最近中国ネタを書いてなかったので、近々またでかい連載でも始めようかと考えていた矢先、個人的に非常に興味の持てる記事に本日巡り合えました。その記事というのは今日発売の文芸春秋の最初のエッセイに、題に書いてある矢野浩二氏が寄稿している記事のことです。
この矢野浩二氏については私は前々から知っており、その活躍に陰ながら心躍らせていた一人でした。この人の職業は俳優で、単身中国にわたっていわゆる反日ドラマ、悪い日本の軍人が中国人をいじめて最後に中国人に倒されるというドラマにおいて、日本の悪い軍人役などをやり続けている方です。
ここで軽く解説しますが、向こうでは本当にこれでもかというくらい反日ドラマのレパートリーが豊富です。よくもまぁこんな作ったもんだと思える量に飽き足らず、本当に毎日、昼ごろとかゴールデンタイムには何かしらが放映されて、しかもよく見ると延々と再放送が繰り返されたりしてます。
それで話は戻るのですが、この矢野氏は日本で売れなかったために中国に渡り、比較的役にも恵まれて演技活動を行ってきていたようなのですが、やはりひたすら悪い日本人の役をやり続けることに呵責を感じていたようで、あるドラマ(烈火金剛)の撮影において、自分が演じる悪い日本兵が中国兵に撃ち殺されるシーンにてアドリブ、というより自然に涙が流れたそうです。
矢野氏が言うには日本兵も一人の人間で、異国で死ななければならないという不条理を考えたら自然に涙が出てきたそうなのですが、このドラマが実際に放映されるや、ドラマを見た中国人も日本兵も自分たちと同じ人間なのだ、家族もいれば守るものもある、そして同じように命を失うのだ、といった具合に受け止められたらしく、矢野氏のこの演技が高く評価されたそうです。
その後は矢野氏が言うには相当に顔が売れたらしく、「君はあの恐ろしい日本兵役の人じゃないか。すごい演技だったぞ」とか「君はあの日本鬼子か」などと、タクシーなどに乗るたびに声をかけられるようになったそうです。
この今出てきた「日本鬼子」というのは中国語における日本人への蔑称ですが、日本のホームページの中にはこの言葉を未だに中国人が日本を見下している言葉だなどと説明する人もいますが、私自身の実感だと、確かに蔑称から生まれてきた言葉ですが、今じゃ半ば冗談をやり合う際の言葉として使う方が断トツに多い気がします。私自身、中国で教室に入る際に「日本鬼子来了!(日本鬼子が来たぞっ!)」などと言ったりしましたし、さらに言えばタイでもこのような日本人の蔑称があるそうです。
矢野氏自身も同じようで、街中で日本鬼子とよく言われるそうですが、彼自身の演技で日本兵のイメージが変わるのならば、「全然気にしていません」と答えるようにしているようです。
よく両国における相手のイメージというのは歴史的なものからくるのは固定的で、一生変えることができないという人もいますが、韓国のヨン様の件もありますし、昔ならともかく今の時代なら結構くだらないことで好転したりすることも私はありうると思います。そう思うからこそ、外国人に会った際はなるべく丁寧にしていいイメージを持ってもらうようにと、私はいつも心がけています。
結局、昔の国家間のしがらみって時間がたてばなくなってくるのでしょうね。いまだに影響を受け続けているのは、政治家や2ちゃんなどの過度な被害者妄想を持っている人たちぐらいですよね。
返信削除何だかんだいって、時間というものが恨みや怒りというものを消す唯一の薬だと思います。
返信削除それにしてもうまい具合にいいコメントをしてくれて、次の記事への引きがとてもやりやすいです。毎度のことですが、本当にコメントありがとうございます。