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2024年8月23日金曜日

漫画「ナポレオン」の完結に触れて

 見出しにもある通り、長谷川哲也氏の漫画「ナポレオン-獅子の時代(途中から覇道進撃)」の最終巻が今日発売され、昨夜夜遅くまで日本から来た友人らと人民元の効率的な送金方法を議論したにもかかわらず、夜中にダウンロードして読んでました。でもって今日の通勤途中に3回くらい読み直してました。

 完結巻とあってこの巻ではセント・ヘレナ島に流されたナポレオンが死ぬまで、そして死後の関係者のその後が描かれていますが、出てくるのは揃いも揃ってジジイばかりで、若手キャラと言えば息子のナポレオン2世くらいでした。まぁいいんだけど。
 ただそれもあってか、イタリア遠征を思い出す最終シーンでナポレオンやその旗下の元帥たちが当時の若々しい姿で一斉に描かれるのは感無量であり、万感の思いとともに自分も眺めていました。

 それにしてもこの漫画ですが総巻数は42巻にも及び、横山光輝のライフワークと言える「三国志」の60巻には及ばないものの、連載期間は20年超を数え、ナポレオンを描いた漫画としては最長であり最高であるというのは揺るがないでしょう。
 私はこの漫画を1巻が発売された大学生の頃から読み始めたのですが、大体6巻くらいの頃に地元の本屋が何故かこの漫画を入荷するのをやめやがったせいで途中で中断を挟んだものの、その後覇道進撃に入ったあたりから再び読み始めるようになりました。

 ナポレオンについては少年時代よりその関心は強く、割とよく歴史漫画だけじゃなく評伝も読んではいたのですが、大体どの評伝もナポレオン本人にばかりスポットを当てていてその周辺人物についてはあまり触れられてきませんでした。それがこの長谷川氏の漫画では主人公のナポレオン以上にその部下であるネイやダヴーといった元帥らの活躍が華々しく描かれているばかりか、彼の政敵となったタレイランやロシア皇帝らも細かく描かれ、正直今まで読んできた評伝は何だったのかと言いたくなるような衝撃を受けました。それと同時に、ナポレオンも一人で成り立つのではなく、その優秀な部下らがいて初めてあれだけのことをやってのけたのだということも理解しました。

 そんなナポレオンを伝説足らしめているのはやはり、栄光を極めた後で転落をしている点にあると思います。説明するまでもなく、ロシアと英国を除いたほぼすべての欧州大陸を一時支配したものの、ロシア遠征での失敗を皮切りにフランス以外の支配をすべて失い、流刑後に一度は復権するもワーテルローの戦いを経て百日天下に終わり、流刑地で寂しく死去するという結末が、死後に多くの人間の共感を得たのだと思います。

 今回改めてそのナポレオンの事績を思い浮かべるにつれ、彼の場合は彼自身の後継というより、彼の部下の後継を育てられなかったことが致命的だったのではないかという風に思い至りました。ナポレオンの部下のほとんどはイタリア遠征時における幕僚たちであり、アウステルリッツの戦い以降は目立った戦績を残すようになる新参の将軍はあまり出てこなくなります。しかも従来からの幕僚たちも時代や戦争を経るにつれてランヌやベルティエをはじめ徐々に世を去り、残ったネイやスルトを率いて挑むも彼らがワーテルローで致命的な敗戦を犯し、ナポレオンは失脚するに至ります。
 それこそ仮にロシア遠征時にでも従来の元帥らに並び立つような才覚の人物を新たに登用し、幕僚の層を厚くして年代層を若返らせておけば、また何か違ったのではないかという気がしないでもありません。この辺、人気漫画作品に頼ってたところその作品が連載終えるや人気が急落する漫画雑誌に近いような気がします。

 まぁそれを言ったら、ナポレオン自体も後年の軍事的才能の枯渇ぶりは目に余るのですが。

 それにしても20年以上の読み続けてきた漫画がこうして終わるというのはなかなか感慨深いものです。長谷川氏はナポレオンの連載中にも「セキガハラ」をはじめ色々ほかの作品も描いていますが、今後どういう作品を描くのか、恐らくまた手に取ると思うので今から楽しみにしています。

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