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2009年10月14日水曜日

武田邦彦氏の講演会にて

 去年の五月にも行きましたが、平日にもかかわらず本日某所にて行われた中部大学の武田邦彦教授の講演会に参加してきました。ついさっき帰ってきたもんだから、今ちょっと疲労気味です。
 武田邦彦氏についてはもうあまり説明の必要はないと思われますが、世の中の環境問題のほとんどすべては嘘だとはっきりと断言してはよく議論の的になってきた人物で、私は武田氏の著書である「何故環境問題にウソがまかり通るのか」を読んでその筋道だった説明と解説に惹かれ、環境問題については武田氏の意見の方を現在では支持しております。

 そういう前置きはひとまず置いといて、早速今日の講演会で聞いてきた内容を一部抜粋して説明いたします。
 まず最初に武田氏が私から見て如何にも勝ち誇ったかのように主張していたのが、海水面上昇の話です。NHKを筆頭として温暖化の進行とともに北極、南極の氷が解けることによって海水面が上昇して地表の多くが水没するという説に対して、武田氏は約二年位前の初登場時より真っ向から否定していました。原理についてはいろんな本で武田氏も説明しているので割愛しますが、こうした武田氏らの活動が実ったのか、こんなあからさまな嘘を最近はどこも報道しなくなったと力強く言っていました。実際に私の感覚からしても数年前まであちらこちらで水没、水没といっていたのに、この一年間はそういった話をとんと聞かなくなったように思えます。

 こうした海水面上昇など、環境問題に関する報道の大半は嘘が多いという話から始まって武田氏を一躍有名人にした「ダイオキシンは無害だ」という主張についてあれこれ話していましたが、こちらも具体的な内容は武田氏の著作に書かれているのでここでは割愛します。ただこのダイオキシンは無害だと主張したことについて、初めてメディアでこの内容を主張したのをフジテレビであったことを紹介し、当時にフジテレビ内でも内容が内容だけに放送前に局内でいろいろと議論があったそうなのですが、最終的には当時のフジテレビの専務が武田氏に会い、

「我々は真実を報道します」

 と言って、放送を決断したそうです。
 結果はやはり、「そんな適当な事を言うな!」などと沢山の批判がフジテレビに寄せられたそうですが、このエピソードから武田氏はNHKを散々批判するのと打って変わってフジテレビはしっかりしているなどとべた褒めしていました。なお武田氏によると、高分子を300℃から400℃で焼いて煙を出すというダイオキシンを発生させるのに最も適した条件というのは実は焼き鳥屋らしく、そのために最初に毒性を否定する記事の題には、「焼き鳥屋は何故死なないのか」を採用したそうです。

 このほかエコポイントの欺瞞性などについてもあれこれ語っていたのですがそちらはまた今度にするとして、最後の質問時間にあまりほかから手が上がらなかったので私自らこのような質問をして見ました。

「日本の将来のエネルギー事情を考える上で、私は今後はどうしても原発に頼らざるを得ないと考えております。しかし原発事故の危険性はもとより、原子力発電によって無害化するまでに膨大な時間のかかる核廃棄物などが生まれる事を考えると、自分たちの世代がよりいい思いをするために将来の世代に負の遺産を残してしまうのではないかと思い、果たして本当に原発に頼っていいものかと考えてしまいます。その点について、武田先生はどのようにお考えでしょうか」

 この私の質問に対し、武田氏の返答は意外なものでした。
 まずいつもどおりに歯切れよく、原発というものは実際にはそれほど危険性はないと断言してきました。しかしそれでもなお危険性が心配されるのは、実は人災によるものだと答えました。

 核廃棄物については現状の技術、保管管理の方法でも限りなく無害化できるものの、その処理を巡って政府内で裏取引が平然と行われており、それらの技術が100%生かしきれていない現状があると武田氏は答えました。また発電所についても、日本で何が一番問題なのかといえば地震による倒壊のリスクだとして、2007年の新潟県中越地震で一部倒壊を起こした柏崎刈羽原発を例に取って説明してくれました。

 武田氏はこの発電所の建設にあたり日本で起こりうる地震としては非常に大きな部類にあたる400Galの二倍にあたる800Galに耐えられる設計で建設するべきだと主張したものの、政府の役人がどこかからかつれてきた地質学者、さすがに武田氏も温情を効かせて実名は明かしませんでしたが、その地質学者がこの地帯では250Gal以上の地震は起きないから250Galまで耐えられるレベルの建設でいいと主張し、結局それが委員会でまかり通ってしまったそうです。
 たださすがに東京電力が気を利かして400Galまで耐えられる設計で建設したものの、結局は新潟県中越地震の際には一部倒壊する事態となってしまいました。仮に250Galレベルの耐震設計では全壊もありえたと武田氏は述べ、地震後にその地質学者が何を言ったかというと、こんなレベルの地震を起こす断層があったとは分からなかった、と呆れる発言をしていたということを紹介していました。

 そもそもこのような地震リスクを避けるためには初めから大きな地震が起こらない断層の上で建設すればいいのに、そのような調査もほとんどなされていないと述べた上で、発電所の所長はそれこそ戦艦大和と殉じた艦長のように、世俗を超越した貴族のような人が行わなければならないと主張しました。原子力発電には沢山の組織や人間が複雑に絡み合った上で成り立っており、個人の利権やそういったものに全く左右されない人間でなければ所長は勤まらないとまで言っていました。

 その上で最初の話に戻りますが、様々な利権が絡んで裏取引も数多く行われており、原子力は安全に運用できるのにそのような人災によって危険性が付きまとってしまうと、「人災ゆえに技術ではどうにもならない」とまとめてくれました。この最後の一言が、私にとっては非常に印象深かったです。
 このような具合で、とても面白い講演会でした。残った話はまた折あらばご紹介します。

5 件のコメント:

  1. こんにちは
    「人災ゆえに技術ではどうにもならない」
    非常に深いですね。
    この事実は....ますます寝れなくなりますね。

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  2.  原発に限るわけじゃありませんが、事故というもののほとんどは技術の欠陥以上に人的過誤ことヒューマンエラーによって引き起こされております。そういった意味で最大の事故対策というのはヒューマンエラーの防止に尽きると言われているのですが、原発というものはその機密性や巨大性から、そういったものが引き起こされやすい環境にあるということはわかってはいたものの、こうしてはっきりといわれるといろいろショックを覚えましたね。

     自分も、「人災ゆえに技術ではどうにもならない」と聞いて、技術信仰だけでは駄目なんだと一挙に頭の中を入れ替えさせられました。

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  3. こんにちは
    花園さんの日記で非常に興味を持ったので武田邦彦先生のHPを拝見してきました。
    いやぁ~面白いです。正直に理屈抜きに面白いです。
    完全に同意する訳ではありませんが特に環境問題の右向け右的な現状を憂いているところなどは共感します。
    そして何よりも現代の”西洋かぶれの日本人”に”古来よりの日本人らしさ”こそ誇るべき財産でこの失われつつある現代こそ国民に”誠”をと訴えているのには称賛の拍手を送りたいですね。
    しかしどうしてこのような方が異端児扱いされてしまうのかが不思議でしょうがないですね(植草教授などもですけど)

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  4.  最近私は武田氏のホームページに行く回数は減ってしまいましたが、余り人のこといえませんがこの人も研究者なのに更新回数と文章量が多いだけでなく、どれも非常に内容が充実していて驚かされます。

     そろそろまた武田氏のこの講演会の話の続きを書くつもりですが、もし興味があれば是非武田氏の本を手に取る事をお勧めします。辛坊二郎氏に「詐欺師かと思うほど」と言わしめた説得力に満ちた内容です。

     植草教授については、やっぱ性癖が極端すぎたのがまずかったんじゃないかなぁ。

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  5. そうですね、時間を見て著書を読んでみる事にしましょう。
    植草教授の性癖については、擁護者のページなどをみても確かに矛盾も多いので冤罪の線も残っていると私は見ています。
    陰謀論は胡散臭いところですが、ちぃとばかり冤罪くさいとこも実際あると感じますね

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コメント、ありがとうございます。今後とも陽月秘話をよろしくお願いします。

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