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2021年1月3日日曜日

未完結であることで下がる作品の完成度

 昨日は「ワンピース」の実売数に関する疑問について触れましたが、「ワンピース」に関しては前からもう一つ、連載の長期化について言いたいことがあったのでそれについて書きます。

 まず結論から言うと、長期連載はストーリー漫画にとってあまり好ましいものではないと私は考えます。「こち亀」や「ゴルゴ13」など基本1話完結ものであればまだしも、キャラクターや展開が連続するストーリー漫画においては連載が長期化すると、新規読者が参入しづらくなるほか、当初から読んでいた読者も読み続けることに段々抵抗を感じてきます。
 そもそもの話、どれだけ壮大な話であっても単行本20冊くらいの量を使えばほとんど盛り込むことは可能だと思います。むしろこれ以上の巻数に行くのならば、そのアイデアは舞台や設定を変えた別作品で反映する方がベターじゃないかとすら考えています。

 とはいえ、それでも「ワンピース」は売れているのだからとこれまでは言えたのですが、これまた「鬼滅の刃」が人気絶頂の中、全23巻で完結したことを受け、「ワンピースは何故まだ終わらないのか?」という意見が見え始めるようになりました。
 奇しくも、アニメ化が決まっている「チェンソーマン」もつい先日、約2年の連載期間で最終回を迎え、またその最終回の評価も高かったことから、「連載は無駄に引き延ばさず、終わらせるべきところで終わらせるべき」という見方が出ており、私もこうした見方に同じくする立場です。

 元々、少年ジャンプはかつての「北斗の拳」や「ドラゴンボール」などのように人気漫画の連載を無理やりにでも引き延ばす傾向が特に強い雑誌でした。これに最初の一石を投じたのは「スラムダンク」で、編集部が止めるのを聞かず作者が山王戦を終えたところで連載を切りましたが、これについて確か作者も「物語が一番盛り上がったところで切るべきだと考えていた」というようなコメントを残していましたが、現在における「スラムダンク」の評価を見ているとやはりその決断は正しかったように思えます。

 ちょっと主旨が違うかもしれませんが、この問題を考えた時に自分が最初に思い浮かべたのは巨匠・永井豪の「凄ノ王」でした。この作品は永井氏が「未完結の作品には美がある」と感じたことから敢えてストーリーが大きく広がってこれから盛り上がるぞ的に、具体的にはスサノオが甦って世界が崩壊したところで唐突に連載が打ち切られて終わりました。
 これは連載打ち切りではなく完全に永井氏の想定通りの終わり方だったのですが、結果的にはその目論見は外れ、その終わり方を不満とする声が非常に多かったことから、後に完結編と称して続編を描くに至っています。作者自身も後年、この未完で終える試みは失敗したことを認めています。

 実際に私もこの作品を読みましたが、当初のラストシーンのところまで読んでみて、非常に読後感が悪かったというかいわゆる「投げっぱなしエンド」を連想しました。そして後からつけられた続編も読みましたが、ないよりかはマシだけど、やはり後付け感がひどく、連載開始当初のこれからどうなるか的な展開のワクワク感と比べると後半の話は揃いも揃って不満に満ちたものであり、全体を一作品としてみた場合は低く評価せざるを得ないという印象を覚えました。
 それだけに、私個人の意見として言わせてもらうと、「未完の美」というものはこの世に存在しないと思います。作品の制作途中で作者が死亡するなどにより未完成となりながらも後の世にも評価される作品はありますが、それらの作品は「完成まで見たかった」という惜しさを込めた制作途中の作品に対する評価であり、「未完成」であることに対する評価ではないでしょう。

 やはり作品というものは終わりがあるから始まりがあるわけで、どれだけスタートが良くても、終わり方が良くないと結果的に作品の評価を下げてしまうと私は思います。逆を言えば、終わりどころを間違えてしまうとズルズルと作品の評価を下げていき、一時はブームを起こした作品であっても最終的には打ち切りに遭って消えてしまうということも実際によくあります。

 そういう意味で、やはりいい作品を作るためにクリエイターは作品を完走させるという努力が必要だと思います。自分の好き勝手に、できるだけ長く作品を作り続けたいという欲ももちろんあるでしょうが、子離れできない親みたく、長く続けることでかえって作品をダメにすることも少なくないだけに、やはり終わり方を見据えた創作という意識が、作品を消化する上では大事となるでしょう。
 というのも最近、どの出版社も鬼のように原稿を催促する編集者が減ったのか、長期休載を連発する大物作家が増えており、いつになったら連載が終わるんだ的に連載ペースが遅い作品が続出しています。具体的には、

・ガラスの仮面
・ベルセルク
・ヒストリエ
・ハンター・ハンター
・ブラック・ラグーン

 上記はある意味、五作品あるけど四天王的な地位を確立していますが、一応もう一つ「バスタード」という作品がありますが、これは完全に読者からも編集部からもそっぽ向かれ、もう続きが出ることに対しほとんど何も期待されていない節があります。こうなるのであれば、作品の区切りの良い位置でこの際完結させておけばもっと評価が高まったのかもと思え、個人的に惜しいと感じさせられます。

 今回まとめた内容ですが、何も作品に限らず、政治家などの人生においても同じだと考えています。安倍前首相なんか典型的ですが、権力欲に取りつかれ引き際を誤ったばかりに政権末期にミソを付けまくることとなり、後年の評価を大きく落とす結果となってしまい巻いた。ある意味、森友問題が最初に盛り上がった段階ですぐ引いていれば、「不幸にもアッキーのせいで辞めることとなったが、非常に惜しい存在だった」的に後年語られたかもしれません。
 逆に、完全に勝ち逃げしたのは小泉元首相でしょう。彼の場合は復讐心は強いけど権力欲は非常に低かったから、郵政引きずり倒して本人的にも満足な結果だったと言えるでしょう。

4 件のコメント:

  1. 片倉(焼くとタイプ)2021年1月3日 12:27

    もし、ワンピースの連載が続いた場合 尾田栄一郎さんは次のヒット作をだせるだろうか
    という心配があります。尾田さんは今 45歳です。 仮にワンピースの連載が後5年続いた
    場合、連載終了時には尾田さんは50歳です。そうなると ジャンプの主な読者層どころか
    読者の父親世代よりも年上になります。 若い感性が要求される少年漫画において尾田
    さんは新たなヒット作を生み出せるかどうかは疑問です。 最悪の場合尾田さんの代表作は
    「ワンピース」だけになるかもしれません。 もっとも「ワンピース」一つだけで並みの
    漫画家数十人分の功績を上げたのも事実です。  尾田さんが尊敬する鳥山明氏が
    ドラゴンボールの連載を始めたのは29歳、まだ若い時でしたね

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    1.  論点はまさにそこなんですよね。漫画のアイデアがたくさんあるのなら、ワンピースという作品の中で全部出さなくてもいいと思うのに、なんか全部無理やり盛り込もうとしている風に感じるところがあります。まぁ本人が望んでいるのなら、仕方ないのですが。

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  2. ワンピースは作者も続けたがってるみたいな話を聞いたことがありますが、事実かはわかりません。コナンなんかは確実に終わらせてもらえてないやつですけど。

    長期連載が続きすぎると次がヒットしないという
    話は確かにあって、幽々白書はサクッと終わらせたからHUNTER×HUNTERをヒットさせられたけど、ドラゴンボールは長くやりすぎて次のヒット作が生まれなかったって話もあります。
    まぁそのドラゴンボールは未だにバンダイの中ではガンダムの次の稼ぎ口らしいので、作者の人生を取るか金を取るかなんでしょうね。

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    1.  作者が当たるかどうかわからない二発目に切り替えるよりかは、まだ売れている漫画を続けたいって思うのも無理からぬことかなとは思います。コナンはまだ1話完結だからありかなと個人的に思いますが。
       ドラゴンボールに関しては作者の鳥山明がやや燃え尽きた感じがありますね。やはりまだ続けたいっていう心境じゃないと、次の作品は出てこないのかもしれません。

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コメント、ありがとうございます。今後とも陽月秘話をよろしくお願いします。

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