昨日に引き続き、幸福論の話です。
まず最初に今回の件で何が一番言いたいのかというと、幸福というものは個々人によって完全にバラバラで、定型というものはまるでないということです。前の記事でも書きましたが私にとってすると一般的な幸福の条件は少なくとも「快」の条件になるというわけではなく、場合によっては「不快」な条件に適合することすらあります。私みたいなのは明らかに例外ではあるものの、断言してもいいですが幸福の条件は個々人によって確実に個人差があり、画一的な条件が決まっているわけではありません。
これが何を意味するかというと、幸福の定型とされるものを追いかけていざ手にしたところで、本当に満足が得られるのかということです。もちろん全く満足感がないということはないでしょうが、後々に「やっぱりああしとけばよかった」という後悔が出てくる可能性があるんじゃないかと私は考えています。私がこう思う理由として大きいのはやはり「失われた十年」に青春期を過ごして、この間に「こうすれば幸せになる」と盛んに喧伝されたものがわずか数年後に片っ端から消え去っていったのを見ているせいだと思います。今じゃ完全に死語ですが、一時期は「レーゾンデートル」とかいう言葉が流行って、「自分探し」とか「自己実現」の重要性が盛んに主張されましたが、これに乗っかった人たちは今どうしているのか気になります。
じゃあどんな幸福を追いかければいいのかですが、突き放した言い方をすると自分で考える以外にないと思います。何も十年先の幸せとか長期的な視野に立たなくてもいいから、少なくとも「世間一般で言われているから……」というような理由で安易に選ばず、他人が主張するものでもなんとなく納得できるものを追いかけてれば後悔はないと思います。たとえ周りからそんなの信じても得しないよと言われても、本人が納得することが一番大事です。
そんなこんだで話は飛びますが、数ある幸福論の中でも私がひときわありがたがって聞いているのはほかでもなく、漫画家である水木しげる氏の幸福論です。なんかちょっと検索かけたらすぐ出てきましたけど、主に主張している七ヶ条というのは下記の通りだそうです。
第一条 成功や栄誉や勝ち負けを目的に、ことを行ってはいけない。
第二条 しないではいられないことをし続けなさい。
第三条 他人との比較ではない、あくまで自分の楽しさを追及すべし。
第四条 好きの力を信じる。
第五条 才能と収入は別、努力は人を裏切ると心得よ。
第六条 怠け者になりなさい。
第七条 目に見えない世界を信じる。
いかにも水木氏らしい主張ですが、書かれている内容と実際の半生を見比べると自然と頭が垂れてきます。一例を出すと第六条の「怠け者になりなさい」ですが、これに限らず水木氏は普段からたくさん寝て食べることは大事だとよく主張していますが、その一方で自身は若い頃に戦争で軍隊生活を経験し、復員後もそれこそ寝ずに働いてスズメの涙ほどの収入で暮らしているだけに、ほかの人とこの言葉の重みが段違いに違います。
これはあくまで私の解釈ですが、水木氏が主張する幸福論とは「自らの中の内なる欲求に従え」というのが大まかな意なのではないかと思っています。要するに、寝たいとか食べたいという人間の根源的な欲求に加え、個々人が持つ嗜好の対象に素直な気持ちで向き合えという風なものだと考えています。その上でさっきの第三条こと「他人との比較ではない、あくまで自分の楽しさを追及すべし」で、それこそ資産の量など他人との比較でしか証明できないものは少し違うのでは、と言っているのだと思います。あくまで私の解釈ですが。
こういった水木氏の考え方に触れる前から私はかねがね強情で知られていましたが、自分自身の考え方、思い方に素直になることは非常に重要だと考えていました。私も中学生くらいの頃なんかはやっぱり世間体とかを気にして、いくらか心に思っていることと全然違うことを言ったり振る舞ったりしましたが、そうした行動の後は何とも言えない嫌な気持ちでいっぱいになっていました。逆に成人した今、周囲からどんだけ批判されようが自分自身が間違っていないと思うことを言ったりやったり、一例を挙げると「今日は眠いから飲み会には行きません」と言った後はその後の立場が苦しくなるとしても(実際なった)あまり後悔がありませんでした。
非常に飛び飛びな内容となりましたが、結論としては周囲の雑音というものはしばしば幸福を阻害する可能性があるということです。私自身は何を以ってすれば自分が幸福になるのかを未だ見つけていませんし、恐らく今後も一生追い求めることはないでしょうが、朱に交われば赤くなる様なことだけは避けて生きてこうと思います。
水木先生の7ヵ条を家訓にしたいです。
返信削除ふざけているように見えて、意外と含蓄のある言葉が多いのでぜひ大事にされてください。ただ他の人に、「努力は人を裏切るよ」としたり顔して言うと変な風にみられるので、ご使用にはご注意を。
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