本日のニュースにて、米国がとうとうビッグ3(中にはデトロイト3と呼ぶのもいるらしいが、私としてもデトロイトと言う方が適当な気がする)こと自動車会社三社に対して大幅な金融融資を行って救済をしようと動いているというニュースが報じられました。このニュースを受けて、いつもながら思っていますが競争力と資本力はやっぱり別物だと私は思いました。
実はこのトピックは私と私の親父で最もケンカになる話題です。うちの親父は大資本でなければこれからの企業はやっていけないと常々主張して、中小企業対策をやるくらいだったら大企業に対していろいろ保護政策をとらねばならないと言うのですが、私としては経済において大企業は所詮は看板であって、中小企業こそが実体経済の真の主役だと主張し、昔の人の名言をもじれば、
「大企業なんて飾りです。エライ人にはそれがわからんのですよ!」
というようなことを毎回主張し、いつも親父と怒鳴りあいになりかねないほどの言い合いを繰り広げています。
確かに、親父の言うとおりに資本がなければ企業はやっていけないという話もよくわかります。今じゃ一般的になったトヨタのハイブリッドエンジンも大規模の研究開発費の投資があってこそ生まれたものであり、一部の技術革新にはやはりお金がいるというのもよくわかります。
しかし、私はお金をかけたところで必ずしも投資に見合うだけの成果が得られたり、その企業が真の意味で競争力を得られるとはとても思えません。その一つの根拠として、いろいろ統計情報が曖昧だったり、調査機関ごとにバラバラの結果が毎回出る「国際企業競争力」のランキングでは国としてGDPが小さいにも関わらず、「ノキア」を有するフィンランドを筆頭に北欧勢は毎回上位にランキングしており、親父の言う通りであればありえない結果を毎回出しています。
そこで今回のビッグ3のニュースです。はっきり言いますが、アメリカの自動車会社は日本の自動車会社と比べると遙かに大資本ですが、売っている自動車製品の国際競争力で言うならば日本に大きく見劣りしており、今回の不況を受けて破綻の危機にまで追い込まれています。また自動車会社に限らずとも、アメリカの企業はどの産業においても日本の企業の数倍の資本を持っていますが、航空宇宙産業(ここでも最近ブラジルに追い上げられている)や農業を除けば全くといっていいほど国際競争力はもっておりません。
私は大資本に対して、あくまで企業運営での選択の幅が広がるだけで実際には競争力の直接的な源泉になるとは思っていません。では何が競争力に直結するのかというと、現代のような時代で言うならばそれはやはり人材にあると思います。島津製作所のノーベル賞を受賞した田中氏のように、企業も国も、結局は一人の人間によって勃興することがあれば衰退するものだと私は捉えています。北欧勢が国際競争力を持つ背景としてよく挙げられているのは充実した教育制度にあると言われており、私も教育こそが競争力を養う唯一にして最大の手段だと思います。
以前にNHKでやっていた「プロジェクトX」(最近このプロデューサーは万引きで逮捕されたけど)などを見ていると、やはりその紹介される企業では大した設備や研究資金なしという状況の中で、独自の創意と工夫で飛躍のきっかけとなる発明やプロジェクトに成功しています。うちの親父と親父のいとこが二人して一番尊敬している日清食品の安藤百福なんて、一度スッテンテンになってから自宅にて一人で研究して「チキンラーメン」を発明していますし。
ついでに書くと、今の日本でこの点において何が問題かと言えば教育の質の低下ではなく、優秀な人材を上手くより分ける伯楽(馬の良し悪しを見極めるのが上手かった名人。転じて人材の評価、発掘の上手い人という意味)の不足だと私は考えています。昔から「世に賢才多けれども、げに伯楽は少なし」といわれていますが、私から見ても何故これほどの人材がこんなところに甘んじているのかと思うような人がごまんといれば、逆にその存在すら許せないようなくだらない無能な人物が重要な地位に居たりし過ぎている気がしてなりません。
史記なんか見ているとそういう例は昔からごく当たり前なのですが、世の中そういうものだとわかっていてもやはり悔しく感じます。だからこそ、一人の伯楽の価値は下手したら伯楽が発掘する優秀な人材なんかよりずっと高いのではと最近思います。
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