・3社に百数十億円の課徴金命令へ 鋼板カルテルで公取委(asahi.com)
この際無視しようかとも思いましたが、乗りかかった船なのでちゃんと最後までこのニュースを取り上げておくことにします。
以前にこのブログで「カルテル連続摘発の報道について」という記事を去年の十一月に書いておりますが、上記のリンクに貼ったニュース記事で取り上げられている事件というのがまさに当時に私が取り上げた事件です。
事件の内容は前の記事でも書いてあるように、JFE鋼板、日鉄住金鋼板、日新製鋼、淀川製鋼所の四社が談合で以って亜鉛めっき鋼板の値上げを揃って実施するカルテル行為を行った容疑がかかり、今回その容疑に疑いがないと判断した公正取引委員会がJFE鋼板を除く三社に制裁として課徴金を課したというのが今回の報道ですが、その課徴金の金額というのが三社合計でなんと百億円を越えるという過去最大の金額となりました。
それにしても前回の記事を書いた頃の去年後半は本当にこれでもかというくらいに国内外を問わずにカルテルが摘発され、しかもその課徴金や制裁金額はそれこそ前代未聞ともいえる額ばかりでした。どうしてこれほどカルテルがこの時期に集中的に摘発されたのかについては当時の別の記事などでも書いてありますが、不況期で実態経済に与える影響が少ないと判断した各組織が今のうちに膿を取っておこうと一斉に動いたとか、不況になったせいでいろいろとほころびが見えてきたからとか私なりに推理しましたが、近年日本で相次いでいるカルテル摘発については大分理由が見えてきて、その理由というのもカルテルを出し抜けた企業を優遇する、課徴金減免制度にあると思います。
今回の鋼板カルテル摘発事件では課徴金が課された上記三社以外にもJFE鋼板も加わっていたようなのですが、JFE鋼板は真っ先に公正取引委員会にカルテルを行っていた事実と一緒に加わっていた企業を報告して捜査に協力したということで、なんと他の三社がそれぞれ数十億円もの課徴金を課されているのに対して課徴金の全額免除という優遇を受けております。この課徴金減免制度というのは上記のリンク先にある公正取引委員会のページでも紹介されているように、事件が非常に発覚しづらいカルテル事件に対して捜査に協力的な企業を優遇することで言うなれば出し抜けを誘引させ、捜査や摘発を円滑に行う目的で導入された制度です。
この制度は比較的新しい制度なのですが欧米では大分前から実施されて実績も上がっていたことから日本でも導入されたのですが、導入当初に私や友人らはなかなかいい制度だしすぐに効果を挙げるのではと思っていましたが、実際に今回の事件ではこの制度が大きく働いて解明につながったのではないかと思います。カルテルというのはそれこそ口約束で実行されてしまえば証拠というものが無く、たとえ一社が摘発されても他の会社が「知らないよ」といってしまえば捜査がそこで止まってしまうこともありえます。
それに対してこの制度は最初に通報した第一社だけでなく、続いてカルテルを認めた二社、三社も課徴金額を減免し、最終的に最も認めることを渋った企業が一番多くの課徴金を支払うこととなるので一度カルテルが発覚するやそれこそ芋づる式に関係企業が自白していきます。
今回の事件もこれが如何なく発揮されたようで課徴金の内訳は課された三社それぞれ違っているらしく、きちんと狙い通りに制度が機能したのは日本の制度としてはかなり珍しいでしょう。元々公正取引委員会は公的組織としてはやけに真面目でおふざけがない組織として有名ですし、今後ともこの制度がうまく運用されることを影ながら願っております。
ついでに書いておくと、シャッターカルテルもそろそろ決着がつくのかな。
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