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2008年11月13日木曜日

カルテル連続摘発の報道について

 今まで散々一人で騒いできたこの「ブロガー」のリンク問題ですが、昨日になってみるとなんと以前のように編集画面が戻り、私の使用ブラウザ「Opera」でもまたリンクもできるようになりました。何はともあれ、一安心です。

 それで早速今日の記事ですが、まずは直ったばかりの以下のリンク先のニュースをご覧ください。

めっき鋼板、カルテル容疑 東京地検、大手3社立件へ(asahi.com)
米司法省、液晶価格カルテルでシャープなど3社に罰金559億円(Yahooニュース)
旭硝子に制裁金140億円、EUが日欧4社のカルテル摘発(Yahooニュース)

 以上三つのニュースはこの一週間、といっても最初の鋼板カルテルの事件がちょっと前なだけで後の二つは昨日から今朝にかけて一挙に報道された事件です。
 カルテルというのは一種の談合のことで、複数の企業がある商材に対し価格競争を行わないことを互いに約束し合い、値段を吊り上げて自分たちの利益を引き上げる方法のことを指します。たとえば牛乳を買おうとしてお店に行っても、どこの牛乳屋も1000円で売っていたら消費者は1000円で買うしかありません。こういった状況を恣意的に作り出す談合のことをカルテルといい、基本的に資本主義国では市場が歪む恐れがあるのでどこも独禁法を設けて禁止しております。ま、さっき例に挙げた牛乳は酪農家の苦労している現状を知っているので、もう少し全体で価格を引き上げてもいいと私は思っています。

 それで今回明るみになったそれぞれの事件の内容を簡単に説明すると、まず最初の鋼板カルテルの事件は日鉄住金鋼板、JFE鋼板、日新製鋼、淀川製鋼所と錚々たる顔ぶれの大手金属メーカーが住宅用屋根の建材に使う「亜鉛メッキ鋼板」の値段の値上げを、これまでになんと六回も揃い踏んで行っていたということを公正取引委員会によって指摘され、東京地検によって現在捜査と立件の準備が行われています。何気にうちは朝日新聞を取っているのですが、朝日はかなり早い段階からこの事件を一面に持って来て連日報道しており、その甲斐あって後ろ二つの事件への反応もよかったと思えます。

 二つ目の液晶カルテルは日本のシャープ、韓国のLGディスプレイ、台湾の中華映管の三社がテレビや携帯電話の画面に使われる液晶パネルの価格に対して国際的にカルテルを結んでいたのを米司法省によって指摘され、三社もこれを認めて制裁金を支払うことに同意しています。

 三つ目の今朝報道されたガラスカルテルは、日本の旭硝、日本板硝子の子会社でもあるイギリスのピルキントン、フランスのサンゴバン、ベルギーのソリベールの四社が自動車用ガラスにおいて価格カルテルを行っていたということをEUの欧州委員会に指摘され、こちらも制裁金を課せられています。なお、旭硝子はEUの捜査に協力したとのことで制裁金は50%免除(それでも140億円だが)されていることから、事実上カルテルを行っていたことを認めているようです。

 こうして三つの事件を並び立てることで私の意も理解してもらえるでしょうが、一体何故この時期に立て続けに三つもカルテル事件、しかも最初の鋼板カルテルを除いた後ろ二つに至っては国を跨いだ企業同士によって行われた国際カルテルで、それらがほぼ同時期に明るみになったというあまりのタイミングの良さになにか胡散臭さを感じます。また日本国内の事件とはいえ最初の鋼板カルテルについても、こうして日本でカルテル事件が俎上に載るのは91年の包装用ラップでのカルテル以来らしくて実に17年ぶりです。17年ごしに発覚したカルテル事件が何故後ろ二つの国際カルテルと時期を同じくするのか、非常に不思議です。
 しかも後ろ二つの国際カルテルでは両方とも非常に大きい額の制裁金が対象の企業に課せられており、液晶カルテルでは三社に対して総額約560億円という米独禁法では史上二番目の高額で、ガラスカルテルでは対象の四社に対して総額約1690億円というこっちもEUの独禁法としては過去最高額の制裁金です。

 これがもし一つの機関による捜査で明るみになったというのなら、カルテルを一網打尽に処罰するため時期を合わせのだと解釈できますが、鋼板カルテルでは日本の公正取引委員会、液晶カルテルでは米司法省、ガラスカルテルではEUと、見事なまでに全部バラバラです。また対象となる事件がもし金融機関の手数料などのカルテル(日本の銀行なんか確信犯的にやってただろうな)であれば、昨今の金融不安の背景もありますし、公的資金を注入する代わりに国民へのガス抜きとして制裁を課して経営陣をしょっぴくみたいな話もわかりますが、今回のは老舗メーカーの工業用品ですし、この構図は当てはまるはずがありません。

 このように私としても、この一連のカルテル摘発が何故起こったのかという理由の仮説がなかなか浮かんでこないというのが正直なところです。それでも苦しいながら挙げるとしたら、何かしら国際間、というより日米欧の政府間でこうした国際カルテルを含む一連の不正に対して一斉に摘発するという密約があったのかも知れない、という仮説が出てきます。あまりのタイミングの良さに加え、国際カルテルについては捜査対象企業が国境を跨ぐということで、現地の捜査担当者同士で情報を交換し合うことが非常に重要になってきますし、何かしら相互の連携が約束されていたとしてもおかしくありません。そう考えるのならば、この仮説も挙げないよりはマシと思ってここで紹介することにしました。

 しかし上記の仮説でもまだ一向に解けない疑問が残っています。一体何故、国際間でそのようにカルテルに対して厳しく取り締まるようになったのかという動機です。言ってしまえば日本国内だけでも、あからさまなカルテル行為が行われている現場はいくらでも有り余っていますし、暗黙の了解となっているのも少なくありません。実際に立件するのが難しいというのはわかりますが、それでもなお今回このように一斉に摘発するように各国の機関が動くようになったのはどんな背景なのかが一番の疑問です。今起こっている経済危機のせいにすれば非常に私としても楽なんですが、捜査がここまで至っていることを考えると、恐らく捜査機関が手をつけ始めたのは公開捜査が今始まった鋼板カルテルを除いて最低でも去年の時点からでしょう。
 この点に関しては現状では判断に足る情報が不足していると思うので、続報があればまた何か考えてみることにします。

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