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2010年4月20日火曜日

何回言えばわかるんだ?

 我ながら今日は随分と挑発的なタイトルになりましたが、最近また友人に薦められた本でブログのアクセスはタイトルで決まる部分が多いと書かれていたので、たまにはこういう風なタイトルも悪くないかと思ってつけてみました。内容はいつもどおりにくどくどしたものだけど。

 もう随分と前、確か私が中学生だった頃、実時間にして十年以上も前の話ですが、ある日授業中に国語の先生が気分転換とばかりに雑談を始めました。なんでもどっかの雑誌かなんかに載っていた話だそうですが、当時「声に出して読みたい日本語」を出版して名が売れ始めていた斉藤孝明治大学教授がある日、自分ところの学生を使って暗記に関するあるテストを行ったそうです。
 テスト方法は完全に脈絡のない座席順を学生に一旦見せて、それを隠した状態でどれだけ覚えているかを調べるというものだったそうですが、テストを終えて結果を分析すると、平均にして約七回、「覚える」と「忘れる」を繰り返すことで初めて記憶がしっかりと固定されるようになることが分かったそうです。

 この話を聞いた当初、なんとなくですが私もその通りなんじゃないかと思いました。というのも私自身、「覚える」と「忘れる」を何度も繰り返す事で記憶というものは強化されるものだと考えており、特にこの実験で使われたような席順といった何かと関連して覚えるわけでもない独立している暗記物などはそうした繰り返しが重要だと思っていたからです。

 斉藤孝氏が実験を行った明治大学は日本中の誰もが認める名門大学で、そこの学生は一般的な日本人よりも頭脳が優秀であると考えられます。その明治大学生ですら約七回も、「覚える」と「忘れる」を繰り返さなければ記憶を固定化できないのであれば、よっぽど記憶力のいい人でも五回程度、逆に普通の人ならそれこそ十回程度はこの繰り返しを経なければ記憶が固定化できないと私は推測しております。少なくとも、一回言ってパッと覚えられる人間は超稀少と言っていいでしょう。

 そのためか、今ではすっかり機会が減ってしまいましたが数年前まで私はよく後輩を指導する事が多く、その際によくこんなことを言っていました。

「今言った事をちゃんと覚えてね。覚えたら出来る限り早く忘れて、もう一回自分の所に聞きに来るように」

 聞いてる方からすると何を言っているのかと思われていたかもしれませんが、私の方からすると大真面目で、人間ってのは一回聞いて何でもかんでも覚えられるわけじゃなく少しずつ覚えては忘れるもので、忘れた後にまた繰り返し教えることで初めて相手に理解させることができると考えての指導でした。

 このように私は基本的に一回教えた所で相手は絶対に暗記、理解は出来ないという前提を持っているのですが、この前提があることで何がプラスかといえば、教えていてイライラしなくなることです。あらかじめ相手には噛んで含めるように何度も言わなければならないと前提しているので相手が二回、三回と教えたことを忘れても、これが普通なんだと割り切れます。周りを見ていると、怒りっぽい人なんかは一回言って分からない人に対しても怒鳴りつける人もいますが、私自身用具の置き場所などは一回教えてもらったくらいじゃなかなか覚えられないので、あまりこういう人が社会に多いというのは望ましくありません。

 そういうもんだから、よく先輩や上司から覚えの悪い事を注意された場合、こんな風に言い返せればいいのではないかと思います。

「何回言えばわかるんだ (`A´)!?」
「平均にして、約七回であります(#゚Д゚)!!」
「……………(゚Д゚;)」

 いや、実際には私もこうは言い返さないですけどね。

 逆にこの話を個人単位で考えるのならば、試験前や語学の勉強において何か暗記するべき内容があるとしたら、七回は覚えて忘れてを繰り返す必要があるという風にも考える事が出来ます。もっとも、関連した内容や語呂合わせなどを組み合わせる事でこの回数はいくらでも減少させる事が出来ますが、一回や二回で覚えられないからって自分は記憶力が悪いなどと考えず、繰り返し覚えて忘れることが勉強には必要だと肝に銘じておくとストレスが溜まらずに済むかもしれません。

 うちのお袋なんかパソコンの操作をなかなか覚えられないことを歳のせいだと言い訳しますが、私が見ていてそれほど歳の影響は大きくないと思います。私とてパソコンの各機能を今より若い時分に覚える際には何度も覚えては忘れていたので、単純に何度繰り返してでも覚えようとする忍耐力の低下こそが年寄りの記憶力低下の原因ではないかと見ております。忍耐がないと、よく言われる私が言う事ではないのですが。

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