錬金術師 銀の匙
木多康昭 集英社 講談社
幕張 喧嘩稼業
井上雄彦 集英社 講談社
スラムダンク バガボンド

 上記に上げた漫画家は作品がアニメ化されるなど名実ともに売れっ子エース級である漫画家の移籍事例です。最近の例だと三番目の鈴木央氏が一番影響強いんじゃないかと思うのですが、というのもこの人は「バイバイジャンプ」という言葉を作った上に、今連載している「七つの大罪」は半端ない大ヒットを続けているからです。集英社時代も全く売れてなかったわけではありませんが何度も打ち切りにあってただけに、移籍先で過去を見返すような大活躍を遂げるようになった例と言えるでしょう。個人的には「ブリザードアクセル」のが好きだったりするけど。
 その他の作家についてはそんなに言う事ないのですが、どの作家も移籍前も移籍後もヒット作を出しており移籍前の出版社からすれば、「次作も当てるんだったらうちで描いてけばいいのに」と歯がゆさを覚えさせたであろう人たちです。もっとも木多康昭氏について集英社は移籍してくれて、案外ホッとしているかもしれません。

<新天地を求めた(?)移籍例>
移籍した漫画家 移籍元 移籍先
武井宏之 集英社 講談社
シャーマンキング ダンボール戦機
尾玉なみえ 集英社 講談社
少年エスパーねじめ マコちゃんのリップクリーム
野口賢 集英社 秋田書店
傭兵ピエール バビル2世 ザ・リターナー

 上記に上げたのは元の出版社では描かせてもらえなかったわけではないものの、これ以上の活躍が望めなかったのか移ったと思われる移籍例です。あくまで個人的所見ですが。
 一番上の武井宏之氏は「シャーマンキング」で大ヒットを遂げましたがこの作品も途中で打ち切られ、続編もいまいち軌道に乗れてなかったことからいつの間にか講談社に行ってたようです。二番目の尾玉なみえ氏は作品のパワーはすごかったけど明らかに雑誌のカラーと合ってなかったこともあって集英社時代は何度も打ち切りを経験してましたが、この人もいつの間にか新天地で活動されてるようです。最後の野口賢氏は「ビータクト」って漫画は読んだことありますが第一話を見て、「何で車田正美の名前をここで出すのだろうか?」と半端ない疑問を感じた人だったので無理矢理ここに入れました。

<二回以上移籍している例>
移籍した漫画家 移籍元 移籍先 再移籍先
弐瓶勉 講談社 集英社 講談社
BLAME! BIOMEGA シドニアの騎士
漫☆画太郎 集英社 秋田書店 集英社
珍遊記 樹海少年ZOO1 珍遊記2
ゆでたまご 集英社 講談社 集英社
キン肉マン トータルファイターK キン肉マンII世
江川達也 講談社 集英社 小学館
BE FREE! まじかる☆タルるートくん 東京大学物語

 こちらは二回以上移籍している例としてまとめたものですが、上の三人は一回他の出版社で描いた後で元いた出版社に戻っているので正確には出戻り組というべきかもしれません。もっとも漫☆画太郎氏にしろ江川達也氏にしろ、あまり出版社に縛られる性格の漫画家ではなかったということの方が大きいのかもしれませんが。
 なお一番上の弐瓶勉氏の場合はちょっと特殊で、というのも「BIOMEGA」は当初、講談社の「アフタヌーン」という雑誌で連載していたのですが途中で打ち切られ、その後「ウルトラジャンプ」で連載が再開されるという妙な経緯を辿った作品であったりします。もしかしたら編集と何かいざこざがあったのかもしれませんが、三番目の「シドニアの騎士」はまた「アフタヌーン」で連載されたので、何があったのだろうかとなおさら不思議に思うわけです。

<別の出版社で元の作品の続編を描いた例>
移籍した漫画家 移籍元 移籍先
にわのまこと 集英社 日本文芸社
真島クンすっとばす!! 真島クンすっとばす!!
高橋よしひろ 集英社 日本文芸社
銀牙 銀牙
宮下あきら 集英社 日本文芸社
魁!!男塾 極!!男塾
高橋陽一 集英社 日本文芸社
キャプテン翼 誇り〜プライド〜
車田正美 集英社 秋田書店
聖闘士星矢 聖闘士星矢
新沢基栄 集英社 スクウェア・エニックス
ハイスクール!奇面組 フラッシュ!奇面組

 こちらはちょっと特殊というか、出版社を移籍しているのに移籍前の作品の続編を移籍後の雑誌で書いている例です。高橋陽一氏の例は性格には異なるのですが何故ここに入れているのかというと、見てわかる通りに日本文芸社が集英社から引き抜いている例があまりにも多いのでまとめたかったからです。この引き抜きの多さは「飯田橋のふたばちゃん」でもネタにされていましたが、改めてみると「これほんまええの?」って疑問に感じるくらい多かったです。

<番外編・ドラフト外漫画家の逆襲>
移籍した漫画家 移籍元 移籍先
諌山創 集英社 講談社
ドラフト洩れ 進撃の巨人
吉崎観音 小学館 角川書店
ドラフト洩れ ケロロ軍曹

 最後のはちょっと特別ですが元々は別の出版社に通っていたのに日の目を浴びず、別の出版社に通って出した連載作品がシャレにならない大ヒットとなった漫画家の例です。「進撃の巨人」の諌山創氏が元々は集英社に通っていたというのは有名なエピソードですが、「ケロロ軍曹」の吉崎観音氏も最初は小学館に通っていたと言われており、漫画史に残る大ヒット作品を産んだ作家を手中からこぼれ落としてしまったという意味で「ドラフト外」と表現してみました。
 なお吉崎観音氏について言えば、「ケロロ軍曹」を出す前に「少年ガンガン」でいくつか作品を出してて何気に私も「護衛神エイト」読んでましたが、当時から目を引く漫画を描いていたたもののこれほどのヒットメーカーになるとは当時は誰も予想していなかったでしょう。

 以上が簡単に調べた結果で実際にはもっとたくさん移籍例があったり、ゆでたまご氏のようにもっとあちこちの出版社で作品出していたりするのですがまとめるのが面倒なのでさらっと書きました。
 ざっと調べた感じの印象を述べると、なんとなくですがギャグ漫画家は移籍する例が多く、同時に複数の出版社で同時連載を行うケースが多いような気がします。逆にストーリー漫画を書く漫画家は雑誌のカラーを決定づける作品になりやすいのか、読み切りを含め他の出版社で描く例が少ないのではという印象を覚えます。

 逆にというか同じ出版社一筋でずーっと描いているなと思ったのは桂正和氏で、河下瑞希氏も含めジャンプでお色気漫画描いた人は集英社一筋になるのかなという妙な仮説が浮かんできました。