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2021年5月2日日曜日

書評「後期日中戦争」

 折角のGWだし4月までクソ忙しくて休日作業も当たり前だったので、ひたすら寝たり遊んだりして妖怪的な毎日を送りたいのに、また6月からは仕事忙しくなるのが見えているので、今のうちにため記事作っておかないといけないのがハートに来ます(´;ω;`)ウッ…

 それで話は本題ですが先日、自分の主戦場であるJBpressで広中一成氏の「後期日中戦争 太平洋戦争下の中国戦線」という本の紹介記事が出ており、中身に興味があったことから購入して読んでみました。この本の内容はタイトルの通り、第二次大戦後半期における日中戦争について、同期間において一貫して中国に駐屯していた第三師団を主軸に解説しています。

 作者の広中氏も言及していますが、第二次大戦における日中戦争は基本、真珠湾攻撃の行われた1941年12月までの期間しか紹介されません。何故かというとそれ以降は米軍との太平洋戦争が始まるからで、日本人にとって第二次世界大戦=太平洋戦争であり、そこに日中戦争を含まないのが一般的です。
 しかしこの間も実際には1936年の盧溝橋事件に始まる日中戦争は継続しており、それは1945年のポツダム宣言受諾まで続きます。しかし1941~1945年における日中戦争は少なくとも高校レベルの日本史教育では事実上、全く教えられず、また私自身も興味を持って過去に調べようとしたものの、同時期の日中戦争を解説する本などがほとんどなく、真面目に攻めあぐねたことをはっきり覚えています。

 そうした背景だけに、今回この本を知った時はまさに自分が求めていた本だと単純に喜び、また前書き部分でまさに上記のような問題意識から調査、執筆を行ったという広中氏の言及があり、無駄に仲間意識というかシンパシーを感じました( ・∀・)人(・∀・ )ナカーマ
 内容も非常に申し分なく、非常に読みやすく整理されている印象を覚えました。前述の通り、この本では太平洋戦争勃発以降の陸軍第三師団の戦闘を主軸に、第三師団が参加した第二次長沙攻撃や一号作戦などが解説されています。ただこれは広中氏も言及していますが、今回取り上げたのは第三師団の中国における行跡であり、同期間におけるあらゆる日本軍の作戦行動を解説しているわけではありません。

 その結果として、この本の中では長沙をはじめとする江南(上海より南半分のから重慶手前までの地域)における戦闘しか収録しておらず、中国の北半分こと華北の戦闘に関してはほぼ完全にノータッチになっています。この点に関しては仕方がないという面があるとともに、仮に一緒くたにやっていたら読み手への負担が増すことは確実で、バッサリ切って正解だったと私は思います。
 なお広中氏は現在華北の戦闘についても調査中とのことですから、次回作を期待したいです。

 それでこの本で紹介されている江南の戦いについて少し触れると、いくつか気になる点が見えました。一つは731部隊が制作したガス・細菌兵器が実際に戦場で使用され、中国軍部隊だけでなく現地住民にも被害を及ぼしただけでなく、味方である日本軍兵士にも罹患者が出ていたという事実です。そもそもガス・細菌兵器の使用は完全たる国際法違反であり許されざる行為ですが、当時の日本軍では現場指揮官の判断でこの手の禁止兵器を使用していたという事実についてはなかなかに驚きでした。同時に、米軍相手だと問題になるから、中国軍相手ならいいだろうと使われたのではないかという憶測も持ちました。

 もう一点、制空圏に関する記述が非常に気になりました。この本の中で、行軍中の日本軍は一貫して中国大陸において全く制空圏がなく、敵偵察機にずっと補足され続けていたという記述がありました。太平洋戦争の舞台である各島嶼地域ならともかく、比較的日本本土から戦場が近く、尚且つ航空機生産能力でも中国より高かったと思われる日本軍が、中国でほぼ全く制空圏がなかったという事実はこれまた驚きでした。
 なんとなく見ていて、制空圏に対する意識が日本軍には低かったのではと伺える記述もあります。実際には制空権がなければ行軍中の部隊が機銃や爆弾で攻撃されるし、前述の通り進軍先も偵察機に補足されます。一体何故中国大陸で制空圏を取れなかったのか、恐らくは米軍との戦闘に航空機を集中させたからではないかと思うものの、それにしたっていい加減が過ぎやしないかという気にさせられます。

 このほかこれは中国での戦闘に限るわけではないですが、相変わらず日本軍は補給を度外視した作戦を立てており、折角攻め込んで攻略が進んでいるのに、すぐ弾切れ起こして反撃食らうってパターンが非常に多いです。また弾薬ならまだしも食料に関しては初めからないとわかっているのにそのまま突っ込ませていたという記述があり、インパールと違って中国大陸の場合は現地調達が行われたためインパールほどはひどくなかったと書かれてありました。
 補給を考えずに作戦立てて見事失敗する辺り、本当に日本の上級士官は無能にもほどがあるという気がしてなりません。物資ないなら無理して攻める必要もないというのに。

2 件のコメント:

  1. 私も日中戦争の後半戦があまり無いのが気になっていたので、GW中にこの本読んで満足しました。

    Wikipediaでは(日中英とも)大陸打通作戦は「日本の勝利」と書かれてますが、実際は負けに近いギリギリ勝利だったようですね。

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    1.  本当にこの本は自分が待ち焦がれていた内容が書かれていて非常に楽しめたのですが、なんていうか読んでいて、補給も満足に維持できないのに兵隊送ってて「MP尽きた魔法使いで突き進むようなもんじゃん」などと思いながら呆れてました。補給が分からないというレベルじゃないほど拙い戦術を日本軍とってて、心底呆れました。

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コメント、ありがとうございます。今後とも陽月秘話をよろしくお願いします。

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