私はこれまでこのブログでは一貫して労働者派遣制度に対して批判的な姿勢を取って来ましたが、実はその裏では本当に派遣制度を完膚なきまで全廃していいものだろうかという疑問が頭をもたげていました。この疑問の端緒となったのは確か2007年にNHKにて派遣制度について是非を問う討論番組があり、派遣労働者に1000人にアンケートをとったところ、確か率にして55%ほど、過半数の方が派遣はいい制度だと思うと回答したことがきっかけでした。
まさか過半数が派遣を肯定的に取るなんてと正直面食らったのですが、よくよくその番組を見ているとアンケート対象の方がコメントを寄る際に簡易プロフィールが出るのですが、その大半が30代以上の女性ばかりだったのでようやく合点がいきました。
実はこれ以前からもお袋の知り合いで派遣労働をやっている方から話を聞くと、下手なアルバイトより全然収入も大きくまた仕事もオフィスでのお茶汲みや簡単な入力作業ばかりで非常に助かっていると、先ほどの番組同様のコメントを私は聞いていました。そうした話を聞いていると、なんだかんだいって現在の派遣制度は一家の家計を養う男性、特に既婚者の方にとっては非常に迷惑な制度ではあるのですが、逆に結婚を期に職場を離れた既婚女性が再就職する際には非常に有効な制度なのではないかという気がするのです。
知っての通り現在でこそ出産のための一時休暇などが日本でも大分認められてきましたが、それでも未だに出産を期に職場を離れることが多いために日本の女性就職率はいわゆるM字カーブといって、30歳前後で就職率が谷のように急激に落ち込んで40歳前後でまた上昇するという、欧米と比べると非常に偏った形を毎年とっております。出産のために職場を離れなければならないというのはまだわかるにしても、キャリアや実力のある女性労働者がその後再就職するには非常に大きな障害があると言われており、育児が終わったり家計のために働きたいと願っても、なかなかいい仕事が見つからないという話は今に始まるわけでもなく昔から言われてきました。労働力が不足しているといわれるこの日本で。
それに対し現行の派遣制度であればこうした既婚女性、特にオフィスワークを相応にこなすことが出来る方などは再就職が容易でかつ条件にあった職、それこそ最初に言ったアルバイト以上正社員未満くらいの職ならば簡単に見つけることが出来、こうしたことが影響してNHKの番組で肯定的な意見が多かったのだと思います。
不安定な雇用環境や伸び悩む収入(収入についてはまだ議論の余地があるが)など、日本で家族を養っていくにはやはり派遣では限界がありこうした雇用制度に問題があるのは間違いありません。しかし先ほどの既婚女性の例や、男性でも独身で音楽活動など自分の時間を有効に使いたいという方にとっては見方によれば非常に有意義な制度となる可能性もあり、やはり勢いに任せて全廃すべし制度のようには思えません。
ほかの議論などでもよく出てきますが、やはり派遣という制度は残して問題のある箇所、社会保険や労働保険、そして派遣会社のマージン率の公開などそういった面で改正していくのが派遣制度に必要なのではないかと思います。
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