今日日本に帰国する前の知人と合流して一緒に昼食食べた際、前に自分が書いた記事を紹介したら以前にその知人も読んでいて、「こういう記事あるよ」とほかの人にも見せていたそうです。こうしたことは何もこの時だけでなく、他にも自分が書いた記事を見せたら、「あ、これ前に読んだ」と言われることが多いです。
何度かこのブログににも書いていますが私がライターとしてのキャリアをスタートしたのは上海の新聞社に20代後半の頃に入社した時からで、今はそことは全く関係ない会社で全く関係ない仕事(ついでに言うと派遣とも何も関係ない)をしつつ、周囲から依頼される度に中国関連の記事を書いています。少なくとも大手新聞社の記者よりかはよく取材もしているし独自の視点で切り込んだ中国記事が書けているようにも思え、端的に言ってもアルバイトでやっているにもかかわらず本職の彼らよりいい記事をいくらでも書く自信があります。ただこれは自分が実力があるというよりかは、あまりにも国際報道関連の記者のレベルが低いということに尽きますが。
その国際報道についてですが、その報道や取材の仕方、また視点や記事の立て方については上記の上海の新聞社でみっちり指導してもらえました。どれくらい指導してもらったかというと、正直言って在籍時は常に怒られていたという記憶しかないほどで、ほぼ毎日怒鳴られていたこともあって自分が誰かを脅す際は、「あの上司に似てきたな」と怒鳴り方に共通性を覚えてしまうくらいみっちり指導されました。
そんな職場なもんだから基本的に誉められることなんてほぼ皆無だったのですが、ほんの一回だけ、ちょうど香港の長期出張を経て上海支局に復帰した際、自分の方でまとめた独自トップ記事を提出した所その上司から、「あの記事内容は今まで全然知らなかった。お前もいい記事書くようになったじゃないか」と手放しで誉められたのですが、あまりにも誉められることがなかっただけに言葉通りには全く信じられず、「俺、このあとどれだけ持ち上げて落とされるんだろうか……」と、在籍期間中で最も戦々恐々とする羽目となりました。多分あの時、誇張ではなく顔色は真っ青になっていた気がします。
しかし、やはりああした厳しい指導は今現在も非常に生きており、逆に今ああした怒鳴ったりして記事内容を叱るような人がいないのは自分にとってマイナスではないかとすら思います。取材の聞き方が悪いというかリードの書き方が悪いとか、確認するポイントが違うとか盛り込む追加情報の下調べが足りないとか、こうした指導がないのが寂しいとすら思います。恐らくこのところ私が外部媒体で出す記事に対してもあの頃の上司たちからすれば、「ここの視点が欠けている!」と怒鳴られるだけで誉められることはまずないでしょう。
基本的に記事というものは完成することはありません。どれだけ丹念な取材をしてどれだけ丁寧に記事を書いたとしても、万人が認める様な寸分の隙のないエクセレントな記事が完成することはなく、しらみつぶしに探せば必ずどこかしらに穴があります。だからこそ周囲の人間が気づく範囲で、「この内容も盛り込むべきだ」とか、「表現をもっと変えるべきだ」などと指摘する必要があり、そしてそれらを修正した上で、さらに次の記事に生かしていく絶え間ない努力がライターには必要です。
だからこそ、このところ自分の記事にああした厳しい指導をしてくれる人間がいないことにやや不安を覚えることが多いです。正直言って怒られている間は、「なんでここまで言われなあかんねん……」と思ったり、病気で血圧上がったら大変だからいちいち怒らせるなという上司に対して、「だったら毎夜飲み歩くのをまずやめろよ」と腹の中で何度も思いましたが、間違いなく自分の実力を高めるために言ってくれているのは間違いないと信じ、言い返したことはありませんでした。もっともその上司からは、「お前ほどいうこと聞かない部下は初めてだったよ」とも言われましたが。
自分のライターとしての実力がどの程度なのかは自分自身ではそうそうわかるものではないものの、仮にほかのライターより優れている点があるとしたら間違いなくあのころの上司たちの指導の賜物であると断言できます。なので今後ライターを目指す人たちに対して言いたいこととしては、なるべく優しい編集長ではなく濃い編集長に付いた方がいいです。
いいところも悪い所も一緒に学べるし、何よりマスコミ業界は他人を平気で脅したり泣かしたりする度胸と根性が必要で、殴ったり蹴ったりは駄目ですが、物くらいなら投げたり投げ返したりする胆力も求められます。そうした心構えと気概を学ぶ上でも、たとえ「この人頭おかしいだろ」と思ったとしてもその頭のおかしい業界に身を置いていることを自覚して、怒られ慣れることから始めるべきだというのが自分のライターとしての経験則です。
わしのライフヒストリーを書いてみてください。
返信削除自分で書けや。訓練は受け取るやろ。
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