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2010年1月3日日曜日

中国の大学入試制度について

 連載していた北京留学記の中で中国人より日本の大学入試制度について興味津々に説明を求められた事を書きましたが、恐らく日本人にとっても中国の大学入試制度がどのようになっているか、興味がある方もおられるかと思います。この大学入試制度というのは意外と国ごとに違いがあって、「フランスの日々」にてSophieさんも何度か関連する話題を紹介していましたが、なんだかんだいって国ごとに特徴があったりします。

 では中国の大学入試はどのように行われているのか、結論から言えばセンター一発入試が向こうの入試制度です。向こうで大学と言えば基本的にすべて国立で、私大は全くないわけではありませんが現在はほぼ大学と認められていないに近い状態で、年一回六月に行われるセンター試験で取得した点数によって進学できる大学が決まるという制度となっております。
 たとえばAという大学はセンター試験で400点以上、Bという大学は500点以上の成績が必要だった場合、500点以上の成績を取った生徒はAとB、どちらの大学を選ぶ事ができるという具合です。

 そのため、中国の大学入試日はそれこそ街全体が異様な空気に包まれており、万が一にも交通機関に遅れがあってはならないためにまるで戒厳令下のようにパトカーがあちこちを回っており、この日に限ってはパトカーに頼めばタクシーみたいに受験会場まで送ってくれるという噂もあったりします。日本のニュースでもよく報道されていますが中国でも若者の就職難は年々深刻化しており、就職を勝ち取るために、貧しさから抜け出すために大学進学熱は高まる事はあっても冷める事はないという状況です。

 そんな中国の大学入試制度なのですが、実は生徒の出身地域によって合格に必要な点数が変わるという、不可思議この上ない面があります。これはどういうことかと中国政府の建前はというと、中国は地域ごとに大きく人口にばらつきがあり、全国から均一の数の学生を大学に入れるためにあらかじめ募集人数を省や市に割り振る必要があるとしています。
 しかしこれは結論から言うと、実態的には教育行政をつかさどる人間達が自分達の子弟に都合のいいように制度をいじくっている所があり、実際に首都の北京市は周辺地域と比べると驚くほどに合格点数が低く設定されております。折角なので、合格点の一つの目安となる中国最高峰の北京大学の地域別合格点数を下記にご紹介します。





(出典 腾讯网:http://edu.qq.com/a/20050317/000095.htm)

 表中の「文科」、「理科」というのはそれぞれ日本語の「文系」、「理系」を表しております。
 見てもらえばわかる通りに、距離がそれほど離れていない北京市と山東省を比較しても2004年度では581点と666点と、実に85点も合格点数に開きがあり、南方の広東省や広西省に至ってはもはや同じ試験なのかと疑ってしまうほどの差です。

 この地域は受験生の戸籍上の、日本で言えば本籍地に当たる地域によって区分けされるのですが、そのために北京に在住していながらも本籍地が山東省の人間には山東省の合格点数が要求されてしまいます。実際に北京市の合格点数では北京大学にいけるものの、山東省に本籍地があるためそれが適わなかった北京出身の友人がおり、彼は非常にこの制度の事を恨んでいました。
 こうした地域ごとのはっきりとした合格点数の差から、近年中国の富裕層の中では「受験移民」といって合格点数の低い北京市などへ子供の受験のために引っ越すという現象が確認されています。

 私がこの問題を知ったのは留学中に現地で購入した社会問題を取り扱った本で、その本の作者は、本来格差を是正する手段の一つである大学教育においてその入り口にこれほどの較差があるのは大きな問題で、受験時に不利となり地域の募る不公平感は看過することはできないとまとめております。

 中国は今に始まったわけでなく古代より「科挙」という官僚採用試験を実施するほどの受験大国ですが、この科挙ですら広く優秀な人材を集められたという点は良かったものの、この科挙を受験したものの不合格となってしまったいわゆる「落第エリート」の中には国家に対して反逆心を持つものも多く、中には黄巣や洪秀全といった王朝を滅ぼすきっかけとなった反乱を起こした者もおりました。私なんかそういった歴史を知っているもんだから常々「エリートを遊ばせるな」とあちこちに言いまわっているのですが、現中国の受験制度もなんらかの是正措置を取る必要があるのではないかと、他人事ながら思います。

  参考文献
中国社会 王進 中央評論出版社 2006年

3 件のコメント:

  1. 明けましておめでとうございます。新年早々、紹介ありがとうございました。中国の制度もすごいですね。国ごとに特徴があって面白いですね。

    今年もよろしくお願いします。

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  2.  こちらこそ、明けましておめでとうございます。年末の帰国は如何だったでしょうか?

     案外こうした国ごとの大学制度の違いと言うのはわかりそうでわからなく、参考になる面が多いのでわざわざデータをつけて紹介する事にしました。あと余談ですが、この前フランスに滞在中の高校生に話を聞いたら、哲学関係の問題については、面倒くさいという答えが返ってきましたね。

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コメント、ありがとうございます。今後とも陽月秘話をよろしくお願いします。

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