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2013年5月31日金曜日

漫画レビュー「シドニアの騎士」

 「重力子放射線射出装置」と聞いて、これが何を意味するか分かる人は多分私と趣味が合う人でしょう。この言葉は二瓶勉(にへいつとむ)という漫画家の作品「BLAME!」に出てくるなんでも貫通させてしまう銃(拳銃からライフルまで分かれる)の名称です。原理については作中でもはっきり明かしていませんが(小型ブラックホールを連続射出するとか考えられてる)、拳銃状の武器から100メートルはあろうかという巨大人工物を貫通する描写は圧巻の一言に尽きます。

 多分私は人並み以上に漫画作品を日頃から読んでいて、現在連載中の作品で目を通しているのを上げると「暗殺教室」、「キングダム」、「極黒のブリュンヒルデ」、「進撃の巨人」、「AZUMI」などありますが、最も続きが楽しみでたまらない作品を一つ上げるのであれば、上に書いた「BLAME!」の作者である二瓶氏の最新連載作品、「シドニアの騎士」が私の中で挙がってきます。

シドニアの騎士(Wikipedia)

 この「シドニアの騎士」というのはロボットSF作品に当たるもので、普段はどんくさい主人公の谷風長道(たにかぜながて)が謎の宇宙生物である奇居子(ガウナ)との戦闘で超人的な活躍を続けるという内容です。戦闘の合間には学園ラブコメっぽい展開もあるのですがそこはさすが二瓶氏というべきか、戦闘が進むにつれて徐々に暗い局面も出始め、また光合成を行うことによって食事をとらずに生きる人間、脳味噌を換装して永遠に生きる不死の船員会など独特の設定が光ります。

 ここで話を少し脱線しますが、二瓶氏というと特にその初連載作品の「BLAME!」に顕著ですが、めちゃくちゃ濃い絵で有名です。ただこのところはマイルドな画風に代わってきているのですが、ちょうどいい比較画像がネットに転がっていたので早速引用しましょう。


 見てもらえばわかるでしょうが、「BLAME!」の頃と「シドニアの騎士」では「これほんとに同じ作者なの?」と言いたくなるくらい変貌しています。もっとも上の画像の「シドニアの騎士」の絵は第一巻の絵で、現在出ている最新刊の第十巻ではまたぞろ濃くなりつつあります。

 ここまで書いているのを見ればわかるでしょうが、率直に言って私は二瓶氏の漫画が大好きです。この人の漫画は背景に巨大な人工物を描き人間との大きさの差を遠近で表現することが有名で、明らかに並の漫画家とは違うセンスをしております。またその絵柄自体の重厚さに加え、ストーリーでも先程の「重力子放射線射出装置」を筆頭に「東亜重工」、「駆除系」、「継衛(つぐもり)」などと、近未来SF作品にはあまり似つかわしくない妙に重たい漢字を多用するところも気に入ってます。

 今回、改めて「シドニアの騎士」でレビューを書こうと思ったのは、なんでもアニメ化が決まったという発表があったためです。正直な所、いつもの如く読んでて意味が分からない展開が多いからアニメ化とかはないと思っていただけに意外な発表でしたが、それならそれでめでたいと思ってちょっと取り上げることにしました。
 それともう一つ。二瓶氏は自分の作品でスターシステムというべきか、同じ名称の人物や組織を登場させることが多いです。代表格は「東亜重工」で、どの作品でも未知のハイエンド技術を持つ企業として出てきており、「シドニアの騎士」にも重要な組織として現れます。しかもその「シドニアの騎士」の最新刊である第十巻においてはなんとなんとというべきか、とうとうあの「重力子放射線射出装置」まで満を持して登場してきました。無論、文字通りなんでもかんでも貫通させてしまう反則と言いたくなるほどの破壊力も健在です。惑星まで貫通させていたしなぁ。

 そんなわけで個人的にかなりおすすめの作品なので、巻数もまだ十巻までしか出ておらず手を出しやすいので、興味がある方は手に取ることをお勧めいたします。

  おまけ(シドニアの騎士イラスト)



  

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