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2017年6月20日火曜日

中国都市部における地方出身者への差別事情

 先日、コメント欄にて以下の質問を受けましたので今日は中国の都市部における地方出身者への差別事情について紹介します。結論から言うと、差別は確かに存在するものの、日本人が想像するよりはひどくはないといったところです。

<質問>
「中国都市部の他民族性(注:恐らく「多民族性」)について、ちょっとお伺いしたいと思います。
『中華』の称号を持たない出稼ぎ組との、極端な差別は本当にあるのでしょうか?
彼らは「国歌」を歌わないというウワサなど、今さらながらの愚問ですが、
改めてお伺いしたいと思います。機会ありましたら一筆お願いいたしたく存じます。」
<終了>

 まず都市部で差別される対象についてその定義をはっきりしますが、これは都市部へ出稼ぎにやってきた地方出身者であって少数民族ではありません。中国では満州族、朝鮮族、回族、苗族をはじめとして非常に多くの少数民族が存在しその系統については戸籍ではっきりと管理されており彼ら自身も自覚がありますが、こうした少数民族への直接的な差別というのは些細なものはあれども社会問題となるようなレベルではなく、米国の黒人差別に比べれば取るに足らないレベルです。むしろ少数民族は民族維持のため前まで続いていた一人っ子政策の対象外となるなど社会的な優遇策も受けており、貧富の差でいえばそりゃ漢族の方が圧倒的に豊かですが、その間族同士でも貧富の差が大きいので少数民族が特別差別されているようには私には思えません。

 唯一例外と言えるのはウイグル人で、彼らに関しては都市部に住む漢族は明確に差別意識を持っております。実際の統計を見たわけではないのでわかりませんが漢族はウイグル人には犯罪者が多いと考える人間が多いというかほぼ全員信じ切っており、街中で歩いていてウイグル人を見つけるや大げさに鞄を抱えたりして盗まれないような仕草を見せます。
 ただこうして差別されているウイグル人ですが、都市部ではラーメン屋を経営するなど常住している人も少なくなく、料理はものすごい安いものの店内は非常に汚く如何にも貧しそうなのですが、店の裏に回るとマジでベンツがおいてあったりすることもあり、薄利多売ながらも意外に金持ちが多いという話もよく聞きます。こういうところが中国はいつもながら不思議だ。

 話は戻りますが少数民族に関しては上記のウイグル人を除きそれほど目立った差別はありませんが、定義を「地方出身者」とするなら差別は確実にあります。子供の教育や年金、医療といった行政サービスが都市部では受けられないということはもちろんのこと、地方出身者が多く集まる場所にはあまり近づかなかったり、彼らのことを汚いとか臭いなどと陰口を言います。
 ただ、都市部住民がこのように地方出身者を差別することについて、いくらかは仕方ないと私には思います。

 というのも地方出身者は基本的に都市部の人たちと比べて洗練されていないというか基本的なマナー意識が欠如していることが多く、大勢でぞろぞろ歩きながら路上に平気でごみやたばこを捨てたり、場所や時間をわきまえず非常に大きな声でしゃべったり、夜中に騒いだりなんていうのは日常茶飯事です。また部屋の賃貸に関しても、中国人全体で日本人と比べると借りた部屋を粗末に扱いますが、地方出身者の場合は特にその程度が激しく家具や壁などを破壊したりなんていうことすらままあるそうです。そのため大家としては、同じ家賃なら割とマナーのいい日本人とかに貸したがるということがあり、実際に私の友人は私の部屋探しの際に、「日本人が借りるんだからもっと家賃をまけろ」という交渉をしました。

 こうした地方出身者のマナーや振る舞いの悪さは我々日本人から見ても怪訝なものに映り、以前に地方出身者も多くやってくる上海の観光地に後輩を連れてきたところ、粗暴なふるまいを続ける地方出身者たち(方言ですぐわかる)を見てその後輩は、「別に僕は上海人じゃないけど、あいつらに街を汚されているような気がして腹立ちますね」という感想を述べ、私も全く同じ感想でした。
 なおその後輩は当時中国の地方に留学していたところ上海へ初めてやってきたもんだから、朝ホテルを出る時に、「花園さん、さっきホテルのボーイに荷物預けたら僕にニコっと笑ってくれましたよ!」とマジで驚いていました。変な話ですが、それだけ地方と都市部でマナーや価値観、サービス精神で差があるということです。

 こうした中国の都市部住民が見る地方出身者への見方は、言い換えるなら日本人が日本にやってくる中国人旅行者を見る目とほぼ同じだと思います。さらに言えば、バブル期に欧米人が見ていた自国に旅行へやってくる日本人を見ていた目も同じだったことでしょう。要は価値観や意識のレベル差であり、属性による差別ではなく文化度の差であるというのが私の見方です。なので地方出身者であってもマナーが良い人には、最初は警戒されるかもしれないものの、それほど差別されたりすることはないんじゃないかと思います。

 もう一つ付け加えておくと、都市と地方(農村)の収入格差は未だに大きいものの、十年前と比べれば確実にその差は縮まってきているように思います。ちょうど明日JBpressに掲載される私の記事でも収入差についてグラフを引用していますが、昔は貴族と奴隷くらいな差があったものの、今だと地方でも仕事が見つかるようになってきており、無理して沿岸部の大都市に出ず近くの都市への近距離出稼ぎ者も増えていると聞きます。

 最後に「国歌」に関してですが、そもそも中国人自体がそれほど国歌を意識せず歌うこともほとんどないため、たぶん中国人に聞いても「何それ?」という感じで関心ないと思います。国家への帰属意識については多分韓国、下手すりゃ日本よりも低く、むしろ中国が嫌いだから(地方出身者に多い)といって国外へ留学する人もいるくらいです。自分も大体わかってきましたが、中国人で愛国を叫ぶ人間は大抵は面従腹背で、国家のことなんて何にも意識ないからこそ国を言い訳にして破壊活動をしてるような奴ばっかです。

4 件のコメント:

  1. JBpressの中国の若者に関する記事、楽しく読ませて頂きました。

    あくまで都市部の日本語学習者という狭い観測範囲になってしまいますが、中国の若者については国家への帰属意識は人それぞれかな、と思います。

    知り合いの中には「日本の永住権取ったるわ」という人もいれば自分の田舎が工業排水によって汚された事を嘆いてる人も居ますし、旧日本軍がどうたらこうたらと持論をぶつ人も居ました。

    あと党員の学生たちは真面目な人が多いイメージです。

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    1.  JBpressの記事ともども読んでくれてありがとうございます。記事に載せたデータはどれも一見の価値があるものの、記事全体としてはまとまり性をかけとっ散らかった内容なって反省してます。
       ついでにこの記事においても、日本人が思うほど中国人に愛国心がないことを強調しようと思ったあまり、やや強く書きすぎたなとも思います。おっしゃるとおりに個々人によってこの方面の意識は変わり、素直に国のことを思う中国人もいるのでもう少しちゃんと書けばよかったです。

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  2. 早速取り上げていただき誠にありがとうございます。
    なるほど、なんだかんだ言いながら結構したたかに、
    そして逞しく生き抜こうとしている地方出身者の人達の
    人となりがよくわかりました。
    先月、同僚の妻(福建省出身)の両親が日本にやってきたとき、
    成田の税関で「中国語」で書かれた入国カードに、
    「北京語」がわからない上読み書きそのものが、
    よくできず「書けない」ということで、
    ちょっとした騒動に発展、
    急遽、館内放送で同僚夫妻が呼び出され、
    なんとか事なきを得たなんてことがあったとのこと。
    今さらながら改めて中国の広さというか、
    他民族国家だったことを知った次第でして、、
    まぁ裏取りというわけではないのですが(笑)
    念のため花園さんに伺った次第です。
    大変参考になりました。
    最近、「中国」あるいは「中国系」の卓球選手の
    出身地を確認して卓球の試合を観るようにしています。
    こうした他民族性が分かるようになると、
    なかなか面白いんですよね。
    奥深い中国ネタ今後も宜しくお願い致します。
    お忙しいところ一筆いただいき有難うございました。
    m(__)m



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    1.  いえいえ、こちらこそいいネタ振りありがとうございました。
       日本でも県民性こと都道府県の違いが話題になりますが、中国の場合だと出身地方の違いは日本よりも激しく、趣味習慣だけでなく言語まで変わるだけに、プラスに見ればやはり面白い国です。また日本よりもそうした方面の寛容性も広く、無理に同じ価値観を共有しない点で多様性も確保されています。
       ただ、外国人の自分からすると習った中国語が通じなかったりするので、不便な点もあったりします。とはいえおっしゃられている通り卓球選手の出身地方などを比較すると顔つきなどにも特徴あるので面白いですよ。
       なお、福建省出身者についてはよく同僚と、「あいつらみんなマフィアやろ」と言っています。半分誇張ですが、実際マフィアが多い地域です。

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コメント、ありがとうございます。今後とも陽月秘話をよろしくお願いします。

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