またちょっと気軽に構えられる記事でも書こうと思います。
数年前のある日、親父の単身赴任先である名古屋に遊びに行っていた私はそのまま親父の運転する車で名古屋から当時住んでいた京都府の下宿へと帰っていました。当時は連休があればちょくちょく名古屋に遊びに行っており京都へ帰るルートも親父とあれこれ研究していて、一回は直線距離を試してみようということでその日は滋賀県の信楽を通って京都へ入るルートを走っていました。
すると意外にもこのルートは途中の道路はよく整備されており、また他の乗用車が少なくこれまでのどのルートより早く京都に帰ることが出来ました。ですがその帰路の際に私が着目したのはそんな時間の短さより、
「自転車でもこれそうだ」
という一点でした。
途中に坂とかがありますが基本的に一本道ですし、道路も舗装されているので恐らくその時の京都の下宿から自転車で行って当日中に往復することが可能だろうという見切りをつけました。サイクリングが趣味の私としてはいける範囲ならどこまでも、なおかつあまり試したことのない、他の人が行きそうにない場所を好んで当時は行きたがっていましたので、下宿に帰宅するや早速京都府の地図を開いて改めてルートを確認し、来るべき挑戦日となる週末を待ちました。
しかし行くとしても毎回一人というのはなんです。連れがいればもっと楽しいでしょうが、こんな強行軍についてこれる奴は周りにいるのかと考えてみました。来る奴がいるなら連れてってみたいと思いながら決行日の前日を迎えたところ、うまい具合にいい獲物が自らやってきました。
「やっほー、花園君おる?」
そういって私の部屋を訪ねてきたのは私と同じ下宿に住む、四国の田舎からやってきたやけに背の高い友人でした。確かその時は貸してた本か何かを返しに私の部屋に来たと思うのですが、いつもどおりに部屋に上がらせてお茶を飲ませて、明日サイクリングに行くが一緒に来るかと誘ったところ、「どうせ暇やし、ええよ」というので、パートナーも無事見つかり予定通りに作戦を決行するに至りました。
その日の朝早く、私と友人はお互いの自転車に乗り込むと颯爽と下宿を出発しました。ちなみにその際に私が使用した自転車は通常の二万円で買ったシティサイクルでギアも三段変形という、装備については至ってノーマルな自転車でした。それでもよく走ったし、多分総走行距離は1000キロは越えてたと思う。
スタート当初、友人の自転車のサドルがちょっと低いように思ったので途中で停めて上げてやったのですが、私は基本的に自転車のサドルは高ければ高いほどいい派で、停車時に地面に足がつく範囲で可能な限り上げています。それを友人の自転車にも施したところ、確かによく走るようにはなったらしいですがサドルを上げた分ケツが痛くなったと後に友人は述べています。
さてそんなもんでスタートから約5キロくらい走るとだんだんと歩道がなくなって山道へと入っていきちょうど滋賀県と京都府の県境のあたりですから道路は舗装されているとはいえ、長い上り坂の山越えをするような道になって行きました。私自身はこういった道に慣れていたのですが友人はどうなのだろうという心配があり尋ねたところ、「いや、高知のばあちゃん家に行くのって大体こんなもんやから平気やで」と言うので安心しました。グッジョブ、田舎人。
とはいえ、やっぱり県をまたぐ際はお互いに苦労しました。延々と上り坂が続いた上に歩道はなく、事実上車道の上で自動車に接近されながらギコギコちょっとずつ漕いで行くような感じです。トラックなんかもよく後ろから来て、当たりはしないだろうと思いながらも、邪魔にならないように端に寄せて上り坂を登るのは少し大変でした。
そうして何とか県境を越えて滋賀県に入った頃になると、今度は道路幅が極端に狭くなりはしたものの通る自動車の数が減って走行上は非常に楽になりました。ただ道路脇に設置されていた温度計の表示を見ると、気温は一度と表示されていました。
時節も一月で非常に寒い日で、その日は分厚い雲がどんよりと覆っていて日光も一切差していませんでした。普通なら相当寒い日になるのでしょうが、逆に自転車乗りとしては走っているとどんどんと体温が上がる一方なので、冷えやすい手を覆う手袋さえしていればこれくらいの気温の方が全然走りやすいものです。案の定私たちも、途中で「暑い」という理由から上着を脱いで走ってました。
そうして滋賀県を走っているとさらに山の中へと入っていき、いつしか周りには何もなく、ただ木々が生い茂る深い山の中、妙に整備の行き届いている道路を二人で延々と自転車をこぎ続けました。そうしてこいでいると、
「おわっ、雪や!」
空からちらほらと、寒いとは思っていたものの雪が降り始めてきました。それほどの降雪量ではなかったのでスリップ等の心配はなかったのですが、えらい日にサイクリングしているなとひとりでに笑えてきました。
ルート全体で見ると県境の山が一番勾配がきつかったのですが、ちょうど信楽に入る前当たりからそこそこの坂を上ったり降りたりする道になっていったので、無駄な体力を使わないように上り坂では二人とも自転車を降りてゆっくりと手押しで行く作戦に出るようになりました。結果的に言うとこれが大当たりして、確かに自転車を降りる分速度は遅くなるのですが、その分をすぐに下り坂で取り返せる上に降りて歩いている間は休むことが出来るので後半は体力的にも余裕を持て余して走ることが出来、そうこうしているうちについに信楽へと到着しました。
確か到着したのは11時過ぎくらいで、現地の焼肉屋に入っていつもはそんなに贅沢しないのに確か1500円の焼肉ランチをお互いに頼んで食べました。当時の私は一切外食はせずに一食あたりの平均が200円くらいケチった生活をしていたのですが、信楽までこれたという達成感と友人がいることからこの日は奮発しました。なお、この時の走行距離は片道で大体30キロ強です。
昼食を食べ終え、しばらく信楽の焼き物狸を観賞した後に私たちは帰還へと入りました。往路と違って復路だと一回はルートを通っていることもあり、また往路同様に上り坂を手押しで行ったので非常にスムーズに帰ることが出来ました。また帰る途中、往路に苦しんだ県境の坂を今度は逆に下りでものすごいスピード(多分時速40キロは出てた)で駆け下り、ちょうど降りた先にお茶屋さんがあったので休憩を兼ねて寄って行きました。
よく車と違って自転車はお金のかからない乗り物だと言われますが、金がかからない分、短距離ならまだしも長距離の運転だと途中から滅茶苦茶おなかが減る乗り物です。実際に長距離を乗り終えた後に私はバナナを一房丸ごと食べて、その上でお菓子とかパンをがっついたこともあり、そういった食事量を考えると思われているほど安くはないと思います。
なもんだから、馬鹿なので私はこの時にお茶屋さんでまた贅沢して抹茶パフェなんて頼んじゃいました。なおこの時もまだ外では雪が降り続けてます。
最初は笑って友人(彼は確かぜんざいを食べてた)と談笑していたものの、食べ終えた辺りから店内にいながらも猛烈に寒くなってきて、そのため店員のおばさんに無料の熱いお茶を何度ももらっては体を温めているとそのおばさんから、
「今日は寒いですからね。バイクで来られたんですか?」
「いいえ、自転車です」
「えっ!? それじゃあ寒いわねぇ」
と言われました。実際、往路ほど坂を上らないので復路は滅茶苦茶寒かったです。そんなこんなして大体昼の三時くらいに、無事下宿に帰ることが出来ました。
時間的にも走行的にも予定通りにほぼパーフェクトで、なおかつ景観のいい渓谷を通ってきたもんだから、下宿についた後もしばらくテンションが高いまんまでした。なのでそのまま同じ下宿のまた別の友人の家に行って、「信楽行ってきたぜ!」って妙な自慢までしました。その友人はというと、急に来られたのですごいびっくりしたと言ってました。
その後は一緒に行った友人と別れて、ゆったりとした日曜の夕方を下宿で過ごしました。
ちょうどこの時期はいろいろいけるもんだから私は自転車であちこちを回り、一つのベンチマークとして自転車での琵琶湖一周も一日で行ったりしていますが、一番楽しいサイクリングといったらやっぱりこの信楽の例を絶対に挙げています。また機会があればやってみたいものですが、ついてくる友人とかいるかなぁ。
自分で書いてて、自分の体験は読み返してみても面白い話が多いのですが、以前に独自に書いた中国での一年間の留学体験記や高校生時代の夏休み日記などくくりがあるものは自分でまとめているのですが、こういう単発の話はそれだけではまとめづらいので、きっとブログとかじゃないと私も多分一生書かないだろうと思います。今後も、折に触れてこういう話を書いていきたいものです。
面白い記事でした。てかよく普通の自転車でいきましたね(><)僕もよくサイクリングには出かけます。一応サイクリング部というのに所属しています(幽霊部員ですが)。その部の夏合宿に北海道まで行きました。とはいってもフェリーで苫小牧港まで行ってそっから札幌まで1日60キロの道のりを5日間というスケジュールでした。北海道も道がほとんどまっすぐで最高に快適でしたよ。しかし、テントをくくりつけてさらに着替えやらなにやらで総重量は自重+10kgを超えていたと思います。そんなので登り坂を登り続けるのは非常にしんどかったです。僕は名古屋近辺に住んでいます。もし今度名古屋に来ることがあったら一報ください。花園さんにはぜひ一度お会いしたいです。そのときは、いしょにサイクリングでもしましょう。
返信削除自転車は荷物があると途端に走り辛くなりますからね。ってか、私より大分専門的に走ってますね。私なんてよく自転車のことを書くけど、実際にはすごい素人ですし。
返信削除名古屋には友人がいる上、今私が住んでいる関東からもすぐに行けるので是非年内には伺おうと思います。なんなら次の週末に行っても構いませんし、都合のよさそうな日があればお知らせください。