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2009年11月2日月曜日

想定外のスーパー、AZ

 先週に放映された「ヒミツのケンミンショー」の地域特集にて鹿児島県が特集されていましたが、その中で紹介されたある商店に番組が出てくるや私と私のお袋は揃って、「あ、やっぱこれか」と思わず一緒ににやけてしまいました。そのスーパーというのも、鹿児島県阿久根市にあるAZです。

A-Zスーパーセンター(ウィキペディア)

 正式な表記は「A-Z」ですが、めんどいのでこのままAZで通します。ちょっとこの記事では題をどうするかに悩み最初は、「阿久根を支えるAZ」にしようかと思いましたが、なんか本来の記事の趣旨と変わってくるので数年前の流行語の「想定外」とつけることにしました。
 では一体このAZは何が想定外なのかというと、あり大抵に言えばそれまでのスーパー経営の概念で正攻法といわれる手法をことごとくひっくり返して成功している点です。

 ではそんな常識を破るAZの経営方法というのはどんなものかというと、グダグダ長文で書くのもなんですので箇条書きにしてまとめて紹介しましょう。

1、店舗面積が広いめちゃくちゃ広い
2、取扱商品点数が非常に多い(30万点以上)
3、食料品や日用品だけでなく、自動車やガソリンの販売、車検も行う
4、電話で呼べば、片道100円でバス送迎に家まで往復する
5、これでいて24時間営業


 一つ一つもう少し詳しく説明すると、まず1番目ですがリンク先のウィキペディアにある写真を見れば分かるとおりにまるでアメリカのショッピングセンターかと思うくらいだだっ広い店舗です。しかしアメリカやその他の日本のショッピングセンター、モールと違う点として、このAZには二階がないというのが大きな特徴です。何故二階がないのかというと主要客である過疎化の進む阿久根の老人らにとって階を跨ぐ移動は大きな苦痛であるとして平屋建てを貫いているそうです。

 次に2番目ですが、これはそれこそ客の要望があれば何でもかんでも商品を揃えるとしており、醤油一つとってもありえないほどの種類分が用意されているそうです。なお鹿児島及び九州の醤油は他の地方と比べて非常に甘い味をしているので、多分私なんかも阿久根に住んだら重宝しそうです。
 そんなAZの豊富な品揃えを語る上で外せないのが3番目の特徴で、なんと自動車本体までもそれこそディーラー店のように店舗に並べ、しかも各種保険、取得手続きまで購入と同時に行えるようになっているので買ったその日にそのままその車に乗って家に帰れるそうです。

 ここまでだけでも相当異常な経営方法ですが私が最も評価してなおかつ最も独特だと思える特徴なのが、続く4番目の電話一本片道百円でドアツードアで客を運ぶ移動サービスです。これなんか九州や四国といった地方に住んだ経験のある方なら分かるかと思いますが、このような地方では本当に泣けるくらいに道がありません。また道があったとしてもひどい悪路で、しかも各都市ごとの距離も半端でないために車を持たない人間はおいそれと気軽に出かける事が出来ず、それが体力のない老人ともなると尚更です。
 AZの社長の牧尾氏はこのような鹿児島県阿久根市の環境からこのサービスを考案したらしいのですが周囲はそんなサービスが成り立つわけないと予想していたものの、そんな予想を見事に裏切り、このサービスによって遠出の買い物に満足にいくことのできない老人らを顧客層としてしっかりと引き入れることに成功したそうです。

 そして最後5番目の24時間営業ですが、これも大都市であるならばともかく、何度も言いますが鹿児島の過疎化の進む阿久根市ではランニングコストだけが無駄にかかるのではと言われていたのですがウィキペディアの記事を引用すると、「夜9時から翌朝7時までの売上げが、全売上げの3割を占めるという。」とのことで、なんでもコンビニのないこの地域で夜間に緊急に買い物が必要になった時に頼りにされているそうです。

 このようにことごとくスーパー経営の常道を突き破ってAZは成功し、当初は阿久根市の本店のみだった店舗もこの不況下ながら現在三店舗になり、今後もさらに増やす計画だそうです。こうしたことからこのAZはなにもケンミンショーにて特集される前から主に日経がバックにいるテレビ東京の番組でも何度か取り上げられており、もしかしたらそうした番組をすでに見ていてこのAZの事を知っている方もおられるかもしれません。

 ただそうした番組で取り上げられていないちょっとレアなAZの情報をここで出すと、社長の牧尾氏がAZを始めるにあたって参考にしたのは千葉県にある「ケーヨーホームセンター」というディスカウントショップらしいそうで、牧尾氏が若い頃に千葉県にいた際にここで働いた経験から豊富な品揃えと共に客層を考えた経営をするべきと考え、成功した今でも若手社員の教育研修のためにケーヨーホームセンターに派遣するそうです。
 何故こんなことを私が知っているかですが、実はAZの本店がある阿久根市というのはうちのお袋の実家で、私は阿久根市の隣の出水市の生まれですが子供の頃は私もこの阿久根の祖父や叔母のところへ何度も遊びに行っていました。それでこれなんか地方の人には分かってもらえると思いますが、田舎というのは本当に狭いもので、AZ社長の牧尾氏というのはうちのお袋の同級生の兄弟で、近年ここが成功してからというものお袋の親戚が集まろうものなら、

「マキオのところは羽振りがいいわよね」
「パン屋やっとった○○いるでしょ。今そいつも自分の店畳んでAZで働いてるわよ」

 などと、非常に緻密なレベルでの情報交換が行われています。それこそ石を投げれば関係者にあたるくらいの狭さで、同級生なり友達なり兄弟なりで人間関係が全部つながってくるというから驚きです。

 とはいえ人口が減少していく鹿児島の片田舎において、地元資本のスーパーがここまで急成長に成功したというのは刮目に値します。私も機会があればここに参与観察でもして見たいものですが、お袋に話し通して一ヶ月でも働いてみようかな。

  おまけ
 ウィキペディアの記事にも書かれていますが、AZの開店初日に大きな地震が鹿児島を襲い、店に来ていた客がみんなレジを通さずに商品持って逃げて行ったそうでいきなり約五百万円の損失を出したそうです。それでもその後持ち直したのだからなお凄い。

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