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2022年2月18日金曜日

「大人」が唯一存在するガンダム作品

 かねてからこのブログに書いているように、日本の漫画、アニメの最大の特徴は「まともな大人」がほとんど存在しないことに尽きると思います。基本的に大人は足を引っ張ったり、騒動や戦争を引き起こす無責任な存在に描かれ、そうした大人のツケを少年少女が活躍して解決するというのが最大の王道となっています。
 漫画の主な購買層が少年少女であることを考えると、大人を落として少年少女を持ち上げて描く方が感情移入されやすいため、こうしたストーリー手法が採用されるのは個人的に理に適っています。その一方、大人の鑑賞に堪える作品がやや出づらくなっており、功罪相半ばとなっている面があるでしょう。

 こうしたストーリー傾向はガンダムシリーズにおいても顕著、というかガンダムシリーズが代表格と言っていいくらい上記のようなストーリー構成を取っています。基本的に敵も味方も無責任な大人ばっかで彼らが戦火を拡大していく一方で、戦闘面においては主人公らの少年少女が大活躍して最終的に終戦に持って行くというのが基本パターンです。そのため主人公の年齢も基本若く、多分Gガンダムのドモン(20歳)が登場時で最年長で、次いでコウ・ウラキ(19歳)になるのだろうか。

 特にVガンダムに至っては、主人公は13歳と極端に若い上に、主人公側にいる大人たちは「こいつぁ使える!」とばかりにガンガンと少年兵を戦場へ送り込んで戦争に巻き込むなど、無責任を通り越して狂気に走った大人たちがさも当たり前のように登場してきます。こうした「無責任な大人とそれに振り回される子供たち」という構図は、明らかに監督の意向が強く働いているでしょう。

 ただ、そんなガンダムシリーズにおいて明らかに例外と言えるシリーズが1つあります。挙げてしまうとそれはガンダムXで、このシリーズ作品のみ責任感の強い大人が味方の側に立ってくれています
 具体的にはそのキャラは副主人公といっていいジャミル・ニート、そして彼と行動を共にする医者のテクス・ファーゼンバーグの二人です。二人とも行動や発言には強い責任感が伴っており、また戦火の拡大を抑えようとしたり、戦争などに利用され犠牲になっている子供を助けようと行動していたりと、ガチで大人の鑑のような人物として描かれています。

 それ以上に特筆すべきは、主人公であるガロード・ランとの絡みです。前大戦のエースでありながら大虐殺に加担した負い目によって戦闘恐怖症となったジャミルですが、若く暴走しがちなガロードに対し時には厳しく叱り、時には力強く背中を押したりして、その時々の状況に応じてしっかりと少年を導く大人の役割を演じています
 その一方で、大人であるジャミルの側も少年であるガロードの熱意や積極性の影響を徐々に受けていき、物語途中で戦闘恐怖症を克服し、パイロットに復帰するようになります。この流れについてもう一人の大人であるテクスが、「少年の心は、時として成人男性に伝染する。よくある例だ」と評しますが、地味にこれはガンダムXの中でも名言中の名言であると思うとともに、本当に望ましいとされる大人と少年の関係を見事に描き切っているようにも感じます。

 っていうかこのテクス先生、あまりにも人格がよく出来過ぎてるので、視聴中は「実はこいつ、敵のスパイなのでは?」と疑ったことがありました。それにしても名言が多く、「大概の問題はコーヒー一杯飲んでいる間に心の中で解決する物だ。後はそれを実行できるかどうかだ」というセリフもどっかで言ってみたい。

 ガンダムXは前番組のガンダムWから人気が落ちたこともあり、やや失敗作みたいな扱いをされた時期もありましたが、改めて作品全体を見ると最初に述べたようにガンダム作品としては例外的にしっかりした大人が描かれていること、また「ニュータイプ」、というより「新人類」という概念に真っ向から切り込んだことなど、そのストーリー構成や世界観に関しては文句のつけようがないくらい素晴らしいものだと、かえって年月を経るにつれて思うようになってきました。
 まぁ駄目出しすると、主人公機以外の機体がガンダムタイプを含め、敵味方ともに異常にダサいというのがまずかったと思います。「ガンダムXディバイダ―」、っていうかハモニカ砲はネーミングといいかなり好きなんだけど。

 冒頭でも述べた通り、少年少女が主な消費対象であることから、少年少女が中心となって活躍するストーリーが多くなるのは私は当然だと思います。ただそれが過剰に働いた結果、日本の娯楽作品では無責任な大人ばかり跋扈するようになり、やや作品としての引き出しが小さくなっていった気がします。
 そうした点を振り返るにつれ、「子供たちを導く大人」の役割を果たすキャラクターがやはり日本の娯楽作品では致命的に不足しているように思えます。こうしたキャラクターをもっとうまく描けるようになれば、もっと作品の幅は広がると思え、そういう意味ではガンダムXがまさにいい手本となる作品なのではないかというのが結論です。

 なおこの系統のキャラでほかにパッと浮かぶのは、「進撃の巨人」のリヴァイ兵長です。あとは「ダイの大冒険」のアバン先生がいるけど、あの人は序盤ですぐ一時退場してしまうのであんま導いてる感覚ないです。ポップ限定ならマトリフ師匠がまさにこの役割を果たしてはいますが、ぶっちゃけ麻生太郎氏に顔がよく似てるんだけど、一回コスプレやってみてほしい。

4 件のコメント:

  1. 片倉(焼くとタイプ)2022年2月20日 14:48

    ガンダム世界の 大人は無責任であり、特に子供にとって一番身近な存在である親が
    問題児である場合も多いです。 アムロの母親は 何年も自宅をほったらかしにして
    愛人と付き合っています。 そしてアムロは本編で 母親との別れを決断するのです。
    そのため 逆襲のシャアのラストで シャアが「ララァは母親になってくれるのかも
    知れなかった」という発言を理解できなかったのです。
    シャアは「母親は素晴らしい存在」だと思っているのに対しアムロは「母親とて
    一人の人間 勝手なところだってある」と思っています。

    ニュータイプ同士は意思疎通ができる存在ですが、人生観の違いまですぐに理解
    できるものではないのでしょうね

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    1.  コミュニケーションが取れるのと、理解し合えるというのはまた異なる次元でしょうね。特におっしゃる通りに人生経験の違いなんかは。
       あと記事に書き忘れたけど、Gガンダムだったらある意味で東風不敗が主人公を導く大人になってるかもしれません。まぁ責任感強すぎて、若干暴走気味ですが。

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  2. 最近、未成年の頃に見たアニメの大人が無能なのは、本当に当時の偉い大人が無能だったからなのではないかと思うようになりました。今の高齢者の老害ぶりが、あまりにもそれっぽいので。
    みんながみんなそうじゃないけど、そういう人が多いというのも、アニメの無能な大人とまともな大人の割合に近い気がしています。

    ただ、アニメやゲームは比較的学生に近い人たちが自分たちだけで作っていたケースが多いので、そもそも周囲に大人がいなかったんだろうなと思うこともあります。

    ちなみにガンダムXは平成アナザー三部作のなかでは一番好きな作品です。宇宙世紀っぽい世界観なのにキャラは全く宇宙世紀っぽくないのが良いですね。

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    1.  自分もこの記事で書いているように、年齢重ねてからガンダムXが実はいいなと気づくようになってきました。シリーズとして、例外中の例外みたいな要素に満ちてるし。
       ある意味、しっかりした大人に溢れた作品ってのが今も昔もレアなのかもしれません。カイジシリーズみたいなクズな大人に満ちた作品がある一方、上司としては実は頼りになるトネガワみたいな作品もありますが。

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コメント、ありがとうございます。今後とも陽月秘話をよろしくお願いします。

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