昨日は久しぶりにブログの更新をサボってしまいましたが、それには実は深いわけがあり、今日のこの記事を書くための準備をひそかに友人と二人で進めておりました。その準備というのも、現役国会世襲議員の世襲割合を調べるという調査です。
以前に私も行った田原総一朗氏の講演会で田原氏も、「現実に世襲出身の国会議員がこうも情けないんだから、議員の世襲について日本は考える必要がある」と言っていただけあり、このところニュースとか政治家の発言を見ているとこの国会議員の世襲が話題になることが増えているように思えます。
特にここ最近のニュースだと、民主党の鳩山幹事長が世襲議員が続くことによって国会議員の役職が固定的になるとして、父親などがすでに国会議員に就いている人間が国政選挙に出馬する際、自分のように父親とは違う地盤からしか出馬できないように法律で制限すべきだという意見を出したことに、ネット上でも賛否が別れました。
鳩山家は弟の邦夫氏は父親の地盤に近い東京から現在も選挙に出馬していますが、兄の鳩山由紀夫氏は前述の通りに、父親の地盤とは関係ない北海道の選挙区から初出馬して現在も続けております。
以上にように、本来身分を固定させないために選挙という制度を設けてはいるものの、選挙運動の費用かかったり、政党内での候補指名過程などで徐々に日本の国会議員は世襲色が強まっているのではないかという意見が私見から言って徐々に一般世論の中でも高まっているのではないかと思います。そこで、じゃあ本当のところどうなんだということで、一つ世襲議員の実数を私が数えてみようじゃないかと調査を始めることにしました。
基本的な調査概要は以下の通りです。
調査対象:現役衆議院議員、1986年時第38回衆議院銀選挙当選者
情報源:ネット上で主にWikipediaなどで公開されている議員情報
世襲議員の対象範囲:その議員と配偶者の三親等以内に国会議員、地方議員、地方首長のいずれかを経験した者がいる
細かい調査内容を解説すると、調査対象に現役議員はともかくとして、1986年時の衆議院議員選挙当選者を比較対照に選んだのは、55年体制時と現在を比べるためです。
次に情報源ですが、これはネット上で公開されている情報を元に判断しました。先に断っておくと、現役議員に関してはWikipediaに全員の個人ページがありましたが、1986年時の当選者については主に野党の議員を中心に97名の当選議員については全く情報がありませんでした。しかし親族に議員がいる場合は何かしら関連ページが作られている可能性があり、また世襲議員の多い与党の自民党ならともかく少ない野党に不明議員が多いということも考慮し、情報不明議員についてはすべて非世襲扱いにしました。
そして肝心要の世襲議員の対象範囲ですが、これは祖父や叔父を含める範囲にするために三親等以内とし、また大物政治家の娘婿となって地盤を引き継いでいる例も数多いことから議員本人とその配偶者からと設定しました。なのでたとえば自民党の永岡桂子議員のように、世襲議員でなかった夫の後を継いで当選した方は世襲にはカウントせず、また大叔父が有名な後藤田正晴氏を大叔父に持つ後藤田正純氏もカウントしていません。そして前述の鳩山由紀夫氏も、地盤を変えているとはいえ国会議員であった父を持つことから世襲議員にカウントをしています。
今回の調査は可能な限り実数に近づけるものの、「最低限、これだけ世襲議員がいる」というのを測るのを目的にしているために情報不明の議員はカウントしませんでした。また親戚に地方議員経験者がいるかどうかも詳細に調べればもっといるかもしれませんが、その点もあえて見逃すことにします。
以上の点を踏まえ、早速結果をどうぞご覧ください。
・現役衆議院議員
全議員数 世襲議員数 世襲率
自民党 304人 124人 40.8%
公明党 31人 2人 6.5%
民主党 113人 26人 23.0%
共産党 9人 1人 11.1%
社民党 7人 0人 0.0%
その他 16人 9人 56.3%
総合計 480人 162人 33.8%
まず全体結果から見ると、世襲率が33.8%なので国会議員の三人に一人は世襲議員だということになります。そして政党別で見るとやはり圧倒的に自民党の割合が高く、次いで民主党が高くてほかの政党にはほとんどいないということになります。。
なお「その他」の属性には無所属議員や国民新党といった、自民党から出て行った渡辺喜美議員のような議員が多く入っているので、少ないながらも世襲議員が多くなるという結果となっています。
これに対して、1986年時の当選議員の世襲割合はどんなものでしょう。
・第38回衆議院議員選挙当選議員
全議員数 世襲議員数 世襲率
自民党 302人 128人 42.1%
社会党 89人 6人 6.7%
民社党 26人 6人 15.4%
公明党 56人 0人 0.0%
共産党 26人 0人 0.0%
その他 13人 6人 46.2%
総合計 512人 144人 28.1%
こうして比べてみると、与党自民党内だけの世襲割合は以前の42.1%から現在の40.8%で、増えるどころか減っているということがわかります。ただ現在の衆議院議員は2005年の9.11郵政選挙で主に選出されていることもあり、当時に大量に当選した一年生議員こと小泉チルドレンの影響も考慮し、現役自民党議員の中から一年生議員を差っ引いて改めて世襲率を計測したところ42.5%と、思った以上に世襲率は伸びたりしませんでした。いちおう一年生自民党議員の中でも世襲率を測ると36.1%でしたので、さもありなんです。
とはいえ全議員の割合で見ると28.1%から33.8%と有意に増えており、この増加分は野党民主党の世襲率が増加しているということが原因でしょう。ただ1986年時の野党はほぼすべて左派であるのに対し、民主党が右派であることを考えたら一概に野党の中で増えたとは言い切れないところもあり、このデータ上ではっきりといえるのは左派政党は世襲の割合が低いということくらいでしょう。また何度も言いますが、1986年のデータは情報不明議員が97名もいることからこの世襲率の割合は実態より幾分低くなっている傾向があります。まぁ変動するとしても3%以上も増減することはありえないと思えますが。
という感じで、全体では増えているものの自民党内ではそれほど世襲議員は増えていないというのが私の今回の調査の結論です。さすがにいろいろとやって疲れたので、細かい解説などはまた明日に書きます。
0 件のコメント:
コメントを投稿
コメント、ありがとうございます。今後とも陽月秘話をよろしくお願いします。
注:ブラウザが「Safari」ですとコメントを投稿してもエラーが起こり反映されない例が報告されています。コメントを残される際はなるべく別のブラウザを使うなどご注意ください。