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2009年4月2日木曜日

生前贈与税率の減税について

贈与税減税実施で大筋一致=追加税制改正へ-自民税調(YAHOOニュース)

 あまり報道されておらずちょっと解説のいる話題だと思うので、今日は上記のリンクに貼った、現在自民党が検討している生前贈与に対する減税案について解説します。

 まずこの生前贈与という奴ですが、これはそのまんま、主に親が子へ生存中に財産を贈与する行為を指します。この時の贈与額がそれこそ100円や200円ならまだしも、現行では年間110万円を越える額を贈与した場合に日本では税金がかけられて一部が国に持ってかれてしまうのですが、現在自民党が議論しているのは昨今の不況への景気対策にこの生前贈与に掛ける税率を下げようというものです。

 というのも日本は不況不況と言いつつも個人資産は金融資産で1483兆円、土地などの資産で3402兆円、住宅などの資産で952兆円、合計なんと5837兆円もあるそうですが、そのうち金融資産だけを世代別に見ると六十代以上の層が867兆円と、実に全体の六割近くを保有しております。
 この点について私の友人は、よくおっさん連中が我々若者が車を買わなくなったりデートをしなくなるなど、以前と比べてお金を使わなくなったのがさも不況の原因だと若者を犯人扱いしているが、上の世代が大半の資産を使わずに貯めていて若者にまでお金を流さないのが真の不況の原因だと、常々ヒートアップして文句を述べていますが、上記の実態を見れば私もまさにその通りとしか言いようがありません。
 ただ私の方から上の世代にもフォローを入れておくと、日本は今も曖昧糢糊なままの年金制度に不安定な社会保障制度ゆえ、老後に備えてまとまったお金を貯めておきたいというのも理解できなくはありません。

 こうした状況に対し、この不況への対策の切り札として掲げられたのが今回の生前贈与の減税案です。私がこの減税案を初めて知ったのは、文芸春秋四月号にて小泉元首相の元秘書である飯島勲氏がこの減税案を紹介している記事を読んだことからで、今日のこの記事も上記の資産額などその記事を参考にしながら書いております。
 飯島氏が挙げているモデルケースでは、Aさんが自分の子供に対して1500万円の証券資産を譲渡する場合、現行税率は50%なので750万円も国に持ってかれて子供にはもう半分の750万円しか譲られません。しかしもしAさんが死亡したことによってその資産が子供に引き継がれる場合、こちらは税率が15%の相続税が適用されるため国に持ってかれるのは225万円で、子供には残りの1275万円引き継がれます。


 Aさんが1500万円の証券を子供に譲渡する場合、
生前:税率50% 税金750万円 譲渡額750万円
死後:税率15% 税金225万円 譲渡額1225万円



 図示するとこんな具合になるので、現行の制度だとそりゃ生前に大金を渡す親はいなくなるでしょう。
 飯島氏の案は、この生前贈与時に掛ける税率を10%までこの際引き下げてしまおうという案です。確かに10%まで下げると長いスパンで見れば国の税収は減ってしまいますが、まさに今税収が必要な不況真っ只中の今年や来年といった短期においては増収が見込まれ、また消費意欲の強い若者に資産を大量に貯蓄している世代からお金が流れるため、個人消費の上昇も期待できると主張しています。

 結論を言えば、私もこの政策案を強く支持します。たとえば不動産の価格が下がっている今この時に、貯蓄をたくさん持っている親がぽんとお金を出すことで一気に自分名義で持ち家を買ってしまおうと動く若い夫婦がいてもおかしくありませんし、ある年齢層に固まっている資産が若年層に流れることで生活支援にも資金の流動化にも大きくつながることが期待できます。
 自民党が現在考えているのはやはり住宅購入時の資金譲渡時の税率を減税する案のようですが、それだけでも十分に効果があるし、また何より政策が非常にわかりやすく一般にも浸透しやすいので、やれるものなら明日からでもやってもいい案だと思います。

 ただ少し残念なのは、本来こうした景気対策というのはニュースそれ自体が何かしら希望を持たせることで市場などへ安心感を植え付ける面も少なくないのですが、今回のこの案は私が見ているところまだあまり浸透していないように思えます。そうしたわけで解説も兼ねて紹介しましたが、もっとこうした面の広報というものを日本政府は考えるべきでしょう。

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