本当は昨日の記事に合わせて書くつもりでしたが、紙幅が足らないので今回独立して書くことにしました。
・自虐史観(Wikipedia)
自虐史観というのは戦後に行われた日本の歴史教育のことを指す際に使われます。内容としては戦前の日本を世界大戦を引き起こしたとして批判的に捉える観点から語られ、一部の論者からは過剰に日本、ひいては自国を否定する内容だとして90年代頃から逆批判が起こり、しばしば論争の的となりました。
この自虐史観で強調されたのは戦前に日本が行った侵略への反省で、ある意味私なんか論争の起こった頃に教育を受けていた世代なので割かし懐かしい感覚すらあるのですが、南京大虐殺や朝鮮人強制連行、従軍慰安婦問題などは小学生時代からしつこく教えられた記憶があります。ただこうして教えられる内容はなんだか東アジアに集中してて、バターン死の更新とか東南アジア方面の話はなんだか扱いが小さかったような……。
こうした歴史教育が戦後は一貫して行われたそうですが、これについて行き過ぎだとして主に「新しい教科書をつくる会」のメンバーなどから逆批判が起こるようになり、上記の歴史事件の再検証とともに戦前の日本政府、ならびに軍人らを再評価する動きが90年代中盤から起こるようになりました。そうした逆批判論者らの意向が強く反映されたいわゆる"つくる会の教科書"が発売されるや中国や韓国は、「過去の真実をごまかし、歴史を改変した内容だ」として公式に批判し、当時はってか今も続く国際問題とまでなりました。
さてこの自虐史観ですが全部が全部語ると非常にややこしく、また議論する相手によっては余計なヒートアップを招いて論争にならなくなる可能性が高い議題です。そこでいくつかポイントを絞って実際にこの自虐史観による教育を受けた私の考えと現状を説明します。
・ポイント1、自虐史観はアメリカによる押し付けか
これなんか安倍元首相とか平沼赳夫氏が激しく主張していますが、戦後日本を占領したGHQが日本が二度とアメリカに歯向かわないように徹底した反軍主義、戦前否定の教育を実施したことで自虐史観が生まれたという意見ですが、これについては私は明確に否定します。
まず勘違いしてもらいたくないのは、実際にGHQが戦後直後の日本で戦前を否定する教育を推し進めたのは事実でそれについては私も異論はありません。ただGHQは占領後半になると対共産主義のために率先して日本の再軍備化を推し進める、いわゆる「右旋回」をするようになり、その過程で自衛隊の前身となる警察予備隊も生まれています。
だからといって教育内容まで当時に変わったというわけじゃないですが、肝心なのはGHQの占領は1951年で終わっていることです。その後の日本はGHQが作った憲法とはいえ、日本人自ら選挙を行い、政府を組織し、文部省で自ら教育内容を決めていきました。少なくとも私が見る限り独立回復後の日本で90年代にいたるまでアメリカが日本の教育行政を握っていたとは思えず、きっかけは確かにアメリカの指導かもしれませんがそれを維持したのはほかならぬ日本人自身で、それにもかかわらずアメリカが押し付けて日本の教育は駄目にされたというのはちょっと違うような気がします。
・ポイント2、自虐史観が日本人をだめにしたのか
これもまた上の二人組+藤原正彦氏がよく主張していますが、私としては疑問に思う意見です。そもそもの話としてそれほどまで歴史教育に影響される生徒自体多いとは思えず、いくら学校の授業で聞いたからといって日本は悪い国だ、周辺国に謝罪しなければなどと真剣に考える人間はそんなにいなかったと思います。一人や二人ならいるかもしれないけどさ。
その根拠と言っては何ですが、90年代後半から尖閣諸島や魚釣島などで領土問題が起こるや中国や韓国への日本人感情は一気に悪くなり、その変貌振りを見るとそれ以前の両国への感情は申し訳ないとかそういうもんじゃなく、ただ単に無関心だった気がします。ついでに書くとこの教育でアメリカに対しても反抗心を持たなくなったとも言われていますが、これは沖縄問題が一番影響しているように思います。基地負担などすべてを沖縄に押し付けたが故で、アメリカに対してもまた大半の日本人は無関心だっただけではないかという気がします。
・ポイント3、自虐史観は今も続いているのか
これについてはさすがに義務教育現場ではどうなっているのかまではわかりませんが、少なくとも日本全体の論調としては大分後退しているかと思います。その理由としては自虐史観では徹底的に被害国として扱われた中国や韓国と明確に領土問題になったり、中国に至ってはGDPでも抜かれるようになって主張に現実味がなくなってきたことが原因だと思います。さらについでに書くと、中国の方こそが自国の歴史をごまかそうとする気合が半端じゃないし。
またこれは私自身が高校生だった頃の感傷ですが、はっきり言って歴史を勉強していてその主義主張なんかよりこっちとしては如何に受験でポイントを稼げるか一番関心があり、こういうことに大騒ぎするのはむしろ外野の大人たちだったような気がします。
ただ振り返ってみてこの自虐史観は歴史認識として明確な間違いをいくつかしており(日本に民主主義はなかったとか、国民は軍部にだまされていたなど)、後退して個人的にはよかったなぁとは思います。その一方でつくる会らの「日本は米国などに追い込まれて戦争をした」などという後から来た主張も私は理解することが出来ず、こっちの主張も今度後退してくれればいいなぁって思ってます。
なお戦前の歴史認識としては私が今一番傾倒しているのは半藤一利氏で、半藤氏の主張のように「日本人は何も考えずに戦争に向かっていった」というのが戦前に対して最も納得できる意見です。
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