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2017年12月5日火曜日

中国の格差の実体~都市住民と農民

 数年ぶりかと思うくらいに体調が悪化し、昨日一昨日の丸二日間ずっと布団に寝込んでいました。風邪薬飲んでも効かなかったのに、寝すぎて頭痛くなったから飲んだ頭痛薬飲んだらすぐ治ったのがマジ不思議。

 そんなんでまだ体力ないまま続けると、中国の格差といって一般的にこれが指すものは都市住民と農民の格差でしょう。知ってる人には早いですが、中国の戸籍では出身地や民族を区別するほか、その人が「都市住民」か「農民」かをも定義しています。当然、何方に所属するかでその社会的な地位や役割は異なってくるわけで、農民戸籍の人は都市部に正式に定住することは認められないほか、農業的な義務もいろいろ持たされ、言い方を変えればかなりの面で土地に縛られた人生を要求されることになります。

 言うまでもなく、消費生活においては都市住民の方が有利です。安定した現金収入が得られるほか都市の運営する社会サービスや福祉も享受でき、また大学受験においても地元都市であれば優遇が得られます。一方、農民戸籍であれば以上の優遇はなく、また農作物を生産することから食うには困らないものの現金収入はほとんど得られず、この境遇から抜け出そうと思っても自力で商売を始めることもできず脱出することもなかなか適いません。

 そもそも一体何故中国はこのように都市と農村で戸籍を分けたのかというと、一言で言えば食糧生産量を確保するため、もう一つとしては都市部へ無尽蔵に人口が流入するのを避けるためです。このため、実質移動の自由を国民から奪い、ほぼ身分制のような二大戸籍区分を作ったわけです。
 この農村戸籍からの脱出方法として一番メジャーだったのは、やはり大学進学でした。学業によって大学に合格し、卒業時に都市部にある企業に就職内定を得られればそのまま都市戸籍への変更が行えました。逆に、大学卒業時に就職を果たせないと戸籍は元の農村戸籍のままなので、実家に送り返される羽目となるわけです。

 このように社会上で様々な制限を受ける中国の農民ですが、現実には都市部には農村から来た出稼ぎ農民が大量にいて、彼らの労働力なくしては都市部経済糊塗3K労働は何も回りません。これは一体何故かというと、現状の規定ではあくまで「定住」がダメということで、普通に賃貸借りて現地で働く分には制限がないためです。ただ、制限はないものの保障も支援もないわけで、就学年齢子弟がいても出稼ぎ先の都市部では一切就学支援が受けられないどころか、医療等でも保障はないため、幼い子供を農村に置きながら両親は都市部で出稼ぎをし続けるという光景も中国では決して珍しくはありません。
 先ほどにも書いた通りに農民は食うにはそれほど困らないものの、現実には資本主義な現代中国では現金収入がなければ生きていくには困難であり、また子供の就学などにもお金がいることから出稼ぎを余儀なくされます。

 以上がざっとした中国の農民の現状、と言いたいところですが、近年この状況に大きな変化が起きつつあります。
 あまり日系メディアは報じないものの、農村準民の都市戸籍への変更は以前に比べ大分緩和されました。何故かというと中国政府自身が食糧生産の維持よりも消費増加による市場拡大を図ってきているからです。農村住民と都市住民とでは年間消費額で大きな違いがあることから、農民を都市住民にすることで消費を拡大させようという考えの下でこうした措置が取られています。

 実際、一部地方では農民が希望さえすれば都市戸籍に変更できる上で、都市での一定の住居(詳細は調べていないが)等も提供された上で都市部で生活できるようになっているそうです。ただし、これらはあくまで一部都市での話であり、北京や上海といった大都市では戸籍を取るには依然と厳しい条件が課されています。
 また上記のような手続きを経て都市住民となったものの、定職が見つからず結局また別の大都市に行って出稼ぎを行う元農民というのも少なくないそうです。中国政府は現在も「都市化」をキーワードに都市住民の拡大を図っていますが、現実には様々な困難が起こっています。

 少しここで結論をまとめると、農民と都市住民の間には間違いなく未だに大きな格差があります。ただ、中国政府はこの格差の是正については非常に熱心であり実際に大量の資金を投入して対策を行ってきており、かつてと比べればこの格差は改善しつつあるのが私の見解です。現実に2011年に都市人口が農村人口を初めて逆転して以降、農村人口は減少する一方で都市人口は増加し続けています。
 まぁそしたらそしたで中国の食糧問題が気になるわけですが、そこは機械化に期待しましょう。

 私個人として気に入らないのは、よく日本の報道がかなり古い情報のままアップデートせずにこの都市と農村の格差を語ることが多いことです。現実にはすでに述べている通り確かに格差は未だ大きく開いてはいるものの、その差は確実に是正されつつあり、現実に10年前と今を比べたら驚くべきほどの改善ぶりです。しかし日系メディアはさっき上げた人口比率のデータどころか所得格差のデータ分析すら行わずに「絶望の中国農民」等と書き立てています。
 無論、格差は存在することは間違いないものの、是正されるつある現状、そして是正に努力する今の中国を語らないというのは何なんだという気がしてなりません。「ならば今すぐこの格差を是正してみろ」と某赤い彗星みたいなことを言う人もいるかもしれませんが、一瞬でなくなるものならそれは格差じゃありません。少しずつ埋めていかなければならないほど深刻だからこそ格差であり、それを埋めるための努力をしている人たちを、格差を見て見ぬふりして何も是正に動かない人たちが笑うのが自分には許せなかったから、今ここに自分はいるのだと思います。

4 件のコメント:

  1. 中国の格差は戸籍に拠るところが大きそうですね。都市と農村、都市間でも生まれの差で受けられる福祉まで違うのはけっこう衝撃です。
    先日のクローズアップ現代でベトナム人留学生の犯罪急増とその実態についての特集をみました。「日本に行けば稼げる」と言われたベトナムの若者が留学斡旋業者に借金をしてまでやって来ます、返済に困窮した若者が犯罪に手を染めるばかりか強要されることもあるそうです。そうした中で、ベトナム人留学生たちのセーフティネットのようなものを作った若者がいました。彼も帰化したベトナム人で、そうした苦労から同胞を黙って見過ごせないと行動したようです。
    格差をなくそうと行動に移すにはやはり格差に苦しめられた人でないと出来ないんだと思います。その若者は留学生たちの寄り合いを作っただけで資金援助などはしていない様子でしたが、それでも問題を放置する政府と問題を叫ぶだけのメディアと無関心の国民たちを動かそうとする気高い行動だと思います。
    国民の格差と国力の相関はないのかもしれないと意見させて頂きましたが、では広がり過ぎた格差が国家にどう害成すかと考えるに、国家を維持する人材が不足することが挙げられます。生まれながらに落ちこぼれた人はおそらく実力を蓄える機会すらないので犯罪の増加など社会を不安定にさせると思われます。そして人材が不足すれば社会全体で競争力が衰えるので生産性の低下、ひいては国力の低下につながるはずです。
    では逆に競争の激しい社会というのはどんな社会なのでしょうか。昔の中国の科挙の競争は熾烈なものでした。国家試験をパス出来なかった優秀な人たちが当時の国家に不満を抱いて、それが積もりに積もって国家転覆に繋がった歴史があると、私はそのように理解しています。リーマンショックでは、競争力を高め過ぎた果てに職場が疲弊して社員が去ってしまった企業の在り方も背景にあると思っています。
    つまりに何が言いたいのかというと、競争の激しすぎる社会も問題があるとしつつも、競争力を奪う格差もどげんかせんといかんということです。格差も匙加減の問題でしょうか?そもそも私の格差に対する理解も根拠も何もかも的外れかもしれませんが。

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    1.  また秀逸なコメントをいただき、ありがとうございます。
       格差を受けた当事者でないと是正に動けないという意見はまさにその通りでしょう。ベトナム人留学生のセーフティネットについては私も知りませんでしたが、確かに彼ら外国人留学生への対策も今後日本は求められてくるでしょうし、現時点で対応に動いている彼らの活動も重要なものでしょう。
       おっしゃられている通りに格差が激しすぎる社会が健全かと言えばそうではなく、社会不安も増して治安も悪くなっていくのが自然でしょう。一方、全く格差のない旧共産圏の社会が健全だったかと言えば現代の資本主義社会よりも不健全で、何よりも国家としての競争力が今の北朝鮮みたく大きく低下するのがオチでした。
       非常に難しいですが、格差というのはありすぎてもなさすぎても問題で、ではどれくらいの水準がいいのかとなると難しいところです。社会学でいうところの「機会の公平」か「結果の公平」のどちらが求められるかで、今の中国の場合はこの両方で政府が是正に動いています。一方、日本はやや結果の公平にこのところ重点を置くようになっているようにみえますが、私個人としては断然機会の公平に重点を置くべきだという立場を取ります。

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    2. 機会と結果の公平、二つの公平性の考えを初めて知り、私が問題にしていたのは正に機械の公平であったと気づかされました。社会学を学ぶべき時かもしれません。
      機会の公平の観点で今の日本社会を鑑みてみますと、職歴重視の風潮は非常に問題があると私は考えます。正社員として就職する上で『辞職歴』『空白期間』は大きな障害となります。こうした減点評価は妥当だと言えるでしょうか?私はこの減点方式の評価が日本の労働者を萎縮させ、一度の失敗でも許されない冷酷な風潮を作り出す諸悪の根源だと考えています。

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    3.  職歴に関しては電通や三菱電機など大手をはじめこれだけブラック企業が氾濫しているのに日系企業は無駄に退職履歴を気にするなとは思いますが、空白期間に関しては確かにやや開く人間には問題が多いということも事実であるだけに、一概には言い切れません。まぁそれを言ったら自分の履歴なんてかなり真っ黒で、今後は多分口利きかフリーじゃなきゃもう一般企業には就職できない身です。
       むしろ気になるのは、職種別採用をあまり日系企業はやらないという点で、面接時にも採用職種について説明せず、結果ミスマッチが起こりやすい点です。それと、採用者自身の能力が低く、応募者の能力を図れず見逃すパターンもありますが、ぱどをはじめ自分を落としたメディア企業の連中には自分以上のライターがいるというのなら出してみろと聞いてみたいものです。

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コメント、ありがとうございます。今後とも陽月秘話をよろしくお願いします。

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