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2014年4月17日木曜日

韓国旅客船沈没事故に見る現場プロ意識

 記事リンクは貼りませんが、昨日早朝に起きた韓国の旅客船沈没事故について各メディアはどこも最大限の報道を続けております。事故内容についてはその他の報道に任せますが今回の事故の詳細が次第に報じられるにつけ、2003年に同じ韓国で起きた鉄の地下鉄火災事件を思い出しました。

大邱の地下鉄火災(失敗知識データベース)

 もうだいぶ古い事故なので覚えている方も少ないと思うので軽く説明すると、この事故では大邱市を走っていた地下鉄で火災が起こり、最終的に死者が192人、負傷者が146人にも上る大事故となりました。これほどまでに被害が拡大した原因として車両のシートなどに難燃性ではなく普通に燃える素材が使われていたため炎症が広がったことと、現場の地下鉄関係者らが乗客の安全のために必要な措置を取らなかったことが大きいと指摘されています。
 具体的にどのような対応だったのかというと、運行を管理するオペレーターが既に駅構内で火災が起きているにもかかわらず後続の車両をそのまま通過させずに駅に停車させたことや、列車の運転士が車両のドアを閉じたまま、しかも電源を切った上で脱出した点などが挙げられています。この辺は上記リンク先よりもウィキペディアの方が詳しいかな。かいてて思うけど、どうしてこんなこと妙に詳しいのか自分でもわかりません。

 話は戻りますが今回の旅客船沈没事故でも、あくまで現時点の報道に基づいていますが船長を始めとした乗員が乗客を置いて真っ先に沈没する船から脱出したとされております。仮に事実だとしたら、自分の命を優先したくなるという人間の性は理解できなくはありませんが、乗客の命の安全を預かる乗員の立場からするとプロ意識に欠けた行動だと言わざるを得ません。何も船と共に死ねとまでは言いませんが、船が傾いた状態にあっても救命ボートに誘導したという報道はまだ一度も聞いていない限り、あの状況下でやれたことはまだあった気がします。

 と、仮にここで終えたら大邱の地下鉄火災と合わせて「これだから韓国人は」っていう記事になってしまいますが、そのように捉えられることは私の本意ではありません。私が今日ここで言いたいのはこのような事故が起きた状況下、現場の人間がどれだけプロ意識を持って、言うなれば自分の安全を犠牲にして被害を食い止める行動をとることが難しいか、またそれを実行するためにはどうすればいいのかを読者の方に考えてもらいたいということです。
 さっきにも少し書きましたが、誰だって他人の命より自分の命の方が大事で、自分を犠牲にして他人の命を優先するなんて一種気違いな感情だと私は真面目に考えています。しかし危機的な状況だからこそそういう気違いな人間の一人や二人は必要で、立場によってはそうなれるプロ意識を持つことが危機管理で重要だと思います。

 回りくどく言わずに単刀直入に言うと、今回の沈没事故を他山の石と捉えるのではなく、もし自分が同じ状況下にあったら必要な行動を取れるのか、またそういうプロ意識を社会全体ではぐくんでいるのかということを少しでもいいから再考してほしいです。逃げ出した人間を批判するだけでなくどう逃げ出さずに義務を果たせるか、そして自分は何をすべきか、実際に実行できるかどうかはともかくとして事故の起きていない平常時だからこそそうしたことをたまに意識することが肝要な気がします。

 最後にというか自分は妙な民族主義は持ち合わせておらず逆に変なフェア精神をやけに持っているので、日本での不適切な現場の事例も紹介しておきます。

東海村JCO臨界事故(Wikipedia)

 この事件についても年々記憶が薄まっているかと思いますが、冗談抜きで日本人が忘れてはならない事故の一つだと私は考えております。詳細はリンク先の記事、または昔に私が書いた記事を覗いてもらえばわかるので省略しますが、この事故では核燃料が臨界を引き起こし、一時周辺で放射能が放出されるという恐ろしい事態にまで発展しました。
 この事故が起きた際、燃料施設を運営していた住友金属鉱山(現新日鐵住金)系列のJCOは当時の東海村村長であった村上達也氏に対する説明で、すぐに事態は収束する、周辺は安全で心配はないなどという言葉を繰り返していたそうなのですが、不審に感じた村上氏はこう尋ねたそうです。

「(JCOの)従業員の家族たちはどうしている?」
「すでに非難させました」
「自分たちだけ先に逃げて、まるで関東軍だな!」

 というやり取りを経て、村上氏は県や国に何も伺いを立てず独断で村民に避難指示を打ち出しました。のちに村上氏も賠償や辞職を覚悟で行った行動だと述べていますが、仮に村上氏の英断が無ければ少なからぬ被爆者を出していたことは間違いないでしょう。
 このJCOのケースは現場プロ意識の好例というか、果たすべき役割を果たそうとしなかったJCO、そして本来の権限を越えてでも守るべき対象を守った村上氏の二つの差がくっきりと分かれております。

 最後の最後ですが、未だに私はこのJCO事故で亡くなられた従業員の方の死に際を忘れることが出来ません。実際にその場にいたわけではなくネットなどで知った情報でしかありませんが、弾に撃たれて死のうが自殺して死のうが病気で死のうが人一人の死は所詮は一人分などと淡白なことを常日頃口にしておりますが、このJCO事故の被害者に関しては一介の人間の死ではないという気がしてなりません。それこそ、生きながら何度も殺されたようなものだったし。

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