最近梅ジュース目当てに地元の喫茶店に寄る事が増えてきたのですが、そこに置いてあるもんだからついつい「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」という、私の世代で知らない男の子がいるならそいつはモーグリもびっくりなモグリだと言えるような漫画を読み返しております。さすがに細かい内容までは語りませんが、元々エニックスと関係の深かったジャンプ(ドラクエの発売情報などは当時ジャンプが一番初めに報じていた)ゆえ、ドラクエ世界の設定を下地にしたオリジナルストーリーは私のみならず当時の男の子を夢中にさせていました。
そんなわけで懐かしさもあって手に取っているのですが、なんというかどうも感覚が違う、というより成人した今になって読んで見ると子供の頃と違った視点で見ているのが自分でも分かり、すでに何度か読んでいるのにとても新鮮な面白さを覚えます。
特にそれを強く感じさせられるのは、恐らくこの漫画の中で最も人気があるキャラと言っても過言ではない「ポップ」というキャラの立ち位置です。
知らない人向けに簡単に説明すると、このポップというキャラは登場当初は臆病で無責任で、主人公を置いて勝手に逃げ出したりするなどする典型的なへたれキャラでした。しかし物語が進むにつ入れて徐々に芯が強くなり、いつしかパーティの中でも誰よりも沈着で責任感あるキャラへと変わって行きます。
なんでもWikipediaの解説を見ると原作者もこのポップが作品の中で重要なキャラになると初めから認識していたそうで、担当編集者から「もう殺しちゃいなよ」などとストーリー構成で指示を受けても、彼というキャラクターがこの漫画でどれだけ必要なのかを何度も訴えて育てていったらしいです。
それでこのポップの見方が私の中でどのように変わったのかというと、子供の頃は漫画で描かれているまんまに、「最初は頼りなかったけど、すごく成長したキャラだな」という認識でしたが、大人となった今だと、「ポップのように困難に直面しても、逃げ出さずに立ち向かえるだろうか?」という事ばかりが頭をよぎります。
この漫画はジャンプお得意のヒーロー物ということで主人公のダイを初めとしたキャラクター達はそれがさも当然かのように勇敢に戦い続けるのですが、ポップはそんな中でも最も一般人の感覚に近く、強大な敵に対して素直に怖れや恐怖を露にします。もちろん漫画を読む側は気楽なものですが、仮にポップの立場に自分が立った場合、ポップのように恐怖を感じながらもそれを乗り越えて行動できるのかと読み返してみて思うようになりました。
原作者も恐らく、「臆病者だからこそ勇気がいる」ということをこのポップというキャラを通して読者に伝えようとしていたのかと思います。特に作中でポップは、記憶を一時失った親友のダイを守るために一度自爆を行って命を落としていますが、ジャンプだと甦れるからよかったものの、あれほどの決断や行為を自分の親友に対しても行えるかと言ったら、それがどれだけ価値ある行為だと分かっていとてもじゃないですが自信がありません。
そのポップが初めて勇気を出して行動に移す際、いかにもな小悪党キャラの「まぞっほ」から諭されるシーンがあるのですが、その時のまぞっほのセリフをちょっとここで引用させてもらいます。
「確かにワシも昔は正義の魔法使いに憧れた。でも、あかんかった。自分よりも強い者に会うと震え上がっちまって逃げ出した。 そして今はこんなざまじゃ」
「仲間を見捨てるような者でもつとまるのかね かの有名なアバンの使徒というのは?」
「勇者とは勇気ある者ッ!! そして真の勇気とは打算なきものっ!! 相手の強さによって出したりひっこめたりするのは本当の勇気じゃなぁいっ!!!」
「小悪党にゃあなりたくなかろう…?」
(サイト:悪の華「悪役名簿」様より引用)
このまぞっほのセリフを読み返した時、自分はポップよりもまぞっほに近くなってしまったのかもなぁという気がして、ポップが如何にすごい奴だったのかを改めて思い知りました。まぁまぞっほも、決して悪くはないんだけど。
本項のポップとは直接関係ない話ですが
返信削除大魔王バーンの台詞に「鍛えて身につ
けた強大な力で弱者を思うようにあし
らう時 気持ちよくはないのか?」
「優越感を感じないのか?」
というものがあります。
初めて読んだときは悪役にありがちな
台詞だと思って読み流していました。
しかし、冷静になって考えてみれば、
我々は大魔王バーンと同じ事をやって
います。
ドラクエに限らずRPGにつき物の
レベル上げという娯楽要素、これは
まさにバーンのいう苦労して身に
つけた力で相手をねじ伏せて楽しむ
という行為そのものです。
残念なことにこれはゲームだけでは
なく現実社会でもありますが・・。
masatakaさん、コメントありがとうございます。
返信削除おっしゃりたい事、よくわかります。っていか、めちゃくちゃ面白い事言ってますね。私もご多分に漏れず、徹底的にレベルを上げた状態で敢えて弱い敵をいたぶりながら倒すことが大好きです。最近なんか「強くてニューゲーム」のできないRPGじゃ物足りないとすら思うようになってきて、意識しないところで大魔王バーンになっていたのかもしれません。
無論現実世界でそんなことはするべきだとは思わないのですが、仮になんでもできるような力を持てたとすると、恨みのある人間に対していたぶるような行為をしてしまうと私は自分で思います。そういう意味で「いたぶる」というのはある種、欲望に近い物なのかもしれませんね。
記事中では書きそびれましたが、ポップの話といいこの大魔王バーンの話といい、子供の頃は気づきませんでしたが「ダイの大冒険」は子供が読む上で大切な概念をたくさん書いていますよね。従兄弟の子供にでも買って読ませてみようかな。