以前遊んだ「グノーシア」というゲームから派生して上のグノーシス主義というのにたどり着いたのですが、私の中途半端な理解で説明すると、キリスト教の完全普及以前に考えられた宗教観とのことです。大まかな内容としては、この世はちゃんとした神が作ったけど、今現在で人間に進行され、世界を統治しているのは実質悪魔っぽい偽の神で、だから世の中苦しみとかが蔓延しているとか、精神と肉体は完全別個の物で、精神は清いものだけど肉体はとにかく汚い的な、二項対立をはっきりさせた二元論が中心とのことです。
これらの価値観が一つの塊となった宗教は存在せず(思想的系譜で言えばマニ教が近いそう)、あくまで神学論上の概念だそうです。とはいえ今までになかった概念と、「神の存在性を疑う」という概念がなかなか興味深くいろいろ調べていますが、ちょっと気になったのが先ほど挙げた精神と肉体の二元論です。地味にこれは宗教論を議論する上で外すことのできない重要な概念であるでしょう。
一般的日本人はアニミズムの概念が強いこともさることながら、「魂」の概念をはっきり持っているため、精神と肉体は別個という概念に対してほぼ全く疑問を持たないと思います。肉体に魂が宿り、肉体が亡んだら(=死)魂は閻魔様のところを経由して天国が地獄に行くというのは、マルクス主義の日本人ですら疑わないでしょう。
こうした概念は何も日本だけじゃなくキリスト教などの西洋の思想でもはっきりしています。敢えて知ってる範囲で述べるならば、古代エジプトのファラオ信仰はやや異なっており、魂と肉体は分離することはあっても基本的に両者は紐づいており、魂はいずれ元の肉体に戻り復活することもあるからわざわざ遺体をミイラにしてまで残してました。その辺、精神と肉体の一致性についてファラオ信仰は高いという気がします。
話を戻すと、精神と肉体は別々と言いつつも、その主張における最大の矛盾点というか論点となるのが言わずと知れた脳の存在です。明確に思考を司る肉体器官であり、他のすべての器官は無事であっても、脳がなくなれば思考は止まるという意味で、「脳=魂」的な図式がある程度成り立ってしまいます。それでも科学技術の発達する前はあれこれ理由つけてどうにかしていましたが、脳の機能解析が進むにつれて、その辺の言い訳が段々と成り立たなくなってきているのも事実です。
何気に面白いのが、脳の解析において一番進んだのは実は一次大戦の頃だそうです。というのも当時は戦闘で中途半端に脳が吹っ飛んだ患者が多く、脳のどの辺を失えばどうなるかとかそういったデータが一気に集まり、脳外科方面の研鑽が一気に進んだと聞きます。
また脳関連で話を進めると、サイバーパンクの世界では脳を義体に移植して不老不死的に活躍するという攻殻な機動隊っぽい話も多く、これも脳=魂といった精神と肉体の一致性に対する現代の一つの見方といえるでしょう。
ここまで言えばわかるでしょうが、私自身は精神と肉体は別個の存在というより、両者の一致性はむしろ高い、肉体あっての魂であり、魂なくして肉体なさないという価値観を持っています。こうした価値観の補強として近年、脳以外の内臓なども一部記憶を持ち、移植時にドナーの記憶が移植患者に渡るという研究が出ています。「シグルイ」という漫画に至っては、「筋肉だって記憶を保持するよ」というトンデモ理論を漫画の中でかましましたが、現代では観測できてないないだけで、案外その可能性もあったりするのではないかという気もします。
このように肉体と精神は両者揃って初めてどちらも成り立つもので、不可分な要素であるというのが私の見方です。それ故に、どちらか一方が大きく落ち込む、具体的には体は健康だけど精神的ショックを受ける、または精神はハイだけど麻薬を打つみたいなことすると、最終的にもう片方も駄目になっていくのは自然で、逆に強い人間たらんとするならやっぱ精神と肉体を一緒に鍛えないとダメ的な話になってきます。
その上で、肉体の死は精神の死で、肉体が亡んだ後に死後の世界があるかというと、あるかもしれないけど少なくとも現在の人格(霊魂)のままそこへたどり着くことはないと考えています。というのも肉体が亡んだら精神が今の状態のままを維持することは不可能であると考えるためで、何かよくわからない物質という要素になって別の人格というか生命となって出ることはあっても、現在の人格を維持することは元の肉体なしには不可能という風に考えます。
同様に、肉体をサイボーグ化したらその時点でも精神は変容するとも見ています。許容可能な変容かどうかは議論の余地がありますが。もっともそれを言ったら、子供と大人で体つきも大きく変わることから、子供の頃の人格と大人の頃の人格は記憶こそ共通するものの、同一人格かと言ったらもはや別のものになっているのかもしれませんが。
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