毎度毎度書いていますが日本はいじめ自殺が起きるたびに「いじめは大変だ、よくない、なくさなきゃ」と言いつつ、いじめそのもののメカニズムや統計についてはあまり言及されずフェードアウトし、しばらくたってまた自殺が起きると話題にするというのを繰り返している現状があります。特に統計に関してはひどいもので、どの都道府県が多いのかとか、男女比、学年、クラス規模、偏差値等、一部は統計が取られているもののテレビやネットでの議論に活用されることはなく、今後もこうした無駄なサイクルが繰り返されると予想します。
そのいじめのメカニズムですが、地味に無視できないというか検討する価値のある要素として、いじめられていた側がいじめる側に変わるという現象があります。この現象についてネットで検索すると出るわ出るわで、発言小町に至っては、真実かどうかは検証しかねますがかつていじめられっ子だった息子が他の子をいじめるようになりどうすればいいのかと、非常に真剣な相談が書かれてあってなかなか読ませられました。
現実にというかこの現象、私も実際に何度も目の当たりにしており、また報道によると2015年の川崎市中1男子生徒殺害事件の主犯格だった少年もかつてはいじめられっ子だったものの、長じて自分より年下の子をいじめるようになったと言われています。このほかの未成年による目立った刑事事件でも、「元いじめられっ子」というキーワードをよく見ます。
具体的な統計がない(多分調べようともしてないだろうし)ので発生割合は測りかねますが、必ずしもいじめられた子がいじめっ子に変わるというわけでないものの、少なくともこうした逆転現象が世の中で起きていることはほぼ確実だと私は体感的に考えています。たとえは変ですがマルクス主義者が市場原理主義者に、ビアンカ派がフローラ派に変わってしまうのはそうそうないと思うのに、いじめを軸にしたこの逆転現象は何故かよく起こるのはやはり不思議でしょう。
っていうか自分で書いててたとえが意味わかんない。
何故こうした逆転現象が起きるかについてネットで見たあるブログでは、「いじめられていた子はいじめる子に憧れを持つ、いじめる側の立場になることを望むようになる」というような分析をしていました。私は以前にこのブログで、「虐待されていた子は虐待する親を憎みながらも、長じて虐待する親になりやすい」という絶対的な統計結果を紹介した上で、先ほどの分析のように「憎みながらも暴力を行使する親に憧れを持つようになる」という心理傾向があるという研究の話を書きましたが、メカニズムではやはりこれと共通すると思え、先の分析を支持します。
やはり暴力というのは晒されるのはただただ苦痛なものの、受けた人間からすればその威力もわかるわけで、行使したくなるのかもしれません。もちろんまともな子は自分が受けた苦痛を他人には与えないように心がけるでしょうが、まともじゃない価値観の子だと「自分だって苦しんだんだから他の人間も苦しむべきだ」という方向に考えが行ってしまうのでしょう。
ある意味でこうしたメカニズムがはっきり出るのは軍隊や部活動のしごきでしょう。「やられたんだからやり返してもいい」を金科玉条に、何故かしごきを行ってきた相手本人ではなく無関係の下級生に暴力を行うという負の連鎖が起きるわけで、やはりこの背景には上級生に対する憧れめいたものが見え隠れします。
ようやく最近になって時代が私に追いついてきたのか、「ブラック部活動」という言葉とともにこうしたしごきや先輩や顧問からの理不尽な要求を社会が排除するようになってきています。防衛大でもこの前このような報道があっただけに、いい方向に変わっていると私自身は考えています。
しかしこの、いじめられっ子がいじめっ子に変わるメカニズムについて、やはりもっと深く突っ込んで対策などを議論してほしいのが本音です。昔のドラマの「人間失格」なんかまさにこの逆転現象を描いていて今思うとあの時に議論するべきだったなとも思えてきますが、この現象に対して対策を打つことでそれなりないじめ対策になるのではと密かに思います。
と、以上を踏まえて敢えて私がこの議論で踏み込むとすると、地味に前から不思議だと思うのがこうした逆転現象で、何故かいじめから庇ってくれた人を元いじめられっ子がいじめるようになるという現象が少なからず起きているという点です。先ほどの「人間失格」で堂本剛氏が演じたキャラの役割がまさにこの庇った側でしたが、ちょっとこの点についてなんとなくそれらしいメカニズムが見えてきたので、次回にて詳しく説明します。
0 件のコメント:
コメントを投稿
コメント、ありがとうございます。今後とも陽月秘話をよろしくお願いします。
注:ブラウザが「Safari」ですとコメントを投稿してもエラーが起こり反映されない例が報告されています。コメントを残される際はなるべく別のブラウザを使うなどご注意ください。