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2008年8月12日火曜日

なぜ批判をするのか

 また先日のサンデープロジェクトの話ですが、この前の主な議題はこの前起こった秋葉原での無差別殺傷事件についてでした。その中で東浩紀氏という東工大の教授が、2ちゃんねる内のこの事件の犯人に関連するスレッドのうち、犯人を擁護したり同情的な内容が書き込まれるスレッドが全体の4分の1もあったと説明していましたが、こんな何の信用性もないデータを曲がりなりにも大学教授が持ち出すことに私は驚きました。それこそ2ちゃんねるの言葉を使うなら、自作自演であんたがそういうスレッドを立てたんじゃないか、とも反論できますし。

 それはさておきこの東氏は、犯人に対してなぜ一部の人間が同情や共感を覚えるのかということについて格差社会ゆえに社会に対して不満を抱える人間がいるためだと主張し、それに対して櫻井よしこ氏は法律体系の問題があるなどとあれこれ議論していましたが、このどれにも私は真っ向から否定します。私の意見は単純明快で、みんなが話題にするから、中にはそういうこともいう奴が出てきたのだと思います。

 これは私自身以前に論文にまとめましたが、社会学者の鈴木謙介氏の「カーニヴァル化する社会」という本の中の説を採用しています。鈴木氏によると、昔と比べて最近の若者はバックボーンとなるような固定的な価値概念を持たず、その対象が単純に自分の感性に合うか合わないか、つまり面白いと思うかどうかで自分の立場を変えると主張しています。

 一つ例を出しましょう。たとえば領土問題などで中国や韓国を激しく非難する人がいます。しかし、その人は直接的に中国人や韓国人に殴られたりするなど実害を受けたことがないにも関わらず、領土問題などであいつらは汚いと罵ります。かといって、日本に対して愛国心を持っているわけではなくて、投票にも行きません。そして政治家の汚職問題が起こるや、やれ政治家は腐っているなどと非難します。これを見て、不思議に思いませんか?

 鈴木氏によると、その人が何故中国や韓国を非難するかといったら、ほかの人も2ちゃんねる内などで非難しており、なんとなく楽しそうだから混ざっているだけだといいます。もちろんそんないい加減な理由で非難しているだけだから日本に対して愛国心はないし、実際に問題を真剣に考えているわけでもない。何かしらの政治的、思想的信条があるわけでもないのに、場当たり的に批判、賛美を今の若者は行っていると指摘しており、私もこれに同感します。

 今回の秋葉原の事件も同様で、犯人を擁護する意見があるといっても、格差社会に不満を持ってたりとか大そうな理由とかは一切なく、ただなんとなく適当なことを言ったり、その場のノリで擁護する側に回っているだけだと思います。恐らく今度また別の事件、たとえばお金持ちの人が大きな事件を起こしたら、「お金があるが故の孤独を感じていたに違いない」とか同じ人でも言い出すんじゃないでしょうか。

 ここでちょっと話は変わりますが、やはり私の周りにもしっかりとした立場や信条を持たずに、激しく何かを批判する人間が溢れています。政治問題には興味を示さないくせに中国や韓国を口汚く罵ったり、誰がどのような経済政策を提言、実行しているかもわかっていないくせに政治家の誰々のせいで格差が広がったとか、根拠も何もない割にびっくりするような剣幕でまくし立てるその姿には、驚きを通り越して呆れる事すらあります。

 別に私はわかってないから、根拠がないからといって批判をするなと言うつもりはありません。しかし、正義感を持って社会悪を批判する際に、決して個人的感情を交えてはいけません。ただ憎たらしいとか気に入らないとか、よくわかってないけど皆があいつは悪い奴だと言っているからという理由だけで批判するのはもとより、必要以上の怒りを持って批判もしてはいけません。批判をする際は、何が、どのように社会を悪くさせているのかをわきまえ、では何をすべきかという自らの目的との差異をきちんと認識した上でやらなければ、それはただの八つ当たりと言われてもしょうがないと思います。

 老婆心ながら、現代の日本の若者に対して言っておきます。社会悪に対して怒りを持つことはとてもよいことです。ですが、その社会悪たる問題に対しては冷静な分析を行い、何が本当の悪なのか、自分のどんな考えと相違があるのかを自分の頭でしっかり考えた上で憎んでください。かくいう私自身も、中学生くらいの頃は何もわかってないくせに結構個人的な感情でメディアや政治家を罵っていましたが、やっぱり後から考えると愚かだったと後悔しています。けど大体高校生くらいになると、知識では不足していたところが見えるものの、まだちゃんと冷静に怒っていたなと思えます。

 そんな自分の経験があるからこそ言えるのです。何をされても怒らないのはよくないですが、何もされてないのに怒りすぎるのもまたよくありません。特に、他人の被害や痛みを、まるで自分が受けたように語らないように。私が考えるに被害者意識というのは、最も攻撃的になりやすく危険な意識だと思うからです。

 文章がちぐはぐだなぁ。書きたい事を一気に書いたせいだろな。

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