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2013年4月21日日曜日

韓国の近現代史~その十一、文世光事件

文世光事件(Wikipedia)

 ちょっと間をおいての連載再開ですが、いい加減、朴正煕政権期間中の事件は書いてて飽きてきました。まだあと金大中事件もあるというのに……。そういう愚痴は置いといてちゃっちゃと本題書くと、今日は朴正煕大統領を狙ったものの結局は朴正煕夫人の陸英修が暗殺されることとなった、文世光事件を取り上げます。

 事件が起きたのは1974年8月15日。日本の植民地から解放されたこの日を祝う式典に参加するため朴正煕とその夫人の陸英修はソウル国立劇場へと足を運びました。この式典で朴正煕は演壇に立ち祝辞を読み上げたのですが、まさにその瞬間を狙って在日朝鮮人の文世光が拳銃を抜きだし彼目がけて発砲しました。幸いというか弾丸はターゲットである朴正煕は外れたものの傍にいた陸英修に当たり、またたまたまその劇場に居合わせた女子高生に警備が文世光を狙って撃った弾が当たり、二人は病院へと運ばれたもののそのまま息を引き取りました。そして犯人の文世光は現場で取り押さえられ、同年の12月に死刑判決が確定してそのまま執行されております。

 この事件で特筆すべきなのは、文世光は日本の朝鮮総連の指示を受けて暗殺を計画し、そしてこの事件で使われた拳銃というのは大阪市高津派出所から盗まれたものだったという点です。はっきり書いてしまえば、盗まれた拳銃が使用されたことや文世光の偽造パスポートによる出国などを見逃した点で日本側の捜査怠慢も背景にあるということです。
 こうした点から事件後に朴正煕は日本側に強い不信感を持ち、さらに朝鮮総連の関与が疑われながら日本の警察が捜査に慎重な姿勢というか介入をきらったことから日韓関係は大いに冷え込んだそうです。私の個人的な意見を書かせてもらうと朴正煕の怒るのも無理なく、当時の外交関係者は相当な苦労を以って何とか関係をつないだのではないかとも思えます。

 最後にこの事件の帰結というかその後の展開について少し触れると、「在日朝鮮人を日本人に偽装してテロ活動を行う」という方法に北朝鮮が味を占めた感があります。勘のいい人ならわかるでしょうがその後に起きた大韓航空爆破事件などがその典型で、更に言えば第三国をなりふり構わず巻き込むという手法も後のラングーン事件にも通じるように思えます。
 歴史に仮定を持つことは私自身はあまり好きではないのですが、もし日本側がこの事件を未然に、文世光の出国を食い止めるなどできたら、北朝鮮の諜報活動もなにか違ったようになったのではという感慨を持ちます。

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