なお「中二病」という単語は中国でも深く認知、浸透されており、そろそろ思春期の男子特有の精神疾患として国際学会とかで正式に病名として入れるべきだと思います。さらに言えば、自らの中二病体験をきちんと語れるようになって初めて男は一人前で、未だに過去を隠そうとするような奴は未熟者だとも思います。私の友人は中二病の際、「クーロンズゲート」というゲームの影響で風水師になろうと一時考えたそうです。
話は本題に入りますが、何故年末年始にかけてアイドルを資産扱いしたらどうなるのかというわけのわからない会計論を展開しているのか私にもわかりませんが、前回は「アイドルは資産なのか?」という命題について書きましたが、今回はある意味本題の「償却」の概念と方法について思いのたけを書いていきます。
そもそも償却とは何かですが、会計に関わった人間ならみんな分かってて当然であるもののいまいちよく知らない人に向けて説明すると、発生した費用を複数期間に分割して計上するという概念を指します。これによってどうなるのかというと、費用発生以降に得られる収益と時期を合わせることによって税効果(課税額の減少)が得られることになります。
なお不要かもしれませんが書いておくと、有形資産に対する費用分割を「減価償却」、無形資産に対する費用分割を「償却」と呼びます。英語だと減価償却は「depreciation」、償却は「amortization」なのですが、日本語だと言い方が似てるからややこしいです。
実際の運用についてモデルケースを一つ出すと、例えば取得時に一括で費用(100万円)を支払わなければならない無形資産によって、取得から5年間にかけて毎年20万円の収益(売上げ)が得られるとします。仮にこの無形資産の取得費用を取得した年度(第1年目)に一括計上するとこうなります。
取得費用を一括計上した場合
<第1年目>
・計上費用(経費):100万円
・収益(売上げ):20万円
・差し引き(純損益):-80万円
・法人税費用:0円
純損益が-80万円という赤字のため、この場合この会社は第1年目には法人税が課税されることはありません。しかし、第2年目になると、
<第2年目>
・収益(売上げ):20万円
・差し引き(純損益):20万円
・法人税費用:6.76万円
一方、費用を取得時に一括で計上するのではなく、そのリターンに合わせて5年間にわたり償却するとしたらどうなるのかが以下の表です。
取得費用を5年にわたり償却した場合
<第1年目>
・計上費用(償却費用):20万円
・収益(売上げ):20万円
・差し引き(純損益):0円
・法人税費用:0円
・計上費用(償却費用):20万円
・収益(売上げ):20万円
・差し引き(純損益):0円
・法人税費用:0円
このように毎年の売上げに相当する金額の償却費用(税控除額)を計上できるため、一括で計上する場合と違って2年目に6.76万円の法人税を支払わなくて済みます。これは実質、6.76万円の収入を得るも同然で、こうした帳簿上の節税メリットのことを税効果と呼びます。
前置きが長くなりましたが、アイドルとは前回にも書いた通りにいざ実際にデビューするまでには歌唱やダンスのレッスンや、プロモーションや売り込み活動を長きにわたり受け続けなければなりません。そうしたいわゆる初期投資費用を費用が発生するそばからいちいち計上していては、デビュー後に入ってくる収益と期間がどんどんずれていき、収益費用対応一致の原則から外れるだけでなく投資という観点から言っても不利です。
ならばどうするかということで、無形資産の研究開発プロジェクトのようにアイドルも償却したらこの辺のバランスが取れて、経営上も税制上も割かしすっとするのではないのかなと考えたのがそもそものきっかけでした。なお研究開発プロジェクトのこの辺の会計処理の違いでは、日本会計基準は中国や欧米と比べて非常に不利で、現状では日本国外で研究開発した方がメリットが高くなっています。後々、この差は大きくなってくるでしょう。
話はアイドルに戻しますが具体的にはスカウト後、アイドルを一つの資産と見なして大まかに育成プロジェクト予算を立て、それを実際の発生費用に合わせて徐々に償却していく形にしてはどうかなと考えています。これによってバラエティ系かドラマ系かなどと売り出し方や方針に合わせて育成方針も固めやすく、その経営見通しもしやすくなるのではないかと期待しています。
ひとつ例を出すと、15歳のアイドルの卵を発掘後、ドラマ系アイドルとして売り出す方針を決め、演技レッスンや改造手術(整形、豊胸)を最初の5年で行い、次の5年間でそれを回収するという計画を立てます。この場合、償却期間はアイドルの卵が15歳から25歳になるまでの10年ということとなり、最初の5年間に発生すると見込まれる予算を10分割して毎年償却費用として計上することで、発生のそばから費用を計上していくケースと比べれば売り出し成功後に得た収益に対しても税額控除が可能となるため、プロダクション側は後半5年間にも税効果が得られるということになります。
ここで一つ問題となるのが、償却期間の設定です。償却期間の設定自体は恣意性がある程度認められているものの、15歳のレッスン生と25歳のレッスン生に同じ償却期間を設定するのは誰がどう見ても無理があるでしょう。一つの目安としては「この年までにデビューできなかったら目がない」とする年齢で、15歳のレッスン生なら25歳まで(10年)、25歳のレッスン生なら28歳まで(3年)にデビューできなかったら事務所を辞めてもらうといった計画方針ならありかなとか勝手に考えています。
もっともこれを言ったら、子役とかどうすんだろう。
先にも述べましたが、仮にこうした会計処理ができるのであればプロダクションとしては税効果が得られるとともに、「いついつまでにアイドルを訓練し、デビューさせる」という計画が立てやすくなり、グループ単位でもそれ一つでプロジェクトを組めば、こうした処理法が行けるのではないかと思います。さらに言えば、こうした会計処理を行うことでアイドル単体に投資を募集しやすくなるのではないかと思え、それこそクラウドファウンディングみたいにデビューさせたい子にファンがみんなでお金を投資し、デビューの暁にはリターンを公正に分配することも可能になるのではないかと考えています。まぁ机上の空論ではありますが。
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