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2015年10月26日月曜日
平家物語と日本人
いつも変な行動ばかりとっているヤクルトスワローズの畜ペンことつば九郎ですが、この写真には一瞬うるっとさせられました。まぁこの時は高橋由伸選手の監督就任はまだ決まってなかった段階でしょうが、発表された後で見ると一味違います。
それで話は本題ですが、先日私は「腐女子のDNA」という記事で源氏物語が日本古典文学の最高峰の様に取り扱われるのは過大な評価では、支持層の大半は昔も今も女性ではないのかということを主張しました。ならば日本古典で何が最大の傑作なのか少し考えたところ、すぐ出てきた結論というのは平家物語で、下手すればこれは現代にも続く日本人の価値観を形作った作品ではないかと思えてきました。
平家物語とは何かについての解説はするまでもないでしょうが、この作品のテーマは何かとなるとそりゃやっぱり「無常観」という言葉に尽き、言い換えれば「滅びの美学」といったところになるでしょう。権勢絶頂期の平家の記述から始まり、その平家が源氏によって徐々に追い詰められ没落し、またその平家を打倒した源義経もまた兄頼朝によって追い込まれるという過程は冒頭で語られる「諸行無常」以外の何物でもありません。
こうした滅びの美学をテーマにした悲劇作品は日本に限らず他の国や文化圏においても数多く見られますが、それらを考慮してもやっぱり日本人はこういう無常系作品を好む傾向が強いような気がします。この平家物語以降も太平記や忠臣蔵、人物においても来年の大河に使われる真田幸村や新撰組など、勝利の栄光を勝ち取る側よりも滅びゆく側に強いスポットが当てられ共感する人間も多いように思え、実際、栄光の大勝利で終わる作品といって私がパッと浮かぶものと言ったら「坂の上の雲」こと日露戦争ものしかないような気がします。
また文学作品のみならず、「徒然草」や「葉隠」といった無常観を主とする随筆や思想書も後の世に生まれていますが(徒然草は平家物語と同時期に成立したのかもしれませんが)、うがった見方をすると平家物語の価値観が日本人に根付いて、だからこそこうした無常系作品が未だに受け入れられているのでは、大きく出れば日本人の魂を形作ったのは平家物語じゃないかとすら思えてきたわけです。桜の鑑賞においても満開ではなく塵り際こそが最高潮とされ、命が誕生したり、最高に輝いている瞬間ではなく、事切れる直前の最後の灯にこそ日本人は美を見出しており、現代においてもこれは大きく変わらないでしょう。
無論、平家物語の思想背景には仏教、そして中国から渡ってきた老荘思想が大きく影響しており、根っこは何かとなればこの両者だと断言できます。しかしこと文学作品の枠で見ればこの平家物語が無常系のトップランナーで、また日本人の価値観に強い影響を与えている可能性を考えると、古典最高峰として置くにはこの作品しかないというのが私の意見です。
最後に以前にも昔書いておりますが、私の曾祖母は平家の隠れ里出身だったため私も家系的には平家寄りだったりします。
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