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2020年1月10日金曜日

ゴーン記事の裏側

共に外国人経営者に救われた日産とマツダの大きな差(JBpress)

 はい、というわけで今日配信された自分の記事はこれです。
 なおこれとは全く関係ないけど前、自分が書いた記事の話題を話したら後輩に、「あ、それに関する記事を読んだことあります」とか言われたけど、その記事書いたのは俺だったというオチがありました。

 今回この記事は昨年末の奇跡の脱出劇以降、メディア界に突如発生した空前のゴーンブームに乗っかる形で書いた記事です。ただ最初はこういう記事を書くことは全く考えておらず、先週土曜に友人に勧められ、日曜に書いて、月曜に提出して金曜の今日に配信されるというハイペースで進めることとなりました。まぁ記事内容自体は新規に調べなおすこともないので、すぐに書けましたが。
 記事内容については直接読んでもらえばわかる通り、日産のゴーン問題についてマツダとは何が違ったのかを比較する内容ですが、裏テーマはいろいろと仕掛けています。

 まずなんでこの記事を書いたのかと言うと、友人が「日産vs.ゴーン 支配と暗闘の20年」という本を勧めてきたことがそもそものきっかけでした。友人の感想は、「事件の経緯などについてはよく書かれているけど、トヨタと違って創業家一族がいないから日産でこういうこと起きたという意見はどうかと思う」というもので、実際に私も買って読んでみたところ、これとプラスアルファの意見を持ちました。
 この創業家一族の存否についてはわざわざ細かく書かなくても、ホンダやダイハツ、スバル、三菱などはどうなのかという話になるし、また私の記事でも書いている通りに現実には創業家一族がいることによって起こる業務上横領などの企業不正はいくらでもあるため、日産のゴーン問題を考える上では考慮すべきトピックではないというのが私の見方です。

 その上でこれも記事に書いていますが、このゴーン問題において真に検討すべきトピックとしては、「経営者の公私混同」、「国外メーカーとの提携のあり方」、「外国人トップ」の三つにほぼ絞られるとみています。この三点を考えるとやはり、日産同様にその経営危機時にフォードから社長を招いて再建を果たしたマツダこそが恰好の比較対象だと、実はかなり前から考えていました。
 しかしこれまでゴーン問題について日産とマツダを比較した記事はついぞ見たことがなく、この点については口と顔には出しませんでしたが、日本のメディアに対して実はかなり前から不満に感じていました。その点を含め先ほどの友人と上記書籍の書評で話したところ、「ユー、もうそれ書いちゃいなよ」と故ジャニーさんみたくプッシュされたので、ほかに書く奴いないし、確かに自分が書くしかないかと考えて書くことにしました。

 書き上げた感想としては、久々に骨太な経済記事を書けて、かなり満足しています。書いてる時も割と楽しく書けており、そのせいか当初は末尾に、

「なおゴーン氏の最大の功績を挙げるとしたら、Z33型フェアレディZを世に出したことだと思います。あれは、いいものだ」

 という内容が書かれていたのですが、さすがに筆が走り過ぎていると思って最後の編集段階で削除しました。要するに、そうやって調子に乗るくらいいい気分で書けたってことです。

 ヤフコメを見る限りだと今回の記事に関しては割と賛同する意見が多くみられ、コメントもそこそこ得られてライター冥利に尽きます。中には私同様にこれまでマツダとの比較が行われてこなかったことに不満を持っていたと書いている人もいて、そういう意味ではこういう記事を届けられたのは本当に良かったと思います。
 またヤフコメの中の意見では、「結局のところ、経営者云々ではなく提携先のフォードとルノーの器の差ではないか」という指摘が多くみられ、この点に関しては私も否定しないしその通りだとも考えています。ただルノーに関してフランス政府が関与しているのだからうまくいかないのは初めからわかっていただろうと書いている人もいましたが、この点に関してはエマニュエル・マクロンの介入開始時期を考慮してから言ってほしいと、一応反論しておきます。

 それで肝心のこの記事の裏テーマについて言うと、日産とマツダで何が違ったのかと言うと、記事中で強調している「経営トップの任期の設定と交替」のほか、「方針の一貫性」というものがありました。何故マツダのフォード出身社長は短期で何人も交替しながらもマツダは再建できたのかと言うと、再建フェーズに対応した経営者が送り込まれていたというのもありますがもうひとつ、再建方針がマツダ、フォード、そして交替していった社長たちの間できちんと共有されていたから、トップの交替があっても混乱なく再建が進んでいったと私は見ています。

 ゴーン氏は日産のトップに留まる理由として、自分以外にこの役を果たせる人材がいないと在任中に何度も言っていましたが、逆を言えば後継者を全く育てられなかったとも言えます。それと同時に、ゴーン氏が去るとこれまでの方針がひっくり変わる可能性があるということで、それだけ組織、企業間で方針が共有されていなかったとも言えます。
 実際にゴーン氏の逮捕以降、もう死に体の三菱はともかく日産とルノーの互いの関係や感情は悪化し、日産トップにはルノーとの協調役が選ばれることとなりました。高々と言っては何ですがトップ一人いなくなっただけで関係にヒビが入る組織と言うのは一言で言って脆いとしか言いようがなく、その点でマツダとフォードとは全然違ったということを密かに言いたくて裏テーマにしていました。

 要約すると、きちんと組織や方針がしっかりしていればトップが去っても企業というのは崩れないものであり、それこそが本当の組織力だということです。もっとも、マツダは昔からちょっと羽振りよくなるとすぐ調子に乗る癖があり、CX-5の好調で調子づいて急に車種ラインナップを広げて苦しくなり始めているなど、今はちょっとおかしくなっていますが。フォードもフォードで、マツダの技術が使えなくて世界的に販売が苦しくなるなどしており、もっと二人で仲良くやってけよと老婆心ながら思います。
 なお開発自体はフォード出身社長が来る前から行われていたでしょうが、フォード出身社長時代のマツダの会心作は初代デミオだとみています。実質これがすべてのコンパクトカーフォーマットの原形となり、恐竜で言えば始祖鳥といえます。これに追随してトヨタがヴィッツを作って普及させ、ホンダがフィットを作ってコンパクトカーという形を完成させたというのが私の見方です。我ながら、コンパクトカーには本当にこだわるなと自分でも思いますが、このくだりも本当はJBpressの記事に入れたかったです。

 最後に、実は今回の記事を書く前の前述の書籍への書評で友人に、「朝日出身記者の一番悪い癖が出ている」という感想を述べていました。最初友人は、「それこそ記事に書けよ!」とめちゃくちゃプッシュしてきたのですが、諸般の理由からこれは書けないので、じゃあマツダとの比較で日産記事を書こうとなったのが、本当の執筆開始プロセスでした。こちらの内容についてはまた次回で。

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