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2023年3月25日土曜日

日本人野球選手は何故こうも強くなったのか?


  上の動画はWBC決勝戦でマイク・トラウト選手相手に戸郷選手(ずっと「とごう」と読むと思ってた)が三振に切って取った場面ですが、最後の投球は文字通り目を見張りました。投げられた後にピッチャー目線でやや左に動いたかと思いきや、トラウト選手のバットがボールに近づくや急に下に落ち、空振りにしてのけています。っていうかこんな球投げられたら、打てる打者なんているのかと思うほどのすごい一球で、戸郷選手は名前は知っていましたがこんなすごい投手であるというのは今回のWBCで初めて知りました。
 そのWBCですが、日本の優勝で幕を閉じてからすでに数日間経つのに、未だに日本のあらゆるニュースメディアの話題の中心となっています。スポーツメディアに至っては毎日飽きるくらいにインタビュー記事を出していますが、自分も何度も読んでるくせして未だに出てくるWBC関連ニュースをいちいち目を通しては「ほんまえええもんみたわ」などとホクホクした気持ちになっています。

 そのWBCで日本は見事優勝を飾ったわけですが、今回の日本チームは明らかに過去のチームより格段に強く、史上最強との呼び声も高いです。実際に、かつてのWBCの大会ではこちらも飽きるくらいに「スモールベースボール」という言葉が出てきて、単打と盗塁、走塁を絡めて点を取り、変化球主体のピッチングで抑えるという戦略が日本チームの代名詞でした。
 しかし今大会においては、余裕でメジャーのピッチャーからホームランは打つわ、二塁打などの長打も多く、ピッチャーも大谷選手や佐々木選手のように160㎞強のストレートを投げるなど、スモールとはもはや言えない戦い方をしていました。もちろん周東選手や山田選手のように足で活躍した選手もいたものの、もはやパワー面でも欧米人選手に負けないほどの実力を今大会で日本は見せています。

 では一体何故、日本人野球選手はこうもパワーがついたというか強くなったのか。いくつか理由を考えてみました。

1、育成登録制度
 今大会に捕手で出た甲斐選手ですが、彼はドラフト指名順位で最下位、それも二軍以外の試合には出られない育成契約からのスタートでした。牧原選手も同様で、さらにはソフトバンクで長らくエースであった千賀選手も育成上がりです。
 この育成選手制度によって、支配下登録上限を上回る選手を各チームは保有することができましたが、結果としてドラフトの指名に洩れていた「磨けば光る」選手の発掘を各チーム総出で行えるようになり、日本野球界全体の実力底上げにつながっていると思えます。年棒面でも育成契約選手はかなり抑えた金額で契約することが多く、金欠球団でも抱えるうえでは負担になっていないため、かなり有意義な制度になっている気がします。
 既にソフトバンクは3軍も作っていますが、ゆくゆくは育成契約選手+二軍選手のための別リーグもできるかもしれません。

2、同時代のトップ選手の存在
 野球に限らず、基本的に業界や集団の中で最も実力が高いトップ層の人間が、その業界や集団における実力のベンチマークとなります。逆を言えばこのトップの人間の実力が高ければ高いほど全体でも実力は向上し、低いと下がっていく傾向があります。
 現代における最高の野球選手と言えば言うまでもなく大谷選手で、とびぬけた実力を持つ彼の存在そのものが野球界全体が実力を高めているように見えます。しかも彼の場合、打者としても投手としてもメジャートップ級で、両分野で日本人選手の素晴らしいお手本となっているのがシャレにならないです。
 昨日見たニュースのコメントに書かれていましたが、去年に最年少三冠王、日本人最多本塁打記録を取った村上選手はある意味で日本の打者として頂点を極めたが、今回のWBCで大谷選手を横に見て、彼本人の意識に物凄くいい影響を与えたのではという意見がありました。至極その通りというか、ほかの選手らも井の中の蛙という言葉を大谷選手に対する印象に使っていますが、こんな感じで大谷選手がほかの選手に「まだまだ上がいる」と思わせているのはかなりでかいです。

3、指導の向上
 高校野球を中心に、かつてはそれこそ野球だけ行わせる指導が強かったですが、近年は「野球以外の人生のが長い」という言葉とともに、各選手にきちんと知識を授けたり、また体のケアを考えた指導が広がっています。また根性的な指導ではなくちゃんとした科学的な指導も取り込まれ、これらが特に身体の育成面でプラスに働いているように思えます。
 その代表格と言えるのが佐々木選手です。当時大いに話題になりましたが、地方大会決勝に体のことを考えて出場しませんでしたが、それが今回のWBC優勝につながったと考えるとあの指導はやはり正しかったと思えます。まぁ自分は昔から、甲子園そのものがなければいいという立場ですが。

4、巨人人気の低迷
 ちょっとうがった意見として巨人の人気が低迷したことが結果として、日本プロ野球界全体の実力向上につながったとも見ています。
 かつてはそれこそ巨人以外にファンはなく、あっても阪神ファンが一部シェアを持つくらいでした。それが巨人の人気一強がいろんな事件(主にナベツネ)によって崩れて以降、各球団が自らのファン層開拓に取り組んだのも大きいですが、90年代と比べると野球ファンのチーム別人気シェアはかなり平坦になっていると思えます。

 やはり人気が出てみられているとわかると、選手らもやる気出すというかより野球に力入れるようになっている気がします。またファン層がばらけたことでプロ野球志望者、FA宣言者も特定の球団にこだわらなくなり、パリーグで特に顕著ですが、戦力がかなり分散化してきています。実力が均衡化することによって競争も過熱するのはごく当たり前の流れであり、これによって日本プロ野球全体で実力が底上げされているように思うわけです。優勝から遠ざかっている横浜でさえ、近年は上位に入ってきているのだし。

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