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2013年8月11日日曜日

日本人の「無」に対する信仰

 前に書いた「仏教は宗教なのか?」の記事で島田裕巳氏の著書「無宗教こそ日本人の宗教である」を紹介しましたが、実はこの本を読んで前回記事のようなことに加え、またちょっと妙なことを思いつきました。結論からパパッと書くとそれは、日本人はどこか「無」という概念に対して信仰めいたものを持っていないかといことで、今日は暑くて外出る気しないのでその辺を書こうかなと思います。

 まず「無」とはなんぞやですが、深く議論すると禅問答みたいに答えがでなくなってしまうので一般的な定義を述べると、「空っぽ」や「まっさらな状態」といったところでしょう。一体これがなんで日本人の信仰と関係あるのかですが、あくまで私の印象ですが日本人はやたらと心理的な状態を「無」にすることが理想であるような言い方をする傾向が感じられます。 

 具体例はいくつもあり、一般的なものだとテストやスポーツの大会などでは平常心を持つこと、さらには余計なことを考えないようにするべきだと教えたり、武芸においては剣道において顕著ですが、「無念無想」という状態を理想においております。無念無想についてもう少し書くと、私が聞いた限りでは剣豪の塚原卜伝がある日に突然襲ってきた敵に対して思考する間もなく反射的に刀を抜いて斬り倒した際、剣の極みとは何も思考せずとも体が反応して動く、つまり反射的に斬り返せる状態を理想と捉えたのが始まりらしいです。
 こうした競技などの面に加え、日常生活においても無の心は理想とされがちです。これは仏教の修行でまた顕著ですが、慌てないというか心を動じさせない事を是としています。人の生死において「無常観」という言葉を使って感情を出したりせず、自然の摂理だと考え受け入れる価値の重要性がよく説かれています。

 そしてここが最も根本的な所ですが、日本人は数ある仏教経典の中でも般若心経がやたら好きで、その中でも「色即是空、空即是色」という、「この世の中で目に見えるものはあってないようなもの」という意味の言葉を多用する傾向があります。私が不勉強なだけかもしれませんが同じく仏教の影響が強い中国でこんな言葉が使われるシーンは見たことがなく、般若心経がこれほどまで大事にされるのは仏教というより日本人のメンタリティにあるのではないかと言いたいわけです。そしてそのメンタリティこそ、「この世の理というのは実は無なんだ」という、「無」を価値あるものとして信仰するところにあるのではないかと何故だか思いついたわけです。

 以上のようなことを友人に話してみたところ、「花園君、なんか疲れてない?(;´Д`)」と、マジな感じで心配されてしまいましたが、私はやっぱり日本人にはどこか虚無主義(ニヒリズム)的な思想があるような気がします。本音と建前を分けられたり、本音をなかなか出そうとしなかったり、無駄だとわかっていることを誰も止めないからみんなで続けてしまうところだったり、そういうどこか現実というのは実は存在感がない、果てには自分の心理すらも実は価値がないとでも言わんかのような行動がやや見受けられるのもこの辺にあり、そして日本人自身もそうした「無」に対して憧憬めいた意識を持っているように思えます。

 恐らくですが、私は日本人の中でも数少ないと言ってもいい「頑張れば自分一人であっても世の中は変えられる」と本気で信じている人間の一人です。逆を言えば大半の日本人は自分一人では、下手すれば大勢であっても世の中は変えられないと考えているように私には思え、何故そう考えるのかというとここで書いた「無」の思想が影響しているのではないかと思うわけです。こんな書き方をしていますが私は「無」への信仰を全否定するつもりはなくこれはこれで面白いメンタリティを形成しているなと認めますが、もっと突き詰めてこの辺りの思想を研究したら日本人の行動様式とかもあれこれ考えなおせるのではないかと思うのと同時に、「無」の影響がやや弱い自分だからこそこんなことに気付いたんじゃないかというのが今日の私の意見です。といっても、友人たちからはよく「花園君はヒロイックな破滅願望が高い」とも言われているのですが……。

  おまけ
 今回の記事ではやたらと「無」という言葉を連発しましたが、書いている最中に何故だかゲームのファイナルファンタジー5に出てくるエクスデスというキャラクターを思い出し、彼が言った「無とはいったい、うごごご……」ってセリフまで浮かんできました。ほんと、無ってなんなんだろうねと自分も言いたいです。

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