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2011年5月31日火曜日

中国の旱魃と三峡ダム

 久々に中国のホットな話です。毎日こうやって寸評だけでもいいから取り上げた方がいいのかもという気もしますが、長文が売りなんだしそこまで気にしなくてもいいと自分に言い聞かせてます。

消える川・干上がる湖…旱魃ますます深刻に=湖北・安徽・湖南(サーチナ)

 上記リンク先のサーチナの記事では現在中国では雨が全く降らないことによる旱魃が深刻化していることが報じられていますが、こっちの報道でも今一番主要な話題と言ったらこれです。具体的にどれくらいの規模かと言うと上海市に限って言えば今日の朝刊だと、降雨推量はここ138年(そんな昔の記録がどこにあるのか疑問だけど)で最も低く、なおかつ気温も先々週に最高で38度まで上昇するなど例年にない異常気象だと報じられております。実際に先々週は暑くて溶けそうで、雨も先週にちょこっとふっただけです。
 ただ上海市は他のところから水を引いてこれますし、またここより南部であればまだ状況はマシです。一番深刻なのはサーチなの記事にもある通りに湖北、安徽、湖南省といった中部地域以北の地域で、農村では農繁期にもかかわらず全く雨が降らないことから早くも食糧難を懸念する声が出ております。

 それでこの旱魃についての現地新聞報道ですが、原因は三峡ダムではないかと複数紙が連日取り上げています。

三峡ダム(Wikipedia)

 三峡ダムとは中国が誇る世界最大級のダムで、90年代に建設が決まるや文字通り国の威信をかけて作られ2009年に完成しました。しかしこの三峡ダム、建設前からそのあまりの巨大な規模から周辺環境に多大な負荷を与えるとの予測が中国内でも出ており、また建設に伴い移転する住民の桁違いの多さ(140万人)などから議論は紛糾し、1992年の全国人民代表大会での建設決議でも「出席者2633名中、賛成1767名、反対177名、棄権664名、無投票25名」という、全会一致で当たり前の中国の議会としては異例とも言えるほど反対者がでたほどいわくつきのダムでした。
 そんな過程を経て建設には至ったものの、中国に限らず日本でも大体そうですが完成までに当初予定していた予算は数倍にまで膨れ上がり、また建設途中であれこれ問題が出てきたことから水位も最大にまで高めることが出来なくなって予定発電量に達せず、なおかつダムが出来たにもかかわらず周辺地域では水害の被害が年々増加しており、「治水にも発電にも役に立たない」と現地報道でもかなり厳しく批判され続けております。

 というのもこの三峡ダムは表向きは膨大な電力需要を賄うためとして建設されましたが、実際には最初に計画したのが孫文であり、どちらかと言えば「あの孫文が抱いた遠大な計画を今ここに実現する」という国威発揚的な目的の方が強かったと言われます。実際にこの三峡ダムがどれほどの性能を持っているかは生憎専門家ではないのでわかりませんが、日本での報道やコメントを見る限りだと誉めている人は確かにいません。

 それでこの三峡ダムがどうして旱魃に関係するのかですが、三峡ダムに限らず巨大なダムはその建設によって周辺の気候を変えてしまいます。あのエジプトのアスワン・ハイ・ダムも建設の前後でその地域の気候が変化したそうですが、因果関係ははっきりと証明することは出来ないまでも現地報道では三峡ダムが出来たことで降雨量が激減したと指摘されております。
 またそれと合わせて三峡ダムで致命的だったのは、当初農業用水の確保も計画に入れられていたものの、その巨大さゆえか水をうまく利水することが出来ずにいることです。

 現実に本当に三峡ダムが原因かどうかは断定することは出来ませんが、あれほどの大きなダムであれば自然への影響も多く、多少は関係しているのではというのが私の考えです。ただ旱魃に関してはこれ以外にもたくさん原因は考えられ、なんでもかんでもダムのせいにするべきではないと思います。
 しかし中国国内でこれほどまで三峡ダムに批判的な声が上がっているとは日本にいた頃は全く知らず、今回の旱魃で拍車がかかっていることを一応紹介しておこうと思って筆を取った次第です。

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