この前書いた「サイコスリラー映画の時代」でも少し触れたので、折角だから今日は一時期はやったジャパニーズホラー映画について思うところを書いていきます。
ここで語っていくジャパニーズホラー映画というのは90年代に日本で製作され、2000年前後にアメリカでリメイクされ人気を博した作品を指しています。これらの映画は主にアメリカでジャパニーズホラーというジャンル名で定着して一時代を築きましたが、ほとんどの原作が1993年に創刊された「角川ホラー文庫」であったことから「角川ホラー」というジャンル名で呼んでもありでしょう。
90年代の日本映画を語る上でこの角川ホラー文庫は外せないほど影響力は強く、私の記憶する限りだと「パラサイト・イヴ」の映画化を嚆矢に続々とメディアミックスがなされ、もはや日本の代表的な妖怪に仲間入りしている貞子で有名な「リングシリーズ」が映画でもドラマでも大ヒットしたことからこの文庫からはその後も人気作が続々と生まれました。個人的な主観で述べるなら一番のヒット作は間違いなく先程挙げた「リングシリーズ」でしょうが、このジャンルの最盛期となると「呪怨」の映画化がなされた頃くらいじゃないかという気がします。
一体何故90年代の日本で角川ホラー系が流行ったのかというと、勝手な理屈を述べていけば一つには日本では元々怪談話などホラージャンルを好む下地があったということ、二つには新進の作家を上手く取り込み良質な作品を多数世に出したこと、三つに90年代は音楽にしろヒットがヒットを生むというほど世の中流行りものに弱かったこともあって一度売れると続々売れるという好循環がきれいに働いたためではないかと考えています。特にリングシリーズは通っていた学校でも大いに流行って周りの級友らも普段は本を読まないくせに「リング」と「らせん」をよく読んでました。
こうした日本初のホラー映画はアメリカでも受け入れられ、もう何度も挙がっているリングシリーズはハリウッドでリメイクされた作品が大ヒットしたためホラー映画のパロディ作品として有名な「最終絶叫計画」の確か4辺りでもパロディ元として使われています。ちなみに使われ方としてはブラウン管テレビに貞子が映った所、モニターにハエが止まったのでスリッパで画面叩いたら貞子が痛がって、仕返しに向こうもスリッパでこっちを叩き返してくるという風でした。
そのリングシリーズと共に日本でも米国でもヒットしたのが「呪怨」のシリーズで、こちらは日本版もアメリカ版も清水崇氏が映画監督を務め、日本人監督としては初めて全米興行収入ナンバーワンを獲得するなど見事な実績をあげられました。この二本のシリーズによってアメリカ国内においてもジャパニーズホラーというジャンルが定着したといっても過言じゃない気がします。
しかしそんなジャパニーズホラーですが、大体2000年を過ぎた当たりから日本国内でのブームに陰りが見えてきます。角川ホラー文庫が原作である作品でも映画化したらパッとせず、前は映画化→テレビドラマ化のコンボもしょっちゅう炸裂しましたがほとんど当たらないのでリングをまた焼き直すとかいう繰り返しが始まります。
一体何故ブームが盛り下がったのかというと、単純に良質な作品が減った上に粗製乱造がされてしまったせいだと考えています。そこまで胸張れるほど作品見ているわけじゃないですが映画版の脚本を原作から大きく改変する作品が当時多く、それも大体が女性キャラをむやみやたらに増やすというキャスティングありきな改変ばっかで、そこらへんが原作の再現を期待するファンを遠のかせてしまったんじゃないかと思います。
また単純にホラー映画というのは案外撮影が難しい作品だったりします。先程挙げた清水崇監督が漫画家の押切蓮介氏との対談で話していますが、観客を怖がらせるために役者はややオーバーに驚いたり怖がったりする演技を要求されますが、これの撮り方がやたらハイテンションに驚いてるように見えギャグっぽく映ってしまうとのことで、「ギャグとホラーは紙一重」という押切氏の主張にその通りだと清水監督も頷いています。
ここら辺のさじ加減が粗製乱造の作品では上手くできておらず、実際私が見た作品でもしょうもないCGに下手な役者が変な格好で慌てたりして見ているこっちは逆の意味でハラハラさせられることもありました。
結局こうしたことが続いたせいか、現代においてはまだ頑張っている貞子シリーズとかを除いてホラー作品の製作はぐぐっと減ってきた気がします。原作の角川ホラー文庫自体も以前と比べて世間で話題になる作品も減ってるように感じるだけに、ブームはもう終わってしまったといっても過言じゃないでしょう。
ちなみにブーム最盛期に「リング」が面白いと言っていた近所のおばさんに、「あの作家はもう後は続かない気がします」と不敵にも高校生の私は言ってのけていました。まぁリング三部作の「ループ」を読んでしまったらそう判断するしかないのですが。
最後に私が見た強烈なジャパニーズホラーを挙げると、「ナインプラスワン」という作品があります。どういう映画かはレビューを書かれている方のサイトを下記リンクにつなげておきますが、この型のレビュー通りというか本当に救いようのないほどひどい作品で、後半なんか見ていて息切れしそうな位辛くなった作品でした。この感想を友人に述べたら、「そういわれると逆になんか見たくなってくる」と言われましたが。
・9+1 ナインプラスワン(ホラーと共に・・・・)
0 件のコメント:
コメントを投稿
コメント、ありがとうございます。今後とも陽月秘話をよろしくお願いします。
注:ブラウザが「Safari」ですとコメントを投稿してもエラーが起こり反映されない例が報告されています。コメントを残される際はなるべく別のブラウザを使うなどご注意ください。