コメント欄でちょこっと聞かれたのと前から興味があったので、日本の大卒内定率について思うことを書いて行こうと思います。
・平成24年度「大学等卒業者の就職状況調査」(平成25年4月1日現在)(厚生労働省)
まず現状で最新となる2013年3月卒の学生の内定率データですが、厚生労働省によると前年同期比0.3ポイント増の93.9%だったそうです。この数値から言えば、大学生100人中94人が内定を取得していたという計算になるのですが、果たして額面通りに受け取っていいものか疑問に感じます。というのもそんなに内定率が高ければ就職状況は非常にいいと言ってもいい状況だというのに、報道を見る限りだと今年も例年通り、学生は内定取得に苦労しており卒業間際になっても進路の決まっていない学生が多いように見えます。
・「内定率」カラクリ 実際は60~70%? 留年組は「就職希望者」に含まれず ブランド校もずらり(産経新聞)
そんな私の疑問に答えてくれるかのように、「内定塾」の創業者である宮川洋氏は上記リンク先の記事を書いてくれております。この記事によると、厚生労働省が発表している内定率調査は偏差値の高い大学の学生しか対象としておらず、言うなれば実態を反映した数字ではないそうです。では実際の内定率はどの程度かというと見出しにも書かれている通り、60~70%くらいが実態ではないかと予想しております。
あくまで私の肌感覚ではありますが、宮川氏の言う通りに半数にあたる50%よりやや多い、60%くらいが適当な数字だと私も思います。ただそれにしたって厚生労働省の統計発表とは隔たりがあるようなという気もするのですが、改めて厚生労働省のレポートを仔細に見てみると確かに妙な記述が目に入ります。
一番気になるというか諸悪の根源に当たる調査対象の項目ですが、そのまま引用すると下記の通りです。
「調査対象は、全国の大学、短期大学、高等専門学校、専修学校の中から、設置者や地域などを考慮して抽出した112校、6,250人です」
「調査校112校の内訳は、国立大学21校、公立大学3校、私立大学20校、高等専門学校10校、専修学校20校。調査対象人員6,250人の内訳は、大学、短期大学、高等専門学校併せて5,690人、専修学校560人」
この説明でおかしなところは、調査対象校を「無作為抽出(ランダムサンプリング)」で選んだとは書いていない点です。はっきり言いますが(はっきり言わないことの方が珍しいブログではありますが)このような統計調査ではランダムサンプリングで調査対象校を選ぶのが当然で、仮に地域を考慮するのであれば人口比から換算して九州は10校、関東は50校と学生数に比例して調査対象校の数を決め、その上で各地域ごとにランダムに対象校を選ぶ層化抽出法を取るのが自然です。しかしそういった調査手法を取っているとは全く書いておらず、やはり宮川氏の言う通りに恣意的に内定率が高く出る学校を選んでいるのではないかという気がしてなりません。
その上でこちらは決定的に数字がおかしい点ですが、調査対象校の区分内訳として「国立大学21校、公立大学3校、私立大学38校」という数字を出しておりますが、ナレッジステーションのデータによると日本の大学数は783校で、区分内訳は、
国立:公立:私立=86:92:605(実数)
となっており、1の位を切って大まかな比率を求めると「8:9:60」という計算になります。この数字に対して厚生労働省の調査対象校の数は「21:3:20」(実数ベース)という具合に、実数的には7倍超も開きのある国立大学と私立大学がほぼ同数という奇妙な選ばれ方がされています。いうまでもなく国立大学は一般的に私立大学より高く評価されやすい面があるため、同じ偏差値でも国立出身の学生の方が内定率は高くなると予想されます。
もうここまで来たら厚生労働省は確信犯的に内定率を高く見せるためにデータを弄っていると言わざるを得ません。どうも日本や中国といったアジア人というのは何かと統計データに感情をこめたがる傾向があり、実態を正しく理解するための統計数字を歪ませることが多いのですが、こんなことやって誰が得するのか非常に疑問です。というか、この調査を主導した責任者は明らかに能力に問題があるのだから早めにクビを切るべきでしょう。
最後にもう一つ参考になるデータとして、下記の記事を紹介しておきます。
・新卒ニート3万人は本当か、内定率改善も依然厳しい就職戦線(日経BP)
こちらの記事は2012年10月に出されたやや古い記事ですが2012年3月卒の大卒就職率について、厚生労働省はは93.6%と発表したのに対し文部科学省は63.9%と発表したと報じております。この数字の開きは厚生労働省は就職希望者を母数にしているのに対して文部科学省は卒業者数を母数にしているためだとしていますが、それにしたって開きすぎもいい所ではという気がします。
その上で文部科学省の調査では、
「(文部科学省の)学校基本調査によれば大学を今春卒業した約56万人のうち、進学も就職もしていない人が8万6000人(15.5%)を占める。そのうち5万3000人は進学準備や求職活動を行なっており、残りの3万3000人余りが分類では『その他』となっている」
と書かれているようで、「その他」というのはニートに当たるのではと日経BPは書いております。この辺りの方が社会実態をよく表しているのではないかと私自身思います。それにしても今日の記事は引用ばかりであまり気分良くないな。
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