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2016年3月26日土曜日

人生を偽った男

18年間、妻を、家族を騙し続けた男(世界を驚かせた怪事件・猟奇事件)

 私はこの事件についてテレビ番組の「ザ・世界仰天ニュース」で知ったので、この事件について既に知っている方もおられるかもしれません。正直な所、上記サイトに詳しい事件内容がまとめられているので私の方から紹介するまでもないのですが、話のネタとして一応自分の方でも簡単にまとめます。

ジャン=クロード・ロマン(Wikipedia)

 この事件の主人公であるジャン=クロード・ロマンはフランスの裕福な家に生まれ、名門であるリヨン大学の医学部に進学します。ロマンはそこで出会った女性と交際しますが破局してしまい、そのショックから大学の試験に落ちて落第して今います。しかしロマンは両親に対して無事に試験を合格したと嘘をつき、同級生たちにも同じ嘘をついて進級できなかったため本来は受講できない講義にも一緒に出続けていました。そして落第していない同級生たちが卒業する年次になった頃、就職先はどこか決まったかと尋ねられたロマンは卒業すら出来てないにもかかわらず、「WHO(世界保健機構)に決まった」とまたも嘘をつくのです。

 こうした嘘が功を奏したのか破局した彼女とはよりを戻してその後結婚へと至りますが、ロマンのその後の人生も虚飾に満ちたものであり続けました。彼は毎日自宅を出てWHO本部のあるスイスのジュネーブへと通い、一般人でも入れるWHO本部の一階にある売店や図書館で時間を潰して夕方家に帰るというWHO職員に扮した生活を続け、給料は大学進学時に親から買ってもらったマンションを売却したお金をWHOからの給与であるように振込むことで家族にごまかしていました。その偽装された就職生活は徹底されたもので、WHOの会議に出るため出張すると言っては数日間外泊して、適当なお土産も見繕って持って帰るというほどだったそうです。

 ロマンはこうした生活を実に18年間も続けました。途中、給与に振り込む資金が尽きたことから架空の儲け話をでっち上げては親類知人から金をだまし取りつつもこのような生活を続けてきましたが、ある日実際にWHOに勤務する知り合いの医師からWHO主催のクリスマスパーティに家族も参加できると聞いた妻が夫からそんな話を一度も聞いたことが無かったことを不審に感じ、「めったなことでは電話するな」と言われていたものの、WHO本部へ夫について問い合わせました。WHOからの返答は、「そのような名前の職員は過去にさかのぼってもいません」という回答でした。

 ここからはロマンの供述によるものだから真実かどうか見極められませんが、既に預金が尽きて金策に悩んでいたロマンがいつものように帰宅すると憔悴した妻が待っており、「あなたは……誰なの?」と尋ねたとのことです。その言葉でこれまでの偽装がばれたと一瞬でわかったロマンは咄嗟に手直にあった鈍器で妻を殴り、そのまま殺害します。妻を殺害した後で自分の作ってきた、いや嘘で固めてきた人生が終わったと悟ったロマンは、このまま残していても不幸になるだけだと考え七歳と五歳の二人の押さない子供をライフルで射殺し、そのまま自分の両親の家へ訪れ両親も射殺しました。その後、ロマンは自宅に火をつけ自殺を試みるも火はすぐに消し止められ、結局彼だけが生き残り逮捕されたことで事件が明るみになることとなりました。

 裁判にかけられたロマンは死刑のないフランスで最高刑となる無期懲役が科せられ、現在も生きているそうです。この数奇な事件については多くのメディアが取り上げており何度か映画化もされております。

 たまにこのブログで私は「事実は小説よりも奇なり」という言葉を使いますが、想像を絶する現実というのは現代にあっても珍しくないなとよく考えるからです。この事件もまさにその一つで、一体何故そこまでして嘘をつき続けたのか、そしてその嘘を貫徹することは家族全員を殺害することよりも意味があったのかと思わせるくらい異常な事件内容です。
 私個人の感想で述べると、このロマンはやはりプライドが人一倍に高い人間であったためプライドを崩すぐらいであればほかのすべてを犠牲にすることも問わない人物だったのではないかと思います。またここから発展すると、一家心中という行為はプライドを維持するがゆえに起こる行為なのかなという気も少しします。少なくとも、日本だけじゃなく案外普遍的に行われる行為であることは間違いなさそうです。

 なんでこの事件を急に取り上げたのかというとちょうど今「ホラッチョ」ことショーンKの経歴詐称問題が盛り上がっており、「初めは小さな嘘だったのかもしれないけど本人も途中から抜け出せなくなってきたのかも」という批評があちこちで見られ、嘘を貫き続けようとした末路としてこの事件を思い出したからです。

 また妙な自分語りとなりますが、私はこう見えても正直であることには自信があり、周囲からもよく「馬鹿正直すぎるからもっと肩の力を抜け」と本気で説得されることもあるほどです。確かに自分でもちょっと真面目過ぎると思うこともありますが本当に嘘だけは絶対につかないようにしており、例えどれだけ自分が不利になることが目に見えても、むしろ不利になること覚悟で聞かれてもないような情報もすべてあけっぴろげにしようとします。なんでそんなことするのかというと、嫌な部分を隠しながら人と付き合うのが後ろめたいと考えるからで、その嫌な部分が嫌われて離れられるというのなら仕方がないという諦念もあります。

 ただこうした性格は社会生活上では不利になることが多く、特に就活の時なんか無駄に自分を大きく見せようとはせず等身大の自分を訴えたところほぼすべての会社から総スカン食らって書類選考も含めれば優に100社以上から落とされる羽目となりました。友人からはどうせ面接官も相手が嘘を多少ついている前提で見ているんだからもっと大きく見せろ、話を盛れと説得してきましたが昔から言うこと聞かないことには定評があるだけに、そうした説得には耳を貸さずに就活を続け、現在においても大体似たようなスタイルで生き続けています。
 こんな性格しているせいでしなくてもいい苦労をしただろうし中には自分を誤解した人も多かったと思えいい事なんかほんと何一つなかったんじゃないかとすら考えていますが、それでも自分には一切後悔はなく、正直に真っ当に生きて来れたという自負があります。ちょうど今就活シーズンですが私のようなライフスタイルを就活を行う学生に強いるのは余りにも酷だと思うのでお奨めしませんがそれでも一言だけ言わせてもらうと、自分自身を偽ることだけは絶対にやってはなりません。たとえそれで一時の安寧を得たとしても、自分自身を偽ってしまうと段々と慣れが生じてそれこそここで語った「最初は小さな嘘だった」という末路を見るかもしれないからです。話を盛るというのはテクニックであり活用すべきかもしれませんが、越えてはならない一線というものをどうか念頭に置いてほしいというのが少々老け込んだ私からのお願いです。


  おまけ
 就活中、突然肺に穴空いて(肺気胸)入院したため、予定していた面接とか全部オジャンになってさすがにこの時は私もしょげました。でもって退院後初の面接で自分のウィークポイントはと聞かれ、しょげ込んでたもんだから、「逆境に弱いかもしれない」と答えたところ面接官が凄い困った顔してたのがやけに記憶に残ってます。三菱CAT(当時)はそれで落ちました。
 けど今になってみると、中国現地で転職を決めたりするなど、むしろ自分は逆境下で恐ろしいほどの決断力とバイタリティを発揮しては何度も窮地を切り抜けており、スパロボで言うと特殊能力に「底力」があるんじゃないかっていうくらい追い詰められた状態で物凄い奮戦ぶりをみせます。なもんだから、あの時の自己分析は間違いだったなとちょい反省してます。

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