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2021年10月20日水曜日

自動車メーカーにEVを作らせたのが間違い

 今日ちょっと時間があったので、とある新興EVメーカーのショールームに行って写真撮ってきました。動機は今後の記事で使う可能性が高いため前もって撮っておこうとしたためですが、店員はカジュアルな格好をしていたものの、物腰は柔らかで仕草やたたずまいは非常に綺麗な人ばかり揃ってました。生憎、上海訛りのきつい中国語だったのであんま会話は聞き取れませんでしたが。
 ちなみに以前に行った上汽五菱のディーラーは、修理サービス店も兼ねてることから店の人はどっちかっていうと素朴な感じで、イメージ的にはスズキっぽい感じでした。逆に新興EVメーカーの店員は高級車ブランド、っていうよりはなんか高級家電店っぽいイメージがします。

 来週月曜に出す記事にこの辺細かくまとめていますが、中国では今年に入ってからEVシフトが急速に進んでおり、今日行った新興EVメーカーを始めベンチャーとされた彼らの売上規模がものすごい勢いで拡大しています。ウェイライとシャオパンに至っては月間販売台数が1万台を超えており、これは中国における三菱の販売台数(確か約6000台)を上回っており、設立年から考えるとその生産販売能力の拡大はまさに驚異的です。しかもこれ、全部EVだし。

 このような感じで中国ではEVベンチャーが急成長し続けているのですが、いま日本で月間販売台数が1000台超のEVベンチャーはあるのかというと、調べていませんがあんま調べない方がいいと思うくらいこの手の話を聞きません。っていうかEVベンチャーに関して日本はむしろ官民揃って潰そうとしているような雰囲気すら感じられ、なんか悲惨な状況です。

 そうした日中の状況を比較して今日、そもそもの話、既存大手自動車メーカーにEVを作らせようとしたこと自体が、ひょっとしたら間違いだったのかもとふと思いました。というのも確かにEVは自動車の一種ですが、既存自動車メーカー、特に日本の自動車メーカーはエンジンは基本ほとんど自作しており、実態としては「エンジン屋が自動車も組み立てている」ような形態に近いです。
 なお中国の自動車メーカーだとエンジンを自作しているメーカーの方が少なく、基本日本やドイツの自動車メーカーからエンジンを仕入れており、ガチな意味での「自動車組立屋」であることが多いです。

 そうしたエンジン屋が母体ともいえる日本の自動車メーカーからしたら、エンジンをなくしてモーターで走らせるEVというのはある意味どころではなくガチな意味での商売敵です。実際、トヨタなどはEVシフトは必要としながらも急速な方向転換はエンジン関連の雇用に影響を及ぼすと主張しています。このトヨタの主張は自分も同意で、エンジン屋である彼らの立場からしたらこうした意見を持つのも当然であるし、必要だとも感じます。
 しかし、仮にEVの産業発展という観点から見ると、こうしたエンジン屋である既存自動車メーカーにEVを作らせようというのは土台からして間違っているように見えます。彼らとしたら時代の変化への対応ではあるものの、今現在の自社の主力製品を食う製品を作ることとなり、その辺で葛藤を持たない方がおかしいです。また既にプラットフォームが出来上がっている燃油車と比べるとEVは開発コストも流通コストもインフラもかかり、新規に燃油車を作って販売するよりも大きなコストが発生するのは必至です。

 そうしたことを踏まえると、仮に時代環境を見つめて経営者がEVの開発を主導したところで、既存自動車メーカーの現場はどう反応するかです。その逆も然りで、現場がEVの開発を求めても、コストの点から経営者がGOサインを出すかというと、この10年間はそうでもなかったんじゃないかなという気がしないでもないです。

 じゃあどうすればいいのか。極端なやり方ですが、この際既存自動車メーカーには「絶対にEVを作ってはならない」的な規制をかけておけば案外よかったのではと今思います。燃油車の生産開発に係るメーカーはEVには一切関与することは許さず、どうしてもEV作りたいなら別会社を作り、よそからの出資も受け入れさせて出資比率を40%未満にさせなければならないという、実質的にベンチャー以外にはEVは作らせないような環境にしておくのも一つの手だったかと思います。

 やはり中国のEVベンチャーと比べると、日系自動車メーカーのEV開発は無理やりやらされている感が強く感じます。逆に中国のEVベンチャーは、文字通りにもう走り出して止まれないという立場と、既存燃油車関連従業員といったしがらみがない分、EVの開発や販売に対する熱意が全然違うように見えます。彼らとしたら売らなければ死ぬしかないという立場だし、元々燃油車を取り扱っていないのだからEVの生産販売に文字通り全力を傾けてきます。この全力が、残念ながら日系自動車メーカーにはありません。

 前述の通り、日系自動車メーカーがEVを開発するにはこれまでのしがらみが多すぎた気がします。それであればEV市場には大手の参入は一切認めず、ベンチャーにしか入り込めない市場にすることでベンチャーを育てた方が、産業育成としては案外うまくいったんじゃないかなと思うわけです。ぶっちゃけ、既存メーカーにEV開発やらせるのもシャシーとかを除けばほとんど一からの開発だったわけだし。
 もっとも今の状態でこんなやり方はできないでしょうし、仮にやらせるにしても事業法人は本体から切り離させることが限界でしょう。それでも、全てのEV事業を離した会社にやらせることで、新会社でを既存燃油車の売上げを計上できないという状況に追い込めるわけですから、やらないよりは今でもこうやった方が私はいいと思います。

 オチはあんまないですが、上記のような意見を私は見たことがなく、日本人でこんな発想するのはもしかしたら自分が初めてかもしれません。そう思うと本当に自分の価値観は日本人から離れたものになりつつあることを自覚します。

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