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2011年4月24日日曜日

アメリカの大学に留学する価値

 時期にして大体2005年くらいから、政財界の要人らがよくアメリカのハーバード大学の日本人留学生数が減少していると問題視する発言をよく見るようになりました。現在でも死にぞこないの自民党文教族らはそれらアメリカの大学において韓国人、中国人らと比べて日本人留学生数が減っており、日本の教育力が低下していてこのままでは両国に追いつかれるなどとよく発言しておりますが、確定的なデータも二次ソースも少ないながら、私はこの傾向がそれほど問題なのか強く疑問に感じております。

 最初のきっかけは友人から聞いた話で、何でもアメリカの大学はハーバード大学を含んで基本的に私立で、現在学生数の減少によりどこも経営難に陥っているそうです。そのためどこのアメリカの大学も授業料を得るために留学生を呼び集めているものの、ほとんどの国ではすでにアメリカの大学にはそこまで価値があるわけでないと見抜いており、まだその権威をありがたがってがっている日本人と韓国人ばかりやってきてキャンパス内もそういった留学生ばかりになっていると聞きました。
 私は学術研究者でないために実際にアメリカの大学がどれほど教育、研究機関として価値があるのか推し量ることは出来ませんが、少なくとも一般レベルで日本人が根拠なくやたらとアメリカの大学を高く評価している傾向はあるように感じます。またいくつかの角度から見ると、確かにアメリカの大学について疑問に感じる点も少なくありません。

 理系については全く素人もいいところなのでわかりませんが、文系科目についてははっきり言って留学する価値は少ないように思えます。現在の自然科学の王様は間違いなく経済学ですが、先年に起こったリーマンショックはまさに米国流の経済学によって引き起こされたものだといっても過言ではありません。一時期アメリカでMBAを取得するのが流行りましたが、そういったMBA取得者どもがリーマンショックを引き起こしたことを考えると戦犯もよいところです。そのせいか、このごろMBA取得を自慢する人もめっきり減ったし。
 またこれ以外の文系学問についても、私の専門とする社会学ではシカゴ大学が有名ではあるものの昔はともかく今は実際にどんな教育がされているのかわかりません。よくアメリカの大学を礼賛する人で疑問に感じるのは、具体的にどういった点が日本の大学より優れているのかを誰も言及しないところです。

 理系についてもあくまで素人目の意見ですが、誰も基礎学問を持っていなかった明治時代ならともかく現在の日本にはわざわざ留学せずとも世界的にも十分立派な研究環境があるように思えます。霊長類研究やES細胞については間違いなく京大が世界トップですし、またスプリング8など反則だって言いたくなるような豪華な研究設備だってうなるほどあります。もっとも航空力学についてはアメリカが上、っていうか日本では研究が制限されてますが。
 明治時代はそのような研究環境をおろか学者が全く存在しなかったために海外へ留学せざるを得ませんでしたが、今の日本では主要な学問はほぼすべて国内で指導、研究することが出来ます。これは日本にいたらさも当たり前のように見えてしまいますが、最先端の研究を母国語でできるという国は実際にはほとんど存在しません。中国なんか文化大革命でそういった学者全員を殺してしまったために文革後に学生を全員海外に送って建て直しを迫られたほどで、現在においても主要な研究者は皆国内にはおらず海外で研究生活を続けております。

 そういう意味では中国人がアメリカの大学に留学するのはまだ国内に研究環境がないという、いわば必要に迫られたものだということで理解できるのですが、日本人については確かに英語が出来るに越したことはないけど国内で研究が出来るというのであればわざわざ行かなくともよいのでは、というよりむしろもっと日本の大学に海外の研究者を呼び集めるような努力をしてもよいのではないかという気がします。

 留学生が減ったなどと嘆く発言をする政財界の人間に対して私が一番言いたいことは、アメリカの大学に行け行け言っておきなら、そういうあんたらは国内の研究を深耕させるようなことをこれまでしてきたのかということです。特に文教族の議員はまさに教育政策を決めるキャスティングボードを握っておきながら現在問題となっているような学力低下を招いており、そうした反省もなにもせずに、「日本人が留学しなくなった」などとほざくのは肥溜めにでも首突っ込んでろと言いたくなるほど腹が立ちます。

 私は留学を否定するわけでもなく行けるのであれば行くに越したことはないと思いますが、もっと日本国内の高等教育を充実させるという考えを持たずにアメリカの大学における日本人留学生数低下を懸念するというのはどこかピントがおかしいのではないかという気がします。折角ここまで日本の研究レベルを高めたのだから、舶来物をありがたがっているばかりでなく、逆に外に訴えていく努力こそが今不足しているのではないでしょうか。

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