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2016年12月21日水曜日

日本の賃上げ運動を見て奇妙に感じる点

 昨日はまるで人は健康体でありながら一日に何時間寝られるのかを競うかのようにずっと寝ていましたが、今日はちゃんと起きていました。なので真面目なことを書きます。

 最近なんで専門家でもないのに労働問題ばかり記事書いているのか自分でもよくわからないですが、日本の賃上げ運動を見ていていつも不思議というかおかしいんじゃねとよく感じます。何故そう感じるのかというと原因ははっきりしており、香港で現地の賃上げ運動を見ていたせいだからですが、香港と日本で何が違うのかというと賃上げ幅の根拠です。
 香港では毎年、年末にかけて来年度の賃上げ要求が労組を中心に行われるのですが、その際に叩き台となるのはCPIこと消費者物価指数、もっと卑近な言葉で言えばインフレ率です。香港ではこのCPIを軸に労使間で前年度の上げ幅や昇給率を含めて議論を行い、来年度の賃上げ幅の交渉を行います。

 説明するまでもないでしょうがCPIとは何かというと、単位当たり通貨の価値の変動率を表します。たとえばCPIが5%上昇(5%のインフレ)したということは通貨の価値が5%下落するのと同義で、それまで1万円で大根を100本買えていたのに、CPIが5%上昇すると1万円で購入できる本数が95本に代わるといった具合で、5%下落(5%のデフレ)するとその逆が起こるわけです。

 仮にCPIが前年比で5%上昇していたとなると表面上の賃金(名目賃金)は変わらなくてもその賃金額の価値である実質賃金は5%下落するということになるため、次年度に5%賃上げされなければ何もしなくても給与が下がるも同然です。もっとも日本の場合はずっとデフレが続いているので経営側からすれば実質賃金はずっと上がりつづけていると主張できるわけで、賃上げ見送りの理由にしやすい所ですが。
 なお先程統計局で見たら、今年10月の日本のCPIは0.1%の上昇で、日銀の2%インフレは遥か遠くにある状態です。

 話は戻りますが香港ではこのインフレ率をまずたたき台にして、その上で既存社員の昇給率や前年度の賃上げ幅を様々に考慮しながら労使間で交渉が進められます。たとえば労働者側はCPIは前年比でほとんど変わっていないにしても前年度に昇給幅がそれまでより抑えられていたら今年こそはと主張したり、雇用者側はCPIが上昇していたとしても前年に最低賃金が引き上げられていることなどを理由にして今年は見送りたいなどと、それぞれがそれぞれの立場で意見を主張し合って落としどころへ持って行くという、非常に理路整然とした運びを行っています。

 それに対して日本の賃上げ運動ですが、最近は官制賃上げとまで言われるように政府に言われて労組側が動く始末で、しかもその労組側もこれという根拠を挙げずにベアアップを主張したりするなど、はっきり言って議論がちぐはぐな感じがします。それこそ非正規を含めた過去一年の昇給幅や、産業全体の収益率の上昇幅などを盾にとって労働者に還元すべきなど主張すればいいのに、なんて言うかお祭りみたいにわっしょいわっしょい言ってるだけで、「何故その金額を要求するのか?」という根拠が全く見えません。はっきり言えば幼稚な運動に見えます。

 ある意味、香港だからそういう理知的な賃上げ運動が繰り広げられているのかもしれませんが、日本の労組ももうちょっとその辺を見習って、何の根拠もない変な要求をするのではなくきちんと筋道立てて要求すべしだと思います。もっとも労組に限らず、なんで日本ってCPIを始めとしてPMIとか地方別GDPなど主要経済指標をほとんど見ないのか前から不思議に感じてます。

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