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2017年12月30日土曜日

アイドル会計論 その一、資産種類

 ある日勤務中、「アイドル育成時のレッスン料などを設備投資や研究開発投資みたく償却できないのかな?」とふと思い、アイドルを資産と見立てた会計論が気になって仕方なくなりました。

 私がここで説明するまでもなく、巷間のアイドルというのは渋谷でスカウトされていきなり世に出てくるというわけではなく、実際の圧倒的大多数はスカウト後、長きにわたり演技やダンスレッスンを受け、一定の養成がなされた後で売り出されます。ある意味これは投資と言ってもよく、売れるかどうかわからない対象であるアイドルの卵に多額の資金を投資して、いざ実際にデビューしてからその投資資金を回収した上でリターンを得るというビジネスモデルです。
 仮に投資対象がアイドルではなく有形/無形資産であれば、そのキャッシュフローが得られるまでの投資段階にかかった費用は減価償却/償却といって、あらかじめ定めた期間内、実質複数年度にわたって少しずつ計上していくことで、税効果といって納税額を減少、調整させることが出来ます。アイドルも特許などの研究開発資産みたくリターンを得るまでに長い年数が必要になるのではないかと思え、それならば償却を認めるような会計処理があってもいいと思ったわけです。

 そもそもまず、償却を行うというのであればまず資産として認定するか否かが重要になってきます。そこで最初に審議する上で、「アイドルは資産なのか?」という疑問が出てくるわけです。
 資産の定義について細かく書くと非常に細かくなりますが、ごく単純にまとめるなら以下の二点に集約されると私は考えます。

・それ自体が価値を持ち、有償で取引される。
・運用、活用されることによって新たな利益(キャッシュフロー)を生む。

 具体的なイメージとしては農業における土地が分かりやすく、売買可能でありながら、土地を使って栽培することによって農作物という商品が作れ、販売することによって利益を生み出せるといった具合です。
 この定義をアイドルに照らすと、まさに資産じゃんと私は言いたくなりました。移籍金が支払われての事務所の移籍なんか当然あるし、また投資、育成することによって無から有を生むかの如く利益を作っていきます。事務所の観点から見て、アイドルは商品というよりは継続して運用されることから資産の方がより適切でしょう。

 以上のような脈絡のない考えに従ってアイドルは資産だとすると、次にもたげてくる疑問としては「有形資産なのか無形資産なのか?」です。地味だけど非常に重要。

 有形資産とは読んで字の如く実体が存在する資産のことで、先ほどの土地や工作機械といった設備、あと不動産などの建物もこれに属します。一方、無形資産は特許や商標など実体がないものの、所有者や許諾者に運用が独占された上で利益を生み出す資産を指しています。
 バーチャルアイドル(最近減ったな)なんかは実体ないんだから無形資産かもしれませんけど、現実に存在するアイドルはみんなの前で歌ったり踊ったりもすれば、プライベートでスキャンダルを起こしたりすることもあるので、普通に考えれば有形資産で間違いなしでしょう。また工作機械といった設備のように、整形や豊胸などの改造手術によって性能や耐用年数をアップグレードすることも実質可能で、こうした諸条件を考えるとやはり有形資産かなと当初は思いました。

 しかしデビュー後の運用を考えたところ、有形資産で行くという考え方にブレーキがかかりました。実際のアイドルの収益獲得方法を考慮すると、コンサートで歌って踊ってチケット代を稼ぐのなんかは確かに工作機械で製品作るかのような運用に近いと思いますが、実際のアイドルの収入はイメージ販売に負うところの方が多いような気がします。
 具体的にはCMなどのイメージキャラクターやグッズの販売です。これらはアイドル本人がその場にいなくてもどんどん売り上げが上がっていくシステムとなっており、またこうした販売はほぼすべて「イメージの使用許諾契約」を経て実行されるため、商流としては特許や商標の権利使用許諾に近い、というか実質同じものです。
 また「アイドル」という言葉自体が「偶像」という言葉からきており、「イメージを売る」という意味が内包されています。会計的、特に償却などを考える場合は収益の獲得プロセスの方が重視される傾向があり、また工作機械と違ってアイドルは稼働時間によって減価償却できるかと言ったらなんかそれも違うように思え、やはり無形資産のように一定の使用期間にわたって定額法とかで徐々に償却していく方が無難な気がしてきます。

 結論を述べると、どっちかと言えばアイドルは無形資産に属すのではないかと思います。一方、その存在の実体性や投資過程、稼働後の追加投資(豊胸、整形)の観点から言えば有形資産に近く、有形資産的要素も含む無形資産というのが私の見解です。
 なおアイドルが事故などで骨折した際の治療費は、工作機械の故障時の修理費みたいに費用として処理するのかななどと考えた際、「完全にアイドルを物扱いしているな」と自ら自分をツッコミました。

2 件のコメント:

  1. 私はアイドルを教義無き宗教のようなものと捉えています。宗教は、絶対的なカリスマを持つ教祖と、教祖が正当とする教義で構成されています。オウム真理教は麻原彰晃逮捕後、麻原個人へ帰依するアレフと、上祐史浩を指導者とするオウムの教義を重んじるひかりの輪の二つの組織に分裂しました。
    教祖健在の宗教組織は教祖個人への信仰と教義への信仰が自然と一致しますが、教祖の死後多くの宗教が分裂するのはこの二つへの信仰が信者の間で一致しなくなる事が多くの元凶となっているように思われます。その宗教が発展する過渡期に、教義への解釈を巡って分派することもあります。

    アイドルについてコメントしようとしたのに宗教への持論を語ってしまいましたが、アイドルには教義への信仰が無いため宗教足り得ないとします。しかし現実には、アイドルに興味がなかったはずの老若男女多くの人間がアイドルに魅了されています。この伝播性は宗教的に見えますが、アイドルは宗教に取って代わるものではないと結論付けます。

    アイドルが魅力を獲得する過程について考察してみます。私はアイドルのエピソードというストーリー性がアイドルの付加価値を高めると思っています。アイドル本人の美貌や人格に魅了されるファン同士の共感は、それまででしかありませんが、アイドルの生い立ちやイベント等に纏わるエピソード、列伝はファンの間で共有され、人間性として評価されます。こうして初めて多くの人間に認知され、伝わっていくのではないでしょうか。

    アイドルの運営者は、アイドル個人の信仰を集めるためには、個人の性能を高めること(整形など物的なメンテナンス)のみに注力すべきでなく、アイドルのエピソードを生産し続けることが重要であると主張します。

    最近ヴァーチャルユーチューバーというものが趨勢を誇っておりますが、彼らの中には個人で運営している者もおります。そして彼らの人気は3Dモデルの出来の良さを基とし、そのモデルが生み出すエピソードとストーリー性が話題となって支えられています。

    キャラクター人気とエピソードの関係について、荒木飛呂彦著の『荒木飛呂彦の漫画術』を参考に意見致しました。アイドルは資産ですが創作のキャラクターでもあります。

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    1.  アイドルにストーリーが必要というのは間違いありませんね。自分もアイドルマスターは演じる声優らのエピソード聞いてからハマって、こんな記事書くに至りましたし。
       アイドルと教祖の関係についてですが、宗教というよりかは「カリスマ」という言葉を使った方が適切かもしれません。オウムと光の環についても、上祐氏という別のカリスマが存在したことが分裂としては大きいように気がします。
       それにしてもオウム真理教の事件以降は日本であまり宗教学が語られなくなって、この点については残念です。夏くらいにその辺で一本何か記事書こうかなと、一応今準備中です。

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コメント、ありがとうございます。今後とも陽月秘話をよろしくお願いします。

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