以前に書いた「アンバランスな日本の消費構造について」で、私はニートやフリーター層が現在の日本で大きな消費層となっていると主張しましたが、コメントにてそれは大げさではないかという指摘を受け、改めて読み返した今になるとやや表現が悪かったなと私も思いました。具体的にどういう表現が悪かったかというと、「ニートやフリーター層」と書いたところを本来なら「オタク層」とすべきでした。
・「萌え米」高齢化の町救う、ひと月で2年分販売 秋田(asahi. com)
上に貼ったニュースは米袋のイラストを萌え系にしたところびっくりするくらいバカ売れし始めたということを報じているニュースですが、本当にこんな事で急激に売れるなんてバカ売れ以外の何物でもないでしょう。もちろん売れた背景には商品自体の品質が元から高かったということもあり、イラストは一つのきっかけに過ぎなかったと毎月あきたこまち5キロを買い続けて食べていた私が保証しますが、この事例のようにニートやフリーター層改め、オタク層の消費力というものには並々ならぬ爆発力を秘めており、近年の日本の消費形態や経済にも断片的ですが影響力を確実に持っていると私は考えています。
近年、これらオタク層の爆発的な消費力が原動力となってヒットした商品は数多くありここではいちいち挙げませんが、私はこうしたオタク層の消費力を評価する一方でその危険性にも警戒を払っております。その危険性というのもずばり、オタク層の「飽きる早さ」です。
・「メイド喫茶」ブーム終わった 経営悪化で生き残りの道探る(J-CASTニュース)
こっちのニュースでは、去年あれだけ流行ったメイド喫茶が今年に入り一転して閉店が続出しているというニュースを報じています。元来、オタク層を相手にした商売というのは流行する勢いはすごいもののそのブームが去るのも非常に早く、中長期的に見るならそのどれもが破綻する傾向にあります。何故このようにブームが去るのが早いかですが、これは私の私見ですがいわゆるオタク層(本来、こういう抽象的な表現はするべきではないのですが)には天邪鬼的な行動がよく目立ち、自らの志向に合ったマイナーなものに対して仲間内だけで猛烈な消費を行うものの、それらが報道などで取り上げられ一般化すると、
「前の方が良かったのに……」
という捨てセリフを残し、途端に消費をやめるどころか、「マスコミが報道しやがったせいで、俺が好きだったあれは駄目になってしまった」と言わんばかりに逆に批判をする例もいくつか、ってかほとんどの例で見受けられます。これは一例を上げると、数年前にブームになった「電車男」が売れてくると、「あれは自作自演の話だ」という批判が一部から上がってきています。
この辺の動きについては去年に私は本格的に研究して論文も挙げているので、機会があればこのブログで紹介してもいいかもしれませんがどちらにしろ、オタク層を相手に商売をしても大抵は一時のブームに終わってしまうという危うさがあるのは確信を持って私は主張できます。
森永卓郎氏は、こうしたオタク層を相手にした新たなカルチャーやビジネスモデルを作るべきだと主張していますが、私に言わせればこういうものはこの前流行った「朝バナナダイエット」と一緒で、一瞬の盛り上がりを求めたために自滅する道だと思います。真にその商売でやっていこうというのなら、一日に十個買うけど一年で飽きるような客を必死で相手にするより、一日に一個しか買わないけどずっと買い続けてくれる固定顧客層をしっかりと長い時間をかけて作らないと意味がありません。
これは政治の世界でも言えます。小泉元首相を語る上で外せないと私が思っているものの、巷にはあまり流布していない言葉で「不動の四割」というものがあります。これは小泉内閣が政権在任中に一度も支持率が四割を切らなかった驚異的な事例を言い表した言葉で、こうした安定的な支持率があったことについてある評論家は、この最後まで支持し続けた四割の支持層の大体は終始一貫として小泉内閣を支持し続けた層で、そうした固定した支持層を小泉内閣は大事に首尾一貫として敵に回さなかったことこそが長期政権を保った要因と分析しています。
この不動の四割層がどのような支持層かまではここで解説はしませんが、現在の麻生政権が当初、先ほどのオタク層を支持層として取り込もうとテレビなどでも声高にアピールしたことについて当時から私は致命的な失敗だったと見ています。理由は言わずもがなで、こうした層は一時は熱狂的に支持するものの、大抵数ヶ月もすればすぐに飽きるばかりか逆に強い批判層へと変貌を遂げる可能性が高いからです。皮肉な言い方をしますが、一票は同じ一票でも、何回まで投じてくれるかは相手によります。
最後にオタク層の爆発的な消費力とその飽きっぽさについて、これは今連載中の「失われた十年」にも被りますが、傾向的にはどうもルーズソックスなどで一世を風靡した当時の女子高生ブームに似たものを感じます。
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