間に一回挟んで再びデフレ関連の記事です。今日はみんながデフレだデフレだと叫んでる一方で意外と議論されないデフレの原因について私の考えを紹介します。
まず最初に断っておきますが、これはデフレに限るわけではありませんが人間というのは基本的に因果関係をシンプルに一対一で結びたがる思考をしています。平たく書くと一つの結果には一つの原因があるはずだと思い込みがちという意味ですが、世の中そんなに簡単なわけではなく実際には一つの結果は二つや三つ以上の原因から生まれることもあれば、一つの原因から二つの結果が生まれたり、場合によっては三つの原因から二つの結果が生まれたりすることもあります。
このデフレも類に違わず、日銀を中心に「これが答えだ!」と怪しい占い師のように主張してくることもありますが、実際には複数の要因が一緒に作用して起こっているというのが私の考えです。ではどんな原因があるのか、世の中に出回ってて間違っているのも含めて片っ端から書いていくことにします。
1、安い中国製品の流入説
これは前回の記事でも書きましたが念のためおさらいです。この説は人件費が安い中国で作られた製品が大量に日本に流入してきたことから物の価格が下がりデフレになったというわかりやすい説ですが、これは実際にはデフレの原因にはなっていないと私は考えています。理由は前にも書いたように中国製品とは競合しない散髪や修理といったサービスの価格も下落しているのと、同じく大量の中国製品が流入しているアメリカではデフレどころかインフレを記録しているからです。昔に中国製品が入ってきて価格が下がっていることを「良いデフレ」と評する意見を見たことがありましたが、商品を安くして販売量を増やして儲けた企業、特に家電メーカーがもいたんだからこの点に関してはまさにいいデフレだったと言えるでしょう。
2、生産年齢人口の減少説
これは日銀が盛んに主張している説ですが、私の知る限り日銀はこの説に対して具体的なデータを出して説明しているのを見たことがありません。そもそもなんで人口減がデフレにつながるのかよくわかりませんが今回下地にしている岩田規久男氏の「デフレと超円高」(講談社現代新書)によると、生産年齢人口が減少しているドイツやウクライナ、ルーマニアなどではインフレとなっており、デフレなのはこれまた日本だけです。これに限るわけじゃないけど、真面目に日銀の連中が働かずに給料もらっていることが不思議です。
3、生産性の向上説
これもこのところよく見ますが、なんていうかどれも日本国内だけで考えるからおかしな方向に進むんだなと思う説です。これは生産性が向上、いうなれば一つの製品やサービスを生み出すためにかかる労力やコストが減少することによって商品価格が下がり、物価も下落していったという主張なのですが、先進国中で最低クラスの生産性を誇る日本でよくこんな説を主張できるなといろいろ思います。この点に関しても岩田氏のデータによると、OECDが調べた1995年から2007年までの生産性上昇率で日本の1.27%を上回っている国、下回っている国両方でほとんどインフレとなっており、はっきりいって生産性は何も相関がありません。普通に考えればわかることだけど、ある意味でこの説を主張する人は凄い人だと思います。
4、規制緩和説
大きな原因ではないけど少し影響していると思うのはこれです。小泉内閣時代に日本はあらゆる面で規制緩和を推し進めたことによって、それまで参入障壁が高かった業種を中心に新規参入が相次ぎました。主なのは人材派遣とタクシー業界、あと大店法が緩和された小売業界ですが、サービス競争よりも価格競争が先行する面も見られ、タクシー業界に至っては複数企業が連名で規制を強化してくれと陳情するほどに至りました。まぁ何が何でも規制緩和は悪いと言うつもりはなく、これによって花開いた企業もあれば、規制に守られて時代遅れになっていた企業も淘汰できています。もっとも、一番規制に守られているテレビ業界で規制緩和がないのが私には不満ですが。
5、年代による富の偏り
これもあくまで遠因していると思う説ですが、今の日本はかつてないほどに年代別で富の偏りが出来上がっております。具体的に言えば年代が高まるほど富が増え、逆に若年世代は異常なまでに富を持っていないばかりか日々の収入も少ない状況です。育児や娯楽など本来消費が活発化する世代に富が行きわたらず上の世代に富が塩漬けされているような状態から消費が動かず、物価も収入の少ない若年世代に合わせて減少しているというのがこの説ですが、じゃあ若年失業率の高いスペインとかほかの国はどうなのかという疑問がまだあります。反証は出来なくはないけど。
6、政府の政策
何気に一番でかいと思うのがこの説ですが、政府、というより多くの政策決定者の間で「デフレが望ましい」という意識があるのではないかと思います。というのも政治家を始め政策決定者は比較的高年齢層が多く、預金のある人からすればインフレになればなるほどその預金の価値は減り、逆にデフレであればどんどんと価値が高まっていきます。一応口ではデフレは問題だと言いながらも、内心ではデフレに誘導するように政策を動かしているのではないかと疑わざるを得ません。
7、日銀の政策
こっちははっきりしていて、日銀はデフレが望ましいと公言しているようなものです。昨日今日の報道でも自民党の政策案に対してハイパーインフレになると否定的ですが、日銀というはバブル崩壊の失敗から伝統的に、「インフレになるくらいなら安定的なデフレの方がいい」という思想が強いと聞きます。残念ながら今の姿勢を見ているとやはりその噂は本当だったと思わざるを得ず、1%のインフレすらあってはならないというような思想の仕方をしている気がします。でもってこういう日銀の姿勢があるからこそ為替取引をする世界中のディーラーも、「日本はインフレになりそうになったら日銀が止めてくれる」と織り込んで日本円を買って円高になってるというのが岩田氏の主張です。
8、社会保障への不安
これは私が以前からも主張している説ですが、年金をはじめとして日本の社会保障、特に失業が定年となり収入がなくなった後の生活をどう切り盛りするか、行政がきちんと支援してくれるのかという不安がこの15年くらいの間で急劇に高まっており、消費を切り詰め預金しようという意識が強く働くようになっているのも大きな要因だと思います。実際にこの前実家帰った時も、家を買うくらいなら賃貸の方がいいと家族会議で結論出しました。
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