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2009年8月19日水曜日

目指すべき国家モデルの類型~その一、軍事、外交編

 以前に書いた「みんながマニフェストを読まない理由」の記事において私は今回の選挙においてどの政党も似たような政策ばかりを主張し、五年後十年後を見据えた大きな国家戦略を何も描いていないと批判しましたが、ではどのような国家戦略があるのかについては敢えて言及は避けました。それが今回コメント欄にて直接質問を受けたので、それに答える形で今日からしばらく各要素に着目して、現状で考えうる目指すべき国家モデルの類型とその選択肢について連載で解説していきます。私もあくまで素人であることに変わりはありませんが、あまりこうした戦略的な考え方について複数視点で解説しているものは見受けられないので、そこそこいい連載記事に仕上がるであろうという期待を僭越ながら持っております。もっとも今日はこれが三本目の記事なので、すでに大分息切れ気味ですが。

 それでは早速本題に移るとします。まず今日から解説する国家モデルという言葉について大まかに説明いたします。私がここで使う国家モデルというのは、将来的に漠然とどのような国家にしていこうかという大まかな目標のことです。大まかではあるものの強くて大きい方向性を持っているために、小さな政策も大きく内包していて今回の選挙みたいに千円か無料かなどもぐだぐだと議論せずとも盛り込まれております。百聞は一見に如かずというので、ひとまず国家の行く末を考える上で非常に重要な要素となる今日のテーマの軍事と外交的観点から導き出される国家モデルの類型を早速ご紹介いたします。

1、軽武装重商主義国家(高度経済成長時代の日本、中世のヴェネツィア)
2、中武装独立国家(普通の国家。鳩山一郎、岸信介の提唱モデル)
3、重武装軍事中心国家(北朝鮮、冷戦期のアメリカ)
4、自衛完全中立国家(スイス)
5、非武装完全平和主義国家(ガンダムWのサンクキングダム)

 この分類は私の主観で以って作った分類です。括弧の中はそれぞれの国家モデルに合致する国を例として挙げております。

 それでは一つ一つの軍事、外交に着目して分けた国家モデルについて解説していきます。まず一番目の「軽武装重商主義国家モデル」ですが、これが今の日本人にとっては最も想像しやすくまた現在の日本の形に近い国家モデルです。具体的にどんな要素を持っているのか一言で言えば、「軍備に大きく費用をかけずに経済分野への投資に重点を置く」といったところです。
 この国家モデルを作って日本に根付かせたのはほかでもなく吉田茂です。吉田は国家防衛についてはすべてアメリカに依存し、そうして浮かしたお金で経済を育成して国際世界で戦っていこうという路線だったところ、一時は彼のライバルであった鳩山一郎によって阻まれかけましたが吉田の育てた池田勇人はしっかりとこの路線を引き継ぎ、現在に至るまで大きく変わることなくこの路線が維持され続けてきました。

 この国家モデルの強みはなんと言っても、経済に特化することで国民生活を豊かにさせられる点にあります。しかし国防については言うまでもなく圧倒的に弱く、その分を例に挙げた中世のヴェネツィアのように柔軟で強力な外交でカバーする必要が出てきます。日本の場合はこれをアメリカになんでも従うことで国防を保ってきたのですが、仮にアメリカが何かのきっかけで日本を見捨てる事態となったら現状では目も当てられなくなるのは予想に難くありません。


 それに対して二番目の「中武装独立国家モデル」ですが、これは現状より自衛隊を強化し、多少はアメリカに逆らっても日本独自にやっていこうというモデルで、前述のように提唱者は鳩山一郎と岸信介、そして現代においては彼らの孫の鳩山由紀夫氏と安倍晋三氏です。
 現在の日本は国防をアメリカにすべて依存しているためにアメリカに対してあまり、っていうかほとんど逆らうことが出来ない状態で、勝手に独自外交をすることすらままならない状態だとも言われております。それこそ中国やソ連に対して画期的な外交条約を結ぼうものならいろいろと脅しをかけられることが予想されます。

 鳩山一郎としてもアメリカが日本に好意を持っている間はともかくそうではなくなった際にこれでは困ると考え、もしアメリカと手を切ったもやっていけるよう他国と同盟が結べるように前もって独立した外交が出来る「普通の国」を目指していたそうです。岸信介も基本的にはこの考えでその前段階として安保改正を行ったところ、結局それっきりで次のステップを踏むことが出来ずに退陣を迫られました。そこへ「じっちゃんの名にかけて」と頑張っているのが、例のお孫さん二人で、逆に鳩山と岸の対抗馬であった吉田の孫は何も考えていないというのが今の大まかな政治状況です。


 こうした割と今の日本に密接な国家モデルに対し、三番目の「重武装軍事中心国家モデル」はやや特殊なモデルです。このモデルは簡単に言えば国内での生産を同じ国内の軍隊によって大量消費させることによって経済を回していこうという考え方で、必然的に定期的に他国へ戦争を仕掛けていかねばならぬ必要性があります。事実冷戦期のアメリカはNATOの大量消費によって世界最大の経済力を作り、またそれを維持するために次々と世界各地に戦争を仕掛けていきました。その構造が冷戦の終結によって崩壊したため、また盛り返そうとアフガニスタン、イラクにおける戦争が引き起こされたのではないかと各地の人間が指摘しているわけです。


 四番目、五番目の国家モデルは選択するには相当に腹をくくらねばならない国家モデルですが、一応選択肢としてはあるので紹介はしておきます。まず四番目の「自衛完全中立国家モデル」そのまんま現在のスイス国のモデルで、各家庭に一丁はライフル銃があると言われるまでに自衛力は持たねばならないもののどの国とも軍事同盟を結ばないことで、大きな戦争に取り込まれずに孤高を保っていこうという考え方です。ただこれで完全に国防が守られるわけではなく、理念的には確かに立派そうに見えますが実行するには非常に覚悟のいるモデルであります。

 そして極めつけの五番目の「非武装完全平和主義国家モデル」ですが、これは歴史上一度として成立した事はないであろう国家モデルで、出典は「機動新世紀ガンダムW」に出てくる「サンクキングダム」という国家です。この国は一切の兵力を放棄して国際社会に平和を訴えるという国家なのですが、やっぱり世の中そんなに甘くないので作中でも「ガラスの王国」とまで言われてすぐに攻められてあっさり崩壊しました。
 ただそんなお話の中だけのような国でも目指そうという人はいるもので、自衛隊の解散を訴える社民党や共産党の国家モデルはまさにこのモデルではないかと思います。訴える理念まで私は馬鹿にしたりはしませんが、もうすこしその実現性やガンダムWを見た感想などを聞かせてもらえればと陰ながら願っております。まぁ社民党は村山政権時に、「自衛隊は違憲だが認める」とすでに言っちゃっていますが。

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