それで本題ですが、前回記事で私はリーマンショック以降に世界各国でヘリコプターマネー政策が採用された結果、日本では日銀と年金機構がかつてないくらいに上場企業の株価を保有するようになり、市場経済に対する国家(=政府)の統制が強まってきていると述べました。この統制強化についてはデメリットばかりでないものの、日本の場合だと企業の実態活動に及ぼす影響も大きいのではという風に言及しましたが、その影響とは端的に言って大企業病、そして敢えて古い言葉で言うなら親方日の丸意識です。
現代日本において、大企業病について警戒感を今でも打ち出しているのは私が知る限りトヨタ、あと最近は前ほど主張しなくなったけど自嘲気味に「うちは中小企業だから」と言っているスズキの2社です。逆を言えば、他の大手企業に関しては多かれ少なかれ大企業病になっていると思われ、それが近年、市場の統制化が進むにつれてより顕著となってきているように見えます。
これは一体どういうことかというと、日銀や年金機構の持分比率が高まるにつれて、役員がその株主に対する経営責任を前ほど意識しなくなっているからです。それこそ村上ファンドのように物言う株主相手であればどの企業も自衛措置や経営の維持を強く念頭に置くでしょうが、日銀や年金機構は各社の経営に口出しや介入することはほぼ考えられず、役員らの経営責任意識を低下させるという点がかねてから指摘されていました(主に村上さんが)。
私自身もこの見方に同感で、実際に近年の日系企業の役員らの発言を見ていると、随分と他人事みたく物を言う役員が増えたという印象を覚えます。それこそコロナ流行下でどのように経営を維持し、さらに業務を拡大していくかについてはほとんど誰も言及しなかったばかりか、あまり意味があるとは思えない感染対策ばかり口にし、プレスリリースでも電通みたく「社内から感染者が出ました」ばかりしか言わず、どうなっているんだという印象を正直覚えました。
また単純に、経営者の名前が出てくることも随分と減った気がします。それこそ00年代はデフレ脱却が掲げられ、ちょうど日系企業の海外進出も盛んだったことから多くの名物経営者が名を上げましたが、近年は某章夫さんしか一般メディアで見る名前はなく、あとは日本電産の永守氏くらいな感じがします。これはという方針を打ち出す経営者がいません。それでも、日系企業各社の株価は現在も上昇中です。それはやはり、日銀と年金機構が買い支えているからでしょう。
こうした背景からか企業自身も、「何かあっても国が何とかしてくれる」という暗黙の了承みたいなものを覚えているようもみえます。実際に東芝は経産省らが八方手を尽くしてくれたおかげで案だけむちゃくちゃやらかしたにもかかわらず逮捕者はゼロで、且つ上場も維持されました。あれが末端の上場企業なら即刻上場廃止の上、場合によっては営業停止処分も受けた可能性があり、明らかに不公平な結果でした。
このような感じで、大企業に関しては何をやっても国が助けてくれる、不問にしてくれるという意識が今の日本でかなり蔓延している気がして、それはやはり政府政策もさることながら経済の統制化も一因であると私は睨んでいます。それ故に企業自身もすっかり競争意識がなくなり、今やっていることを一切変えずにそのままやり続けようとしている態度が年々増えているように見え、こうした一連の状況を見ると旧電電ファミリーに蔓延していた「親方日の丸意識」が今まさに甦ってきているのではないかというのが私の意見です。
またこうした大企業病に関して、企業自身がそれを煽っている節があるようにも見えます。どういうことかというと、社員に対し「お前たちは選ばれた大企業社員であり、それを誇りに思うがいい(^ω^)」的な内容を普通に訓示とかで言ったりしてしまっている点です。最初に挙げたトヨタのように、「大企業病になるな。ちょっとでも気を抜いたらすぐ引きずりおろされるんだぞ俺たちは(# ゚Д゚)」とくどいくらい言っているのと比べると、やはり後者の方がそりゃ会社として伸びると思います。
こうした価値観は採用面でも強くみられ、就職活動する若者自身も、どこかでそういうのを期待しているように見えます。それこそ「俺がこの会社を変えてやんよ( ・´ー・`)」みたいに言う学生はいるはずもなければ、企業側もまず採用しないでしょう。さすがにこの発言は大仰すぎるにしても、私の世代でも顕著でしたが、何かやりたい仕事があるからその会社を選ぶというより、大企業の手厚い保護を目当てに自分の専攻なり嗜好なりで共通点を持つ大企業を選んで応募するというパターンで9割方応募先を決めている気がします。
そういうわけだから会社に入ったところでやりたい仕事なんてあるわけなく、むしろ余計なことに巻き込まれたくないから進んで歯車になりたがる人の方が今の時代は多いでしょう。まぁ「会社の歯車になんてなりたくない」って公言する奴はする奴で変だとは思いますが。
そうした応募者の目的は仕事を通した自己実現などではなく、大企業における保護であり、ちょっと前にこのブログのコメント欄で話題になった通りに大企業への入社が「人生すごろく」のあがりみたく認識されて、入社以降の意識や行動の向上を妨げている気がします。さらに企業側も、「うちは立派な大企業で、あなた達はその優れた会社の一員たちなのです」みたいにさらに危機感を失わせるようなことを堂々と言っちゃうし。
この辺、さらに深く進めると国内における競争が減ったことも影響する気がしますがそれは置いといて、今の日系企業を見ていると本当に危機感がなく、地味に大企業病の蔓延が深刻化してきている気がします。それこそリーマンショックの頃はまだどないすんねんとリアルな危機感がありましたが、かえってヘリコプターマネー政策を受けてからはそうした危機感も吹っ飛び、「国が何とかしてくれる」という考えが強まってきている気がします。
今回、ハゲタカファンドという単語が何故消えたから一気にここまで自分の考えが及びましたが、突き詰めるとヘリコプターマネー政策の一般化が、じわじわとかつての非常識を常識へと変えていき、知らず知らずに世の中をおかしな方向に引き寄せているのではと考えるに至りました。
その上で、先にも書いた通りヘリコプターマネー政策は今後も確実に継続されます。その結果がどうなるのか、またその過程で予想されることは何なのか、ちょうど今くらいにいろいろ考える時期に来ているのではないかと思います。
大きい組織にいる人ほど「自分で考えて自分で決める」ことが苦手な人が多い印象があります。元々日本人は苦手ですが、大組織の中の指揮系統の中では考える脳を持たない人間の方が出世できるようです。いっそのこと大企業はAIに経営判断を任せた方がいいんじゃないかという気がしますね。
返信削除笑えないというか大企業はそうですね(;´・ω・)
削除やはりセクションごとの縦割りが大きくて、狭い範囲の仕事をしているだけでやたら大きな仕事していると考えてる人が多い気がします。しっかりしたところは大企業でも優秀な人材が揃っていますが、業界4番手、5番てくらいの企業だと見るも無残な人をよく見ます。