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2017年2月11日土曜日

派遣マージン率記事取材の舞台裏~マイナビ編

人材派遣会社の派遣マージン率を調べてみた(JBpress)

 知ってる人には早いですが先月にこのブログでも記事書いたマージン率記事をJBpressさんの方でも出してもらいました。ただこちらは「派遣マージン率とは何ぞや」という最初の説明からしたため、記事全体であまり尖がった主張が出来ず自分としてもうまく書き切れなかったとやや反省しています。
 ただこちらの記事ではブログ記事とは違って、マージン率を未だにサイト上で公開していなかったマイナビ、そしてライクスタッフィングに対する取材内容を掲載しております。取材で得た内容については直接記事を見てもらえばいいですが、今回はその時の取材の舞台裏というか両社がどういった対応だったのかと合わせて企業広報のあるべき姿、それと普段の経済部記者のお仕事を軽くレポートします。両方一緒に書くとしんどいので、今日はマイナビです。

 マイナビには一月中旬、サイト上で「広報部」と表記のある電話番号へ直接国際電話をかけました。でてきたのは女性の担当者で、自分は派遣会社のマージン率を調べているのだが、マイナビはガイドラインに反してサイト上に情報を公開してないがこれはどういう意図なのかと直接問いただしました。すると向こうの回答は、

「誠にお手数ですが、メールにてご質問いただけないでしょうか」

 っていう内容でした。この回答に対して私はすぐにはいわかりましたとは言わず、現時点で法律に対しマイナビが明確に違反していると指摘した上で、何も難しい事聞いてるわけじゃないんだから今ここで答えられるはずだと言い、あくまでその場での回答を求めました。ついでに、前年一月にメールでマージン率の開示を要求したにもかかわらず返信を寄越さなかった件についても触れ、「メールで聞けと言いながらあんたらはこちらの問い合わせに対して返信すらよこさなかったじゃないか。言われた通りにメールで質問してあんたらがきちんと回答してくれる保証はないどころか、回答をしなかった前科があるんだぞ」と述べ、今ここで答えるように再度要求しました。

 少し声のテンションを上げたこともあって向こうも警戒感を強めたのが、「少々お待ちください」といって一旦電話から離れました。恐らくはほかの広報の人間と相談をしていたのだと思いますがしばらくたって戻ってきたところ、「誠に申し訳ありませんが、株価などにも影響するような取材に対してはメールでしか質問、回答を承ってないため、やはりメールでご質問いただけないでしょうか」とオウムの如く同じこと言ってきました。

 多分普通の人からしたらそう感じるほどでもないでしょうが、企業広報がこうした回答して来たら記者は真面目に激怒しても許されます。というのも株式非上場企業であればともかく、上場企業は経営に関する情報を常にできる限り公開するという義務があり、私のこの時のマージン率に関する質問は法規違反にも関わるため公益性も確実に備えていました。そもそも、広報というのはあらゆる質問に対して即座に対応、回答するための部署であり、その業務はそれ以外でもそれ以上でもありません。

 ってこともあり、っていうか企業取材で私はむしろ優しい方でめったに怒ることもなければ怒鳴ることもなく、新聞社時代の上司からは「お前は甘すぎるんだよっ!」って具合で自分が怒鳴られていたほどでした。そんな自分にしても、上記のマイナビの回答はさすがにカチンと来て、こういいかえしたわけです。

「メールで回答するったってだったらなんであんたら広報部として仕事してるんだ。質問にその場で答えられないってんなら電話番号なんて置く必要もなければ、あんたら広報なんて部署の人間だっていらないだろ!」

 という具合で、怒鳴るほどではなかったもののかなり声を大きくして強く言いました。あくまで心優しいと自負する私からしても上記のマイナビの対応ははっきり言って許せず、また広報としては明らかに致命的で、リスクの高いというか訓練のできてない広報だと感じました。

 たとえ即座に答えられない質問が来たとしても、広報は何かしらの回答を記者に行わなければなりません。この場合の模範解答としては、「誠に申し訳ありませんが、回答を準備させていただけないでしょうか」と述べ、その日中に折り返しの電話で回答するというやり方で、実際にほかの大半の会社はこのような回答を取ることが多いです。この場合記者は入稿締め切り時間などを勘案して、何時までに回答を寄越すよう伝えて第1ラウンド終了となるわけです。
 もう一つの模範的な広報の対応としては、何かしらの情報をお土産として記者に持たせるやりかたです。記者としては原稿を書くための情報が必要なのであり、それは完璧な情報に限るわけじゃありません。たとえ断片的であっても、部分的な回答であってもそうした情報があれば記者はある程度記事が書けるわけで、上司に対しても、「核心は濁しましたが、粘った甲斐あってこの情報は引き出せました」と成果を報告できます。逆を言えば、回答は後でと言われて何も情報を得られなければ記者としても大変なわけで、上司に何も報告できなければ「てめぇもう一回電話かけろ!」って逆に怒られてしまうため、なんでもいいから少しでも情報を出してくれると記者としても引きさがりようがあるわけです。

 しかし上記のマイナビの対応はこのどちらも出来ておらず、ましてやマージン率に関する情報なんて模範解答を準備してたっていいと思うような内容だと思えるだけに、取材している私としてもこの程度で回答渋るなんてなんて情けない広報だと思って呆れました。なもんだから更にまくしたてて、

「私が今聞いているのは法律順守に関する問題なんだからすぐ答えられない方がおかしい。おたく規模の会社なら法務部だってあるだろうし、なんだったらそっちに今すぐつなげろ!」

 と要求しましたが、「申し訳ありません」というだけで繋げてもらえませんでした。真面目にあの時法務部の電話番号をなんとしてでも要求してもよかった気がします。
 ただ、やっぱり鬼になりきれない性格もあって、「メールなら即日で返事くれるんだよな」といって最後にはこちらが折れました。そしたら「最高でも二営業日以内に返事します」と返ってきて、本当にここの広報部はレベル低い、それこそプロの経済記者が取材に来たら本気で泣かされるぞと心の中で思いました。でもってメールで質問出して返事来たのは三営業日経ってからだし。

 そのメールの文面も色々と呆れました。この回答についてはJBpressの記事でも書いてある通りに事業分社化に伴い人材派遣業務を担うマイナビスタッフィングで今、公開の準備をしているっていう回答だったのですが、私は質問に出したメールで「何故マージン率を公開していないのか?」ということと、「何故前年の私の公開要求メールを無視したのか?」という二つの質問を聞いていたのですが、後者の方は完全に無視してきました
 これには本気でマジ切れして、「もう一つの質問を完全に無視してるがきちんと答えろ。明後日までに返事寄越さなかったらまた電話かける。覚悟しておけ」っていうような文面で再度メールを出しました。そしたらその二日後のまさに電話をかける直前に返事が来たわけです。

 その返事としては問い合わせのメールを確認できず、また前任者もいなくなっているため追跡できないというものでした。ある程度は予想していた内容なのでこれはこれで私も納得しましたが、追加した質問で、「これまでのマージン率公開請求にはどう対応してきたのか?」という質問については、

「これまで公開請求は一切受けていません」

 という返事で、「ほんまかいな。っていうか俺が請求したっつってるというのにこんな回答の仕方すんのかよ」と、やや消化不良な印象を覚えました。

 既に何度も書いていますが、このマイナビ広報部に関してははっきり言って非常にレベルが低いという印象しか覚えません。やはり取材していて手ごわいという広報部は会社によってはあり、企業によってその実力差ははっきりと出るのですがマイナビに関しては最低限の対応の仕方すらできず、またリスクに対しても非常に脆い部分があるので将来何かやらかすんじゃないかという懸念すら私は覚えました。

 なお、これまで相手した企業広報で手ごわかった広報部を挙げると以下の通りです。

一位、旧みずほコーポレート銀行:完全に手の平で弄ばされた。
二位、トヨタ自動車:官僚的な対応で、隙が一切見当たらなかった。
三位、DeNA:広報担当者が全業務、情報をきちんと把握しており、よどみなく明確に回答出来る人だった。

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