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2016年12月7日水曜日

オバマ大統領の総括

 最近の米国情勢記事はどれもこれもトランプ次期大統領に関する報道ばかりですが、トランプの就任とともに大統領職から降りるオバマ大統領についてそろそろ総括するような記事が欲しいのでもう自分で書きます。

 結論から言えば近年稀に見る傑出したリーダーだったというのが私の評価です。毎日新聞のアホが最近何でもかんでも「トランプ現象」と言ってトランプと結びつけた誤った報道を展開しておりますが、米国の大統領選が始まるずっと前、具体的には二年くらい前から世界各地でリーマンショック以前のグローバル化に逆行するブロック化は勢いを増してきており、北欧やフランスでの移民排斥運動は前から盛んになり始めてて因果関係がまるで逆です。世界がそのようにブロック化へ突き進んでいったのがこの八年ですが、この八年に米国大統領としてほぼ一貫として国際協調路線をオバマ大統領は取り続けていました。

 面倒くさいですが一応その根拠と言うか国際協調路線と言える行動を挙げるとTPP推進、イラクやアフガニスタンからの段階的撤兵、キューバ訪問、冷戦末期以来の核兵器削減などで、細かい点を挙げればもっといくらでも出てくるでしょう。先にも言った通りにこの八年間、世界はほぼ一貫してブロック化の流れを突き進みましたがその中でオバマ大統領は協調路線を崩さず、仮に彼が逆の立場だったら世界のブロック化の程度はもっと激しかっただろうと私は考えます。
 もっともそうした協調路線が外交上で成功したとは必ずしも言い切れないところがあり、一番大きな失敗はイラクからの撤兵を急いだあまりISISをのさばらせたこと、次にシリアでの内戦激化で、ロシアのウクライナ割譲はまぁプーチンが上手だっただけでオバマ大統領のせいとは言い切れないでしょう。

 上記に上げた外交政策の中で唯一私が全く分からないのはシリア内戦への介入です。基本的には国際協調路線を取りわざわざ広島に訪問してくるなど反戦思想も強い人間であるにもかかわらず、シリアのアサド政権に対しては初めから強硬な態度を取り続け、中国やロシアの反対で実現こそしなかったものの国連で多国籍軍を組織してまでも攻撃を仕掛けようとしていました。一体何故オバマ大統領はシリアにだけはこれほど強硬だったのかがその背景が全く分からず、また日系メディアもその辺をきちんと分析したり解説しないので私の手元にすら全く情報がありません。オバマ大統領のそれまでの姿勢を考えると明らかに逸脱した行動であるにもかかわらず、所詮は遠く離れた中東の事情は日本人にとっては関心が薄いのかもしれません。

 外交の話ばかりしてきましたがオバマ大統領個人の資質に関してもやはり傑出していたと私は考えています。特に優れているのは演説で、就任時や最初の大統領選時の「Yes, we can!」を筆頭にどこでもいつでも見事な演説で、プレゼンに対し比較的厳しい見方を持つ米国人ですらオバマ大統領に対しては手放しで誉めるくらいです。先の広島訪問時の演説も自らが起草したそうですが一言一句に至るまで非常に丁寧でしっかりした作りであるだけに、地頭の良さを強く感じさせられます。

 しかしそうした能力が在任中に生かされたかとなると判断はやや難しく、こと内政に関しては発足当初からの念願であった国民皆保険制度、通称オバマケアの実現は不完全に終わり、トランプ次期大統領も就任後は廃案にすると述べていることから事実上、未達成に終わりました。
 それ以外の面でも米国内の経済についてなりふり構わない金利政策を取り、就任当初はリーマンショックの影響もあったとはいえなかなか好転しない経済に批判も多かったです。もっとも現状において米国経済は比較的安定しているので、政権の経済運営能力は決して低くなかったと私は見ていますが。

 エネルギー政策に関しては専門外のため適当なことしか言えませんが、米国に限らず世界全体でここ数年は主役の変動が激しく、具体的に述べると今年においてシェールガスに関する大きな報道を私は一度も見ませんでした。実際、シェール関連業者の破綻が米国内で相次いでおり、バイオエタノールみたいに一過性の存在で終わってしまうんじゃないかと今考えています。っていうかここでシェールガスを思い出せるだけでも自分はそこそこしっかりしてるなとすら思えてきますが、変動が激しかった分、米国も一貫した政策が取れずどちらかと言えば自国利益よりも対ロシアの嫌がらせに原油価格を動かしてきた、っていうか米露関係で原油価格がずっと動いていたような気もしないでもありません。

 軍事面についても触れるとくと、基本はハト派であったもののビンラディンの暗殺を達成したり、ドローンに代表される無人兵器の活用を広げたりと黒い面も見ようと思えばいっぱい出てきます。後者の無人兵器については映画の「キャプテンアメリカ2 ウィンターソルジャー」でも暗に揶揄されていますが、彼がただのハト派なだけではないということを示す大きな指標と言えるでしょう。

 アジア政策に関しては民主党出身であることから対日関係はブッシュ政権時より冷え込むと当初は予想されたものの、さすがに小泉×ブッシュ時の関係を築くまでには至らなかったとはいえ案外対日政策はそれほど冷遇されてはいなかった気がします。むしろ在任中、中国との通商問題や人権問題が両国間で槍玉に上がることが多く、北朝鮮問題も絡んでオバマ大統領は国内をなだめる火消しに忙しかったような印象を受けます。そう考えると次のトランプ政権では米中関係は恐らくですが今よりずっと先鋭化する可能性が高いように思えてくるわけです。

 以上が私のオバマ大統領評ですが、やはり前任のブッシュ、前々任のクリントンと比べても優秀な大統領だったように思え、黒人初の大統領という点でも十分歴史に残る人間だと思います。ただ個人的に可哀相だったのは同じ時代にロシアのプーチン大統領がおり、ウクライナやシリア問題では完全に相手のペースに乗せられてしまったということで、一矢を報いようという意思は感じたものの、原油価格でのチョーク攻撃は退任が近くなったこともあり先週に終わりを迎えてしまいました。
 逆に考えればオバマが去った後、プーチンが国際政治で更に無双状態になる可能性もあるということです。その辺は次のトランプ政権によりますが、外交力で考えるとオバマ大統領は比較的掲げる旗が国際協調ではっきりしていた分、次の政権はやや厳しくなるのではと個人的に思います。

 今週クソ忙しいからブログ書くのやめようかと思ったけど、政治ネタなだけに何も前準備なしにここまで書いてしまう当たり自分がよくわかりません。

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