ページ

2013年10月11日金曜日

中国における日系企業の苦境関連ニュースについて

 今日は記事を書くつもりはなかったのですが、ちょっとひどい記事を見つけたのでさすがに黙ってはおられず一筆書くことにします。

ヤマダ電機撤退 「社名が日本兵を連想」消費者が拒否反応(産経新聞)

 上記リンク先は産経新聞の記事で、中国で苦戦する日系企業について取り上げています。詳しくは直接中身の記事を見てもらえばいいのですが、見出しにも書いている通りに家電小売り大手のヤマダ電機が中国での店舗を閉鎖していることについて、「山田という日本を連想する名前だったからよくない」と書いています。同じく去年12月に上海に中国第1号店を出店した高島屋(自分もオープン初日に取材に行った。はっきり言ってメディア対応は悪かった)も、日本名丸出しだったから苦戦が続いている、けど「優衣庫」という中国っぽい名前にしたユニクロは成功していると続いています。

 はっきり言わせてもらうと、この記事を書いた記者は中国に来たことあるのと聞きたくなるくらいお門違いな内容です。たまに中国語も出来ないのに中国に来たばっかりで、聞きかじりで適当な記事を書く記者がいますがその類じゃないでしょうか。

 一つ一つポイントを絞って解説しますが、まずヤマダ電機の中国事業が上手くいっていないのは事実で、オープンした店舗も次々と占めています。もっともヤマダ電機についていえばこのところ日本国内の事業もうまくいっていませんが、なんで中国事業が上手くいってないのかというと実は日本と全く同じ構造というか、補助金制度の終了が大きく響いています。
 日本はリーマンショックの後にエコポイント制度を始めたことから家電小売業は一時期、わが世の春を謳歌しましたが、2011年にこれが打ち切られると特需の反動から業界全体で大きく売り上げが減少することとなりました。実は中国も全く同じで、景気対策として「家電下郷」や「以旧換新」などという家電買換え補助策を打ち出し、これらが打ち切られるやガクンと売上げが大きく減少することとなりました。

 さらにこの辺は割と自分でもしっかり勉強して追っていたので詳しいのですが、中国では2~3年前くらいからオンラインショッピングで家電を買う習慣が急劇に広がっています。日本では去年あたりから段々ブームが広がっていますが、ことネットで家電を買うことについては中国の方がずっと普及しており、それを受けて中国の家電小売り大手である蘇寧電器や国美電器はどちらも自社のオンラインショッピングサイトに力を入れており、実態店舗の売り上げが減少する一方でこれらサイトでの売り上げは増加し続けています。
 以上のような観点から言うと、ヤマダ電機が中国でうまくいかなかったのは尖閣問題による日本イメージの悪化が全くないというつもりはありませんが、それ以上に中国での家電小売業界が大きく変化していることの方が大きいように思えます。

 あともうひとつ情報を付け加えると、これは私の聞きかじりですがどうも先程の中国の家電小売り大手2社が嫌がらせというか、中国メーカーに対してヤマダ電機に商品を卸さないようにプレッシャーをかけているといううわさを聞いたことがあります。その情報くれた人自体が中国メディアとして私なんかより全然プロで人脈も広い人だったので真実だと私は考えていますが、そうした嫌がらせを受けて中国のヤマダ電機では日系メーカー製しか商品が並ばず、価格帯が高級品に偏っていてそれが客足を遠ざける要因にもなっているそうです。さもありなんな話です。

 ここで話は変わってようやく上海高島屋。ここに関してはしつこく取材(広報部に1週間くらい連続で電話した)したこともあることからこだわりがあり、今年5月にも「中国で苦戦する日系デパート」の記事で分析を行っていますが、苦戦の理由は日本のイメージなんて全く関係なく、一にも二にも立地のまずさにしかありません。
 前の記事でも書いていますが上海高島屋があるのは上海の繁華街である南京路ではなく新興開発のオフィス街である古北地区です。出店前からセオリーに外れたこの立地に対して吉と出るか凶と出るか、オフィス街の需要を開拓できるかどうかが上海の一部ビジネスマン(+メディア)の間で噂になっていましたが、現在の様子からすると見事に凶と出た感じです。

 産経の記事ではこの立地について全く触れられておらず、言ってはなんですが書いた人は明らかに上海事情について素人でしょう。その点、ダイヤモンドの記者はよくわかっており、下記の記事の中で立地のまずさからで必ずしも反日が原因ではないと指摘しています。

高島屋、ヤマダ電機……中国進出失敗の原因は本当に「反日」か(ダイヤモンド)

 最後に、産経の記事ではユニクロは中国でのブランド名を「優衣庫」と中国名にしたことから日本のイメージが少なく、中国人も国内ブランドだと信じ込んでいるから成功していると書いてますが、なわけねーよと言いたいです。大体、中国人にちゃんと聞いた上での記述かこれ?
 自分が中国の友人から聞く限りだとユニクロが日系企業であることは中国人もわかっておりますが、単純に価格に比して品質が格段に優れているからよく利用するということを聞きます。結局は価値、価格に対して商品やサービスがどれだけ優れているかこの一点です。

 日系企業が海外でうまくやっていけない理由をなんでもかんでも反日で片づけようとするのは友人の言葉を借りるなら思考停止も同然です。少なくとも中国ではユニクロやヤクルト、あと隠れてYKKみたいに絶好調の日系企業もあるのだから、きちんとそれぞれの成功要因と失敗要因を分析して記者も記事くらい書けと、素人になった気分で言ってみた次第です。

2 件のコメント:

  1. 日系企業は日系企業と取引をしている為、非常に狭い世界と思われます。

    返信削除
    返信
    1.  それは本当にそう思う。中国のローカル企業とも付き合う会社もあるけどまだまだごく少数、この辺のコンサルとかも出来たら儲かるかもなぁ。

      削除

コメント、ありがとうございます。今後とも陽月秘話をよろしくお願いします。

注:ブラウザが「Safari」ですとコメントを投稿してもエラーが起こり反映されない例が報告されています。コメントを残される際はなるべく別のブラウザを使うなどご注意ください。